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映画 「フェイル・セイフ」(邦題=未知への飛行)は、シドニー・ルメット監督の最高傑作です! [映画]

2週間に1回の更新・・・当ブログ、居心地良いペースに落ち着いてますねぇ~~。こんなグダグダにも関わらず、意外や読者がおられ、奇特な方から「もうちょっと、マメに更新でけへんの?」とご鞭撻をいただきました。しかしワタクシ、「人間なにごとも、自発性が大切っす!」と、新入社員向け訓示のような切り返しをするのです。あはは。

こんな担当者ですが、御社のために頑張りますので今後もよろしく・・・ってお得意さんとの名刺交換かよ?

さて、別の方からも、ご鞭撻いただきました。それは・・・

前々回の映画「パリ、テキサス」の記事は良かった。DVD借りて観た、すんごく良かった。ナスターシャ・キンスキー、最高だったねえ。と。

そして。

新作映画にチャチャもいいが、昔の映画をもっと紹介してはどーなの?と

うーん。ステキなアドバイスです。映画ブログって「新作」を取り上げると勝手に思い込んでましたけど、そんなシバリ、あるはずもない。さっそく本日、極私的に惚れ込んでいる「昔の映画」をご紹介しましょう(切り替え早っ!)。しかし小学校時代から”映画通”と呼ばれたワタクシ(←ここ自慢っす)、漠然と作品を選ぶと、紹介したい映画は百本を越しちゃいます。なんらか”絞り込みキーワード”が必要であります。

今月9日、アメリカの偉大な映画監督シドニー・ルメットさんがお亡くなりになりました(享年86歳)。ルメットさんといえば「12人の怒れる男」(懐かしいな~)、「蛇皮の服を着た男」「質屋」「セルピコ」「狼たちの午後」「ネットワーク」など硬派な作風で知られる名監督ですね。(個人的には「デストラップ、死の罠」「ファミリー・ビジネス」という”評判の悪い映画”も好きだけど)。

そこで今回、大好きなルメット監督作品に注目です。なんといっても「12人の怒れる男」が有名ですが、他のお薦め作品、というより、絶対に観てほしい1本をご紹介します。掛け値なしに素晴らしいです!「なんや、それ?」と思う(であろう)若い方にもぜひお薦めしたい。その作品とは・・・

FAIL-SAFE (邦題=未知への飛行) 1964年米

監督 シドニー・ルメット 出演 ヘンリー・フォンダ、ラリー・ハグマン、ウォルター・マッソー、ダン・オハーリヒーほか

映画ファンの間では、最悪の邦題として有名な作品です。「未知への飛行」って、この邦題つけたヒト、ほんとに映画を観たのでしょうか?ツボをはずすにもほどがあります。したがって、以下、原題「フェイルセイフ」を使わせていただきます。

未知への飛行P.jpg

1960年代の時勢を反映し、米ソ冷戦時代の「仮想核攻撃」を描いていますが、身の毛もよだつ、どころか後半なんて緊張で息止まるぜ、くらいのもんです。名優ヘンリー・フォンダさんが、あの顔で、アメリカ大統領を演じているのですが、この映画のスゴイところは、基本、戦闘シーンはゼロ。全編、大統領執務室、政府TOPの会議室で、ときおり挿入される爆撃機のコックピットと離着陸映像(撮影許可受けられずに盗撮したらしい)、そして、たぶんニュース映像からパクったのであろう爆撃機の飛ぶ様子が少々。そうです、「12人の怒れる男」の99%以上が、陪審員室で繰り広げられたように(ここでもヘンリー・フォンダがスゴい!)、映画「フェイルセイフ」も徹底した密室会話劇(後半は電話劇)なのです。

それでも、まったく不足を感じさせない、いや、だからこそスリリングで圧倒的インパクトを持つ作品になったと思います。映像はモノクロですが(当時すでにカラー映画が普及していたにもかかわらず)、暗めに強調された陰影が、本作にプラスに働いていますねえ。

ストーリーはいたって簡単です。不幸な偶然(必然?)が重なり、4機だか6機の編隊で飛んでた米軍爆撃機に「モスクワを攻撃せよ」と間違った命令が届いてしまう。攻撃とは、すなわちモスクワに水爆を落とせ、という意味であります。

