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映画 「ザ・ウォーカー」 言いたいことは分かるけど、ありえねえよ!とツッコンで終わった残念作。 [映画]

上映が終わった映画ですので、タイムリーではありませんが、前回絶賛した「インセプション」と全く逆の、イタ~イ作品として取り上げたくなりました。

「ザ・ウォーカー」。例によって(?)核戦争で壊滅した地球(戦争後30年が経過)が舞台。わずかに残った人類は、定番の「北斗の拳」的世界をサバイバルに生きています。つまりは弱肉強食。弱い人間は強盗に無残に殺されます。道徳も正義も存在しない荒廃した世界。(このベタな設定で、気分が限りなくダウナーなワタクシではありますが・・・・)。

生き残った人類が「ゾンビ」にならないだけでも良いか、と、妥協に向かったワタクシですが、その前向きな気持ちを「ザ・ウォーカー」は次々に打ち砕いていくのです。あぎゃーー。やめてくれーーー。

いやあ、いいんですよ~、言いたいことはよ~く分かるんですけどね。映画的には無茶苦茶なんですよ。

「インセプション」が、巧妙なプロットと、スピーディな展開で、無理を無理と感じさせない優れた作品だとすれば、「ザ・ウォーカー」は正反対。妙な世界観をもったいぶって押し付けることで、無理がより無理として感じられる怪作といえましょう。

そりゃ無茶ってもんでしょ?とツッコミ連発しているうちに、主演のデンゼル・ワシントンが、スティーブン・セガールに見えてきました。名優デンゼルまでが・・・ああ、悲しい・・・・。

ザ・ウォーカー 2010年米

監督 ヒューズ兄弟 出演 デンゼル・ワシントン、ゲイリー・オールドマン、ミラ・クニス、トム・ウエイツほか

ウオーカーP2.jpg冒頭のごとく、核戦争でほとんどの人類を失った地球。その戦争から30年後の世界が描かれます。街も、人心も、すさみきったアメリカ大陸を、30年間、ひたすら西に向かって歩き続ける男イーライ(デンゼル・ワシントン)・・・て、いくらなんでも30年はないだろっ!

彼は自分でも分からない「声」の導きにより、ある本を、西に運んでいるのです。・・・って、ここが既に「???」なのであるが。

以下、思いっきりネタばれですが、その本とは、聖書なのであります。どうやら30年前の戦争は宗教的背景があったようで、戦争の元凶として、聖書はすべて焼かれてしまったのです。イーライは世界に一冊しか残っていない聖書を、ひたすたハンドキャリーしているのです。

行く先々で強盗団に襲われるイーライですが、超人的な強さで(セガール的?)、5人だろうと、10人だろうと敵を一瞬にして始末します。

ここで登場するのが不毛の荒野に「街」を作り、新たな世界の征服を夢見る、冷酷な独裁者カーネギー(ゲイリー・オールドマン)。彼は疲弊した人心を自らに集め、神のごとき存在となるために、「聖書」を血眼になって探しているのでした。野蛮な部下どもに聖書を探させるものの、空振りばかり。

たまたま自分の街を通ったイーライが「聖書」を持っていることを知り、彼を殺し聖書を奪おうと襲いかかります。こうして、イーライと、カーネギーの聖書をめぐる戦いが始まります。

ウオーカー4.jpg

と、書いている先から「いくらなんでも一冊残して聖書が全部無くなるかよ」とか、「聖書があれば世界を征服できるのかよ」とか、草津温泉の源泉のように、どんどん湧き上がるツッコミ。

カーネギーの娘(血はつながっていない?)が、イーライ側につき、すったもんだの末に彼女の運転する車で目的の「西」まで連れて行ってもらうイーライ。ありゃ?30年も歩き続けていた割りには、車で1日もかからずにゴールに到達!って・・・そんなに近くまで来てたんかい!つーか、歩かずに車使っていいなら、さっさと使っとけよ!

ウオーカ-6.jpg

で「西の果て」に何があったか?とえいば、案の定、世界を憂い、新たな文化を生み出そうとする「心ある人々」のコミュニテイが・・・・って、独裁者カーネギーもすぐご近所にいるんだろって!?

