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映画 「アウトレイジ ビヨンド」 ここまでスゴイのを作られたら、他の映画監督が困るでしょうがっ! [映画]

北野武監督「アウトレイジ ビヨンド」であります。公開したとたん、ぎゅんぎゅんと観客が集まり、大ヒット確定らしいですね。おめでとうございますっ!パチパチ。

のっけから話が脱線しますが、変態的映画マニアなら「ビヨンド」といえば、グロイ怪物造形だけが売りの80年代のC級ホラームービー「フロム・ビヨンド」を思い出すことでしょう。「遊星からの物体X」をチープにしたような超駄作・・・ありゃヒドかったなぁ~と思い出しつつ、久しぶりに観たいです。

・・・って、何の話だよ!

今日のお題は「アウトレイジ ビヨンド」でした。一昨年公開の「アウトレイジ」の続編。やくざ同士の騙しあい、裏切り、殺し合いが畳み掛けるようにスクリーンに展開します。前作のコピーが「全員、悪人」で、本作が「全員悪人、完結」とは上手い!内容、まんまですもんね。

一昔前のやくざ映画-たとえば高倉健さんや高橋秀樹さん主演作ですと、やくざとはいえ、主人公はヒーロー=善であり、相手(敵)=悪の色分けがされてました。観客は主人公の「男気」「義理人情」に喝采を送り、敵と合いまみえる主人公にカタルシスを感じたものです。

一方、「アウトレイジ」「アウトレイジ ビヨンド」はどうか。どいつもこいつも悪党、殺されたって自業自得。観客はどこに(誰に)共感すればいいんだ!?・・・てなわけで、作り手にはハードルが高い設定なんであります。

以下、北野武さん(の才能)への賛辞ばかりになりますが、ご容赦を。

この映画、北野さんが監督、脚本、編集でなければ、とんでもない失敗作になったでしょう・・・というか北野武という天才の「突出した才能とセンス」があったから成立できたシロモノです。懐かしい言葉ですが「作家の映画」だってことです。とはいえ、フランスのゴダール監督の難解・難渋・自己満足映画ではなく、「アウトレイジ」2作は、単純に面白くって、スカッとする娯楽作品ですよね。”作家性”と”面白さ”を両立させちゃうとは、なんたる才能か!

「世界のキタノ」と欧米でも評価が高い方ですが、「この人は天才だ!世界的な映画監督だ!」と私が確信したのは、まさに「アウトレイジ」「アウトレイジ ビヨンド」の二作を観て、であります。

邦画が嫌いの方も、やくざ映画が嫌いな方も、「アウトレイジ ビヨンド」は観てほしい!

現在日本が、世界に誇るべき天才映画人=北野武さんの凄さを、劇場でギンギン感じようじゃありませんか!

アウトレイジ ビヨンド 2012年日本

監督・脚本・編集・製作総指揮 北野武  出演 ビートたけし、三浦友和、西田敏行、中野英雄、加瀬亮、小日向文世、中尾彬、名高達郎、田中哲司、高橋克典、塩見三省、松重豊、ほか

居並ぶ出演者の名前だけで、くらっとする豪華さであります。ほとんどの俳優が「北野映画に出たい!」と自ら志願したそうで、そのエピソードだけでも監督のすごさが分かろうってもんです。

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関東最大のやくざ組織、山王会の頂点にたった加藤(三浦友和)。若頭 石原(加瀬亮)の金儲け手腕により、組織は巨大化する一方で、古参組員への冷遇で組織内には不穏な空気が流れています。

刑事 片岡(小日向文世)は関西山菱会を引っ張り出し、山王会をつぶそうと策をめぐらせます。彼が目をつけたのは、「死んだはずの男」大友(ビートたけし)。服役中の大友は、以前、山王会傘下で汚い仕事ばかりをさせられ、挙句に自分の組は崩壊し、いまは山王会に深い恨みを持っています。片岡は大友を仮出所させ、かつての大友の敵、木村(中野英雄)と和解させると「山王会への復讐」を焚き付けるのでした。

こうして関東の山王会、関西の花菱会、大友、木村、警察の思惑が入り乱れ、醜い裏切り、騙し討ち、殺し合いがエスカレートするんであります。悪党どものオンパレード、どう収拾つくのか分からない・・・。