そりゃあもう大騒ぎです。でも間違った指令なんだから、取り消そう、ね?ってなもんで、米軍司令部は爆撃機に命令の無効を伝えるんですね。ところが妨害電波だの(これ皮肉にもソ連が発信していたことが後で判明)、人的ミスだので、水爆を積んだ機は、どんどんモスクワに向かってしまう。

こりゃあマズイよ。

さて、ここで映画題名「フェイルセイフ」の用語解説です。われわれエンジニアが通常使う意味は「どんな最悪の事態でも、最後の安全策が働くように設計せよ」ですが(某原発事故でそれも形骸化した感はあるが)、この映画においては、さらなる”究極の意味”を持つのです。

フェイル・セイフとは「この一線を越えたら、後戻りはできない」、すなわち、アメリカ大統領から取り消し命令が出ようと、爆撃機のメンバーが疑問を感じようと、そのラインを越えたら初期命令(敵への攻撃)が遂行されてしまう、という限界点のことなんです。

そして水爆を積んだ爆撃機は着々と、その「フェイル・セイフ・ライン」に近づいている!

タカ派、ハト派が入り乱れ、激論が繰り広げられるのですが、とにかく、くだんの爆撃機(味方ですよ)を「撃ち落とす」ことが決定。しかし作戦は成功せず、数機を逃してしまう。

ついに、フェイルセイフラインを越えた爆撃機。ヘンリー・フォンダ演じるアメリカ大統領は、ソ連の首相にホットラインで電話し「ソ連への攻撃指令は当方のまちがいだ。我が軍の爆撃機を撃ち落としてくれ」とお願いします、が、ここでも1機をとりこぼして。。

未知への飛行1.jpg

もうダメ・・・。

モスクワは水爆で壊滅直前です・・・アメリカ政府の中には、これを機にいっきにソ連を叩きつぶし、アメリカで世界支配だあ、と暴論ほざくバカも現れ、うわあ、どうなるどうなる。

ワタクシも、ここでコメントをやめたいけど、新作映画じゃないのでネタばれ!で行きます。

アメリカ大統領は、モスクワのソ連首相に、こう伝えるのであります。

「頼むからアメリカに報復攻撃をしないでくれ。そんなことをしたら、報復の連鎖で、全人類が滅亡してしまう」

そして次がスゴイ。

「もしモスクワに水爆が投下されたら、アメリカはそれに見合う処置として、ニューヨークに水爆を投下する」

このシーンの、ヘンリー・フォンダの顔のアップ!苦渋の選択とか断腸の思い、とか、そんなもんじゃない。全面核戦争を回避するため、自国の大都市に水爆を投下・・・この決断。大声で叫ぶでも、机をたたくでもない、静かな演技に、かえって凄味が漂います。どうです、名優の、稀代の名演技とはこれですよ、これっ!

観客の緊張もここに極まれり。呆然つーか、唖然つーか。

そして、ラスト5分。さすがにそこまでのネタばれはいたしません。さあ、モスクワは、ニューヨークは、いったい、どうなると思いますか?

偶然なのか、本作と時同じくして、同じテーマかつ同じくモノクロで、スタンリー・キューブリック監督が「博士の異常な愛情」という映画を作っています。これも大好きな作品ですが「博士の・・・」はブラック・コメディ。ピンク・パンサーのクルーゾー警部ことピーター・セラーズが映画史に残る(であろう)名演技をご披露しています。ちなみに、ラストはキノコ雲。

それとは全くテイストが異なる、超シリアスな「フェイルセイフ」。しつこいですが、ラスト、どうなっちゃうと思います?

てなわけで、大好きな「フェイルセイフ」を熱く(暑苦しく?)語った満足感。ブログってストレス解消に最高のツールですねえ、って、自己満足かよ!?つーか、ワタクシにストレスないし。

あーーーっ、大変なことを忘れていました。

本作で大統領補佐の通訳(かな、記憶あいまい)という重要な役を演じている俳優が、あの、ラリー・ハグマンさんなのであります!ん?知らない?無理もありませんねえ。昔の話、そのうえ、俳優名を知らない方が圧倒的に多いでしょう。アメリカのTVコメディ(30分もの)に「可愛い魔女ジニー」という、ツボに暮らすチャーミングな魔女が恋人というハナシがありまして。ハクション大魔王?バリエーションみたいですが、破天荒な魔女ジニーに翻弄される主役男性こそが、ラリー・ハグマンさん!