イーライ君、あんなに大切にしていた「聖書」はカーネギーに強奪されちゃって・・・でも、その後の痛快な「オチ」・・・それもやっぱり無理だろうって。で、ラストシーン、おねえさん、今度は東に向かって歩くのでしょうか?ひゃー残念賞!

ウオーカー3.jpg

しいて、この映画でよかったといえば、優柔不断っぽい技師を演じるトム・ウエイツ御大でしょうか。

言いたいことが分かりやすいだけに、映画としての粗が目立つ、そんなセガールちっくな・・・じゃなく、デンゼルな作品でありました、あはは。

ウオーカー2.jpg

ちなみに、「核戦争で崩壊した世界を生き抜く」という類似設定の「ザ・ロード」という映画が公開中です。「ザ・ウォーカー」の悪いイメージを払拭できた頃、ゆっくり見に行くこととします。


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コメント 4

ふくずみ

こんにちは。核戦争後の世界って、まったく「北斗の拳」っぽいですよね。
廃墟とボロボロの衣類をまとった難民と、世界を支配しようとする男、それに対抗するマッチョな男。これもアッシー様のお考えでは、アメリカ映画の定番パターンのひとつでしょうか?
「ザ・ウォーカー」のオチは凄かったですね。カーネギーは、がっくりきすぎですよね。傷の手当てはしっかりしないとーーー。
by ふくずみ (2010-08-04 15:33) 

アッシー映画男

To ふくずみ様、コメントありがとうございます。
あははは、ほんとですよ。核戦争後30年、廃墟と無政府状態は定番ですよね。まあ気候変動とかいろいろあるかもしれないけど、人間よりも植物のほうが強いんだから、農業するとか、ちょっとはねえ。
「ザ・ウォーカー」は宗教的な観点からはフォローできるところも多いと思います。
自分はすべてを見ている、と思う人間ほど、何も見えていない・・・。
イーライはかつてのキリストの弟子、あるいは聖人たちのような「苦行」をしょって西へ向かっているわけですね。
神の言葉(=聖書)を伝えるため、というのがなんともベタで良いのですが、気に入らないのは、やけに灰色っぽくカラーリングされた画面や、登場人物たちのステレオタイプな描かれ方なんですよね。
そして、宗教的なテイストを根底に持たせながら、アクションシーンを無理やりはめこんだような違和感。

ゲイリー・オールドマンは苦労したと思います。彼の演じるカーネギーというおっさん、アホですから。。。聖書を手に入れようとするくだりも、もうちょっと工夫しろよ、って感じ。部下を何人殺されれば気が済むんだよって。
さらにラストシーンで、部下たちがヤケクソになって暴れちゃうところも、「あ~あ」とがっくりな展開ですよね。
そんな小細工しないで、もっと正統に攻めてほしかった映画です。

結論言うと、出発点である「核戦争から30年後の荒廃した世界」が、あまりにも紋切り型なので、どうにも発展しようがなかった、ってことですね。
チャンチャン。
by アッシー映画男 (2010-08-07 08:35) 

ken1203

昨日、深夜放送された映画を録画で見た。よかった。
イーライの聖書は点字本だから、残ったんですね。
カーネギーの目の付け所は素晴らしいですね。ローマ以降、キリスト教が世俗を支配した方法を再現しようとしたんですね。ラテン語で書かれた聖書は聖職者しか読めなかった。
 宗教的な支配ができれば、最強の支配者になれますからね。そのための聖書であり、それを独占する必要があるわけですね。

 2010年のアメリカ映画ですから、オバマ大統領誕生という時代背景を考えると、社会的なメッセージが盛りだくさんの映画ですね。さしずめ、カーネギーはブッシュでしょうか。面白かった。
by ken1203 (2013-01-05 12:02) 

アッシー映画男

To ken1203様、コメントありがとうございました!
全体にちょっと(かなり?)無理のあるハナシでしたが、たしかに深読みはそれなり出来そうですね!
by アッシー映画男 (2013-01-14 19:59) 

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