8月になると思い出す映画「八月の鯨」(1987年公開)は、ベティ・デイヴィスさんがスゴイのであります! [映画]
毎年ではありますが、今年(2014年)も8月になりました。やっぱり暑い!今年はそれに加えて、大型台風が日本へ上陸し、高知県や三重県は豪雨で大変だったようで・・・まったく日本はどうなるのでしょうねえ。
今月観た映画は「想い出のマーニー」と「ゴジラ」、と、ベタなセレクトでございますが、いやあ、どちらも良くできた作品だと思います。
「想い出のマーニー」。マーニーといっても、ティッピー・ヘドレンさんが主演のアレ、ではなくジブリ・アニメであります。ティッピーさんではなく、有村架純ちゃんです(話をややこしくしてるな、オレ)。ジブリ作品にしては、ひねりが少ないストレート結末で、多少の食い足りなさを感じるものの、丁寧で繊細なつくりこみが本当に良いです。舞台がワタクシの地元=北海道なのも嬉しい。子供ダマシ&絵空事&人生観押しつけにウンザリさせられる「〇〇と雪の女王」とか「プレーンズ」より、よっぽど優れている、と私は思いますね。(ま、昨今のディズニー映画に、大人の鑑賞に堪えうる「精神性」を求めるのはオカド違いではありますが・・・)。
「ゴジラ」は、日本発のオリジナル・ゴジラの荒唐無稽さとアナログ感(アナクロ感?)を、良い意味で踏襲くださって好感が持てました。ゴジラの脚は大きいな~、雄叫びがスゴイな~、うわ、火を吹いたぞぉ!と素直に楽しんでしまいました。
ハリウッドにありがちな家族愛をフレーバーしたドタバタ・パニックの域を出てませんけど、「グッドナイト&グッドラック」のデイヴィッド・ストラザーンさんが演じる軍指揮官がカッコ良かったしぃ、「キック・アス」のへなちょこだったアイツ(俳優名覚えてません)が覆面せずにイケてるヒーロー(主役!)を演じており、父親感覚で「がんばれー」と応援しちゃいました。一方、マイナス感動は、芹沢博士役の渡辺謙さんであります。演じる役に良いトコが無いんだもん。ムートーとゴジラに翻弄される役立たず科学者、つう体たらく。貢献したことといえば「怪物の名は、ゴジラだ!」と命名したくらいでしょうか。「バッドマン・ビキンズ」のパチモンなマスター役も残念でしたが、芹沢博士役もパチモン感はかなりのレベル・・・トホホホ。
と、最新作へ、雑~な感想を書いちゃいましたが、仕切り直し。ここからが本題です。
別ブログにも書いた記事の焼き直しでスイマセン。8月、と聞くと思い出す、この名画についてです。
映画「八月の鯨(くじら)」であります。どどーん!
今から27年前の1987年に日本で公開されました。神保町の岩波ホールでロングラン上映になりましたっけ・・・。
アメリカの辺鄙な島にふたりで暮らす姉妹(老婆)の日常を、淡々とつづった映画です。とくに事件らしい事件が起きず、正直、ストーリーをほとんど覚えていません。覚えていませんけど、映画全体を覆う明るい空気感と、めちゃ感動した、という記憶が脳内にしっかり刻み込まれています。
この作品の何がスゴイか、といえば、老姉妹を演じる女優がリリアン・ギッシュと、ベティ・デイヴィスということ。
サイレント映画時代から活躍するリリアンさんは映画撮影時点で90歳超。一方、ベティ・デイヴィスさんは1908年生まれですから当時79歳。(現在は、お二人とも亡くなっております)
最近、往時を過ぎたアクション俳優を集めオールドファン(要するにオヤジ)受けを狙った映画が、粗製濫造されていますね。「八月の鯨」はそんな懐古趣味と一線を画してるんです。映画史そのもの、とさえ言える偉大な女優を共演させただけでなく、きっちりと「演じさせた」ところが秀逸なんですね。
とくにベティ・デイヴィスさん。(このお名前を聞いてブルブルッと震えた方、友だちになりましょう!)。
ここからはワタクシの思い入れが炸裂しちゃいますが、ご容赦願います。