はいっ、この写真を見て、「ああ、彼ね」と思い当った方、友達になりましょう。再放送しないかなあ。

ラリーハグマン.jpg

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コメント 8

azm

ども!面白そうな映画ですね。、「12人の怒れる男」も良かったですが。
フェール・セーフまたの名を「フール・プルーフ」。フクシマでは東電も、政府もまさに fool を proof しちゃいましたねって、直訳。
by azm (2011-04-29 10:33) 

アッシー映画男

To azm様、コメントありがとうございます。
フール・プルーフ、まさに「ぽかよけ」ですね。
あはは、見事なご指摘ですね。
日本政府と東電は、fool-proof、ならぬ、prove fool、ですね。

ちなみに、映画「フェイル・セイフ」の結末ですが、モスクワも、ニューヨークもこの世から消えてなくなります・・・って、ここでネタばれかいっ!スイマセン。
by アッシー映画男 (2011-04-29 17:26) 

懐かしい

25年くらい前、父親が買って来たビデオデッキで録画して観ました。
やるせない話です。
原発事故のとき、この映画を思い出しました。
複雑で高度な技術が想定外の負荷を受けると、いかに脆いものか。
技術者は、今般の原発の結果を、壊れるものは壊れると捉えるだけでなく、かかる結果についても心を寄せる、そんな大変なコトを考えなければいけない21世紀。陰鬱な気分になります。
by 懐かしい (2011-08-30 20:45) 

アッシー映画男

To 懐かしい様、コメントありがとうございます。
いやホントにこの映画、やるせないです。
結局のところ、世界壊滅は「人災」ってことですから。
「人々は技術を盲信しすぎている」「究極の武器(水爆、原爆)は人間の手に負えない」という教訓であり、ベタではありますが、人間は謙虚であれ、という警句が見えてきそうです。

昨今、宇宙人が円盤で地球侵略してくるパニック映画(?)が流行りですが、宇宙人なんかより「自分たち=人類」のほうがよっぽど恐ろしい存在ですよね。
あえてそこに目を向けさせないように、仮想敵=宇宙人をスクリーンに登場させているのかもしれませんが。ああ、虚しい。

まさに「フェイル・セイフ」こそが、いま観るべき映画と思いますね。
by アッシー映画男 (2011-09-05 03:55) 

すずき

今Huluにあり、どんなものかと思ってググって来ました。。
Amazonなどでも評価が高かったので見てみましたが、評価に違わない面白さでした。クラシックはあまり見ないのですが、緊張感に目を離せませんでした。逆にあの古臭さが当時の米ソの雰囲気を醸し出していて良かった。クラシックもいいものですね。
by すずき (2013-06-08 15:33) 

アッシー映画男

To すずき様、コメントありがとうございます。
そうなんです!クラシックな映画(という表現も微妙ではありますが)は素晴らしいのが多いですね。とくに、ヘンリー・フォンダさんが出演している作品は名作が多いです。温故知新ってやつですね!
by アッシー映画男 (2013-08-18 04:56) 

世田谷ハムちゃん

可愛い魔女ジニー? 観てましたよ。ハグマンが羨ましかった思い出が。
フェイルセイフはH.フォンダの演技がすべてですね。個人的にはW.マッソーは過剰演技かなと。
24時間、戦略爆撃機を飛ばすことは止めましたが、危機はそこにある、と思います。N.シュートの「渚にて」(On The Beach)も併せてご覧ください。
by 世田谷ハムちゃん (2014-03-10 20:28) 

雄鶏

この映画と多分「博士な異常な愛情は2ツの名曲を生んでいます。このインタビューの中に「ファイル・セイフ」が出て来ます。THE ROOSTERS(ルースターズ)のCMCという曲にも大きな影響を与えています。此方はフェイル・セイフも博士~も大好きで、ルメット監督も好きですが、「好きだ~」「凄い映画だ~」と言ってただけですが、こんな曲を作ってしまう奇才も日本に居たんです。。。
by 雄鶏 (2018-11-10 16:55) 

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