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さて、この映画。

繰り返しになりますが、北野武監督(脚本、編集も)の偉大な才能に、ただただひれ伏す私です。「映画的リアル」をここまで明確に突きつける邦画はかつてなかったでしょう。

本作にもっともショックを受けたのは、他の映画監督ではないでしょうか。〇〇映画の、〇〇のシーンといえば、お約束の演出を繰り返すばかり、新たなチャレンジもせずに、よく言えば無難、悪くいえば没個性の監督たちのことです。私がエラソーに言うのも変ですが、「アウトレイジ」2作を観たら、今後は、恥ずかしくて映画を撮れなくなるんじゃないか。

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たとえば、これまでのやくざ映画。「組長」がでっかくケバケバしい部屋で、ぶかぶかの椅子に座って子分へ檄を飛ばす・・・こんなシーン、ありがちですねえ。組長のエラさを強調する意図でしょうが、なんですか、それ。舞台の芝居を観るようで作り物っぽいったらありゃしない。ゲンナリです。

「アウトレイジ」はどうか。組織のトップといえども、質素で狭い部屋で会合します。企業の経営者のよう。現実かどうかは別としてすんごく「リアルな感じ」がします。狭い空間には圧迫感が生まれ、登場人物の顔アップは威圧感が満点であります(演じる俳優さんは大変でしょうけど)。

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映画中盤の、大友(ビートたけし)と木村(中野英雄)が山菱会幹部(西田敏行、塩見三省)と面会する場面は、本作のハイライト。話が決裂し、互いに激昂、怒鳴りあいになるのですが、顔のアップという視覚の迫力に加え、テンポよく怒号に怒号をかぶせる「音」のパワーの素晴らしさ・・・やられた!って感じですもん。

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分析チックになってすいませんが、「アウトレイジ ビヨンド」を観ると、相対的に、これまでの邦画のアラが気になってしまい苦言を発したくなります。

そうそう、最たるものは、日本映画にありがちな「変な間(ま)」ってありますよね。敵を殺すシーン、確実に目的を果たすなら、余計なゴタクを並べず「アウトレイジ」のようにさっさと撃てば良い。ところがどっこい、「変な間」を入れたがるんです。銃を突き付けた相手に「死んでいくお前に、良いことを教えてやろう」な~んて、逆襲チャンスを与えたうえに、秘密まで明かすバカがいるかよって。案の定、逆に殺される。もぉう~あほかいな!ってもんです。私だって子供じゃないので、そのセリフが「観客への説明」なのは分かりますが、あまりに手垢にまみれた演出ですよ。

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会話シーンはどうでしょう。これまでの邦画は、相手の言葉をきちんと聞き、驚きや喜びの表情をみせて(←ここで妙な「間」を入れる)、タメを作って言葉を返す・・・つーのがお約束です。登場人物の皆さん、幼少時代の躾が良かったのねえ、と皮肉のひとつも言いたくなります。そうした「のんびりテンポ」が適した映画もあるでしょうが、アクション映画、パニック映画やホラー映画でさえも、同じでやられちゃ芸がないってば。一刻一秒を争う緊急事態にあっても、どこふく風、とばかりに呑気に会話する「海猿」シリーズなどどうすればいいのか、心底、こんなレスキュー隊員に助けられたくない、と思いますねえ。

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おお、またしても話が脱線しましたね。

北野武監督の「間」「テンポ」の素晴らしいこと。過去映画の受け売りではなく、ご自身のセンス(お笑いの経験による?)から自然に生まれたのでしょう。お笑いでは、同じギャグも使う芸人によって面白かったり、つまらなかったりするわけですが、その差は「間」「言い回し」といった、言葉で説明できない何かですもんね。北野監督は「間」「テンポ」を絶妙に積み重ねて、独特の語り口を生み出し、緊張を途切れさせません。脚本も北野武さんだから出来たわけですが、これってほんとスゴイことだと思います。

これ以上、長くなるとグズグズなので、そろそろ記事を終わりましょう。

最後になりますが、「アウトレイジ ビヨンド」のラストシーン、最高でしたね!

一番悪いヤツはいったい誰だ!?

秋田のなまはげは「悪い子はいねが~~」と練り歩くわけですが、この映画も最後に「悪いヤツはお前だ!」と、ビシリとけじめをつけて下さいます。なまはげは出てないけど。。。

北野武さんの脚本、見事であります。

語彙貧困ですいませんが、この作品はすごい。もう一度、劇場で観ちゃおうかなあ。


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