映画「ナイト・クローラー」。昨年(2015年)に拝見したベスト映画なのでございます。 [映画]
ブログの更新を、さぼっていたら、おお、なんと前回のアップは、1年以上も前とな!
・・・と、驚いたふりをしましたが、ここ数年、定常的にこんな感じですなあ。映画について、文章を書くだけの、気合といいましょうか、モチベーションといいましょうか、かなり低下していますね。いかんなあ。
さて、いまさらですが、2015年に拝見した新作映画のうち、一番ツボにはまった作品を取り上げます。
なんといっても「ナイトクローラー」ですね。ミニ・シアター系で地味に公開されたので、見逃した方も多いかもしれません。
主演はジェイク・ギレンホール。最近、ヒューマンな役どころが多いですけど、彼が本領を発揮するのは「ヤバい人」キャラだと私はにらんでいるわけです。「ドニー・ダーゴ」や「ジャーヘッド」のジェイクさんこそが、役にバッチリはまっているわけです。
本作の彼は、体重を落とし不健康ガリガリ姿に変貌しております。顔の陰影が際立ち、ぎょろぎょろした目の怖いこと!まさに狂気の面相で、ぞお~っと寒気が走るくらいです。
主人公は、大都会の夜を徘徊し、警察の事故無線を傍受すると、真っ先に事件現場へ駆けつけます。警察が来る前に、悲惨な現場映像を撮影し、テレビ局に高額で売り込むハイエナ的パパラッチであります。視聴率を稼ぐため、より過激な映像を欲するテレビ局のプロデューサーの期待に応えようと、異常な情熱で仕事に取り組むうちに、彼は、超えてはならない一線を越えていく・・・と、まあ、こんなお話。
ジェイクさんのヤバさは、映画を観ていただかないと実感できないですが、たとえば、フツウに話をしているシーンなのに、「ああ、こんな人とは関わりあいになりたくない!」と思わせる怪演、とでも言いましょうか。
ジェイク・ギレンホールさんをベタ褒めしましたけど、もうひとつ成功の鍵は、アカデミー賞にもノミネートされた「脚本」でしょう。一方的に善悪を決めつけず、あくまでニュートラル視線で主人公を描いている、この節度が気に入りました。前半で、人間ドラマと思いきや、後半はカーアクションあり銃撃戦あり、のスリリングな場面が続きます。しかし、あくまで「主人公の狂気」を際立だせる材料であり、芯がぶれない。アッパレな脚本!であります。
本作の主人公の所業を、良いと思える観客はおそらく誰もいないでしょう。しかし、現実を振り返れば、無責任で傍観者的なテレビ視聴者(=われわれ)は、つねに刺激的なニュース、を求めてやまないわけです。
高速道路の大事故、飛行機墜落、フェリーの沈没、鉄道の脱線、銃乱射による大量殺人、強盗による一家惨殺・・・それをニュースで知ると、被害者を悼む気持ちの裏で、好奇心として詳細な情報(状況)を欲している自分がいるわけです。悲惨であるほど、自分が当事者でなかった、と安堵する。そう、悲劇を、対岸の火事として「客観視」するためには、「ナイトクローラー」の主人公は、必要悪とも言えるわけです。(もちろん、犯罪を良いとは言わないが)
映画のハナシに戻りますと、中古のボロカメラを抱えて走り回り、同業者にバカにされていた主人公が、憑かれたような勤勉さと行動力で、「一流」へとのし上がり、高価な機材、車を買い揃え、ひたすら夜の街を走り回りスクープをモノにしていきます。やがて、実業家然となるさまは、いびつで皮肉なサクセス・ストーリーですけど、奇妙な感動を覚えてしまいますね。
映画のラストが、月並みでなくて実にヨロシイ。
・・・おっと、本作へのコメントは尽きないですが、このへんで、2015年公開の映画のハナシはお終いにしましょう。次のブログ更新が、1年後にならないよう、さて、2016年はちょっと頑張ってみますか。ははは。
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