ベティ・デイヴィスさんといえば1930~1940年代のハリウッドを代表する美人女優です。この美しさを見よ!ただの美形ではなく、アカデミー主演女優賞を2回受賞し、ノミネートはなんと連続5回、という演技派でもあります。ブルブル。。。
しかしベティさんの女優としてのすさまじさは、彼女が老境にさしかかってから発揮されます。ブローウエイ女優たちの醜い争いを描いたダークな人間ドラマ「イヴの総て」(1950年)。この作品でベティさんは、大女優マーゴ役を強烈に演じました。私、この映画が大好きでDVDも買っちゃったもんね、へへへ。
撮影当時42歳の彼女は、まだまだ十分に美しいわけです。しかし映画の中では、新進女優(アン・バクスター)に役を奪われるピークを過ぎた大女優、という損な役回りですから、すでに気持ちは「美」よりも、「技」で勝負!なのが分かります。
で、いよいよ出ました。1962年、サスペンス映画(ホラー映画とも言える)「何がジェーンに起こったか」で、ベティさんは、姉をいびり倒す醜悪な老女を怪演するのであります。かつての美人女優の看板などブッ飛ばし、化け物メイクに髪ボサボサ、気持ち悪くなるほど真に迫った偏執狂的ハイパーな演技に、「女優魂」を見るのであります。キャリアを失うリスクもいとわず、ここまでやるか!のド根性、はさすがです。
シャリーズ・セロンさんが体重20kg増やし醜悪メイクでアカデミー賞を獲ったり、ロバート・デ・ニーロさんが極端に痩せたり太ったり(CGではなく実際に)、イザベル・アジャーニさんが精神錯乱したり、するのを見て「スゲエ」と思うかもしれませんが、私に言わせれば、ベティ・デイヴィスさんの「切れ芸」に比べると、どれもかすんで見える、と申せましょう。
ちなみにメグ・ライアンさんも「イン・ザ・カット」で、ベティさんくらい徹底的にやっていれば・・・痛恨です。現役女優で「ベティさん境地」へ到達できそうな方といえば、ウィノナ・ライダーさん(素でいける?)、クリスチーナ・リッチさん。際どい芝居の若手エレン・ペイジさん(←大期待!)。今は、飛ぶ鳥落とす勢いゆえ到底ありえないですが、エイミー・ワトソンさんは絶対に「彼岸」まで辿りつくでしょう・・・って、なんの話だよ。
話がすっかり拡散しちゃいました。「八月の鯨」にハナシを戻しましょう。
いや、ホントにいい映画でした。ベティ・デイヴィスさん、リリアン・ギッシュさんはもちろん、ヴィンセント・プライスさんの愛にあふれた立ち振る舞いが素晴らしい。ホラー映画俳優として有名な方で、マイケル・ジャクソンの「スリラー」で最後の高笑いが彼の声・・・と豆知識を披露してどうする。
27年前に観た映画の懐かしバナシで終わるか、と思いきや、昨年。岩波ホールで本作はリバイバル上映されてたんです。ノーマークでした。知っていたからと言って、観に行ったとも思えないけど・・・。
ハナシは連想ゲーム的に散らかっていきますが、10年ほど前、「ラヴェンダーの咲く庭で」というイギリス映画が公開されました。
「八月の鯨」と同じように海辺の田舎に住む二人の姉妹(老女)が主人公でした。ただしストーリーは淡々ではなく、ある日、気を失った美形男子が浜に流れ着くのをきっかけに様々なドラマが生まれるんですね。老姉妹を演じるのは、大女優のマギー・スミスさんとジュディ・ディンチさん。といっても、ハリー・ポッターに魔法を使わせたり、ジェームス・ボンドを送り込んだりはしません。
大御所ふたりの演技合戦っぽいシーンには少々興ざめしますし、「八月の鯨」のイメージがあると評価きつくなりますが、とはいえ「ラヴェンダーの咲く庭で」も素晴らしい映画。とくに、クラシック音楽好きの方なら、ラストシーンには涙することでしょう!
・・・と最後は、違う映画のハナシに行き着いて、収拾つかなくなったところで、今日はお終いです。ごきげんよう。
面白い記事でした!
by azm (2014-08-20 23:48)