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映画 「遊星からの物体X ファースト・コンタクト」 カーペンター監督の名作(82年)の前日譚、期待どおりに・・・? [映画]

前回は名作「エイリアン」の前日譚である「プロメテウス」を取り上げましたが、今回もまたまた、前日譚映画であります。その作品とは、さあて何でしょう・・・って、もったいつけても意味がないすね、ブログ題名に思いっきりタイトルを書いてますもんね。

SFホラー「遊星からの物体X ファースト・コンタクト」 (2011年)であります。

そうです、1982年に作られたジョン・カーペンター監督の名作「遊星からの物体X」のリメイク・・・正確には前日譚ですね。カーペンター監督自身が言うように82年の作品は商業的には失敗でした。でもワタクシは大好きなんですよ~。地球外生物を扱ったSFというより、緊張感に満ちた心理サスペンスとして評価したい。映画全体の陰鬱さもいいし、極めつけは生理的嫌悪を催すドロドロ・テイストの怪物・・・このB級ホラーっぽさがたまりません。(映画の内容については後述)

ところでマニアックな話をすれば、82年のカーペンター監督作は、ハワード・ホークス監督作「遊星よりの物体X」(1951年)のリメイク・・・つまり今回紹介の新作は、60年ごしのリメイクのリメイク、というわけ。アメリカ人はそこまで好きなのかあ、このネタが?と言いたくなります。それとも「The Thing」(原題)は30年ごとリメイクするルールがあるのかしらん?じゃあ次回は、2041年か(!)、うわわ、実感わきません、30年先といったら、近未来SFの舞台ですよ、って、いったい何の話でしたっけ。

前作の話は置いといて、新作の「中身」についてドロ~リと語ることにしましょう。

遊星からの物体X ファースト・コンタクト 2011年米

監督 マシーズ・ヴァン・ヘイニンゲン・Jr. 出演 メアリー・エリザベス・ウィンステッド、ジョエル・エドガートン、ウルリク・トムセンほか

遊星からの物体XファーストP.jpg舞台は南極。ノルウェーの調査基地です。厚い氷の下からUFOと、謎の生物(怪物)に死体が発見されます。隊員たちがその死体を掘り出し、基地に持ち帰ったことから、とんでもない悲劇が始まります。

その不気味な生物は死んではおらず仮死状態なのでした。基地で息を吹き返し、次々と隊員を襲いはじめるのです。襲われた隊員は怪物の体内で消化されてコピーされます。怪物は隊員になりすまして、次の獲物を狙う・・・うわあ、なんていやな展開だ!

隊員たちはヘリコプターを失い、無線装置を破壊され、基地に閉じ込められます。一番の恐怖は怪物そのものより、仲間のなかに「人間に化けた怪物」がいること。それを見破れないこと。いったい誰が怪物で、誰が人間なのか・・・疑心暗鬼にとらわれ、結束して怪物と戦うべき隊員たちは内部から崩壊していきます。

ここまで読んでお気づきのように、プロットは「遊星からの物体X」そのものです。映画ラストで怪物が化けた「偽犬」がアメリカの南極基地に走ってゆきます。このラスト・シーンが、前作(82年)のファースト・シーンにつながるわけですね。

さて、率直に申し上げて、トータル評価としては、82年の前作のほうが、新作より優れていると思います。まあ前作はあまりにも完成されていたので比較するのは酷ですが。。。新作が、首都圏でさえ、たったの1館でひっそり上映されているのも致し方ないか。

もちろん本作にも良い点があります。まず、主人公が女性ということ。謎の生物発掘の情報を受け、基地にやってきたアメリカ人科学者ケイト(メアリー・エリザベス・ウィンステッド)です。プロメテウスのヒロインとは違って、ちゃんと美人なのであります。ワタクシは、「ホラー映画のヒロインは美人でなければダメ」と信念を持っているので、ひじょうに嬉しいのであります。いいねいいね。

遊星からの物体Xファースト4.jpg

そのうえヒロインは優秀で、猜疑心と恐怖にかられる隊員たち(男性です)を叱咤激励し、最後は「統率」しちゃうつー、リーダーシップを絵に描いたような大活躍をみせます。これまた、いいじゃないかあ!強い美人に叱られるのはオレは望むところだぜい!って、そうゆうハナシじゃないですね。さらに、「おお、やるねえ」と思ったのは、彼女が「人間と怪物(が化けた人間)を見分ける方法」を見つけるくだり。(82年の前作と同様に)最初は血液検査を計画しますが、怪物に阻止され失敗。そこで彼女は血液検査より簡単な、ある「識別方法」を思いつくのです。

ひげ面のカート・ラッセルじゃあ、これは思いつかんでしょうよ、って、そこをツッコむかよ。

遊星からの物体Xファースト2.jpg

ツッコムとすれば、せっかく人間に化けたのに、どうしてそのタイミングで「本性」を表すのかね?と不思議になる怪物君の根気の無さでしょう。もうちょっと我慢して人間のふりをしとけば、火炎放射器で焼かれずに済むのになあ・・・と思うのは私だけでしょうか。ああ、そうか、怪物にとっては、人間に化け続けるのはかなりのストレスなんでしょう。一定時間が経過すると、いやでも化けの皮がはがれちゃうってことか?12時になるとみすぼらしい姿に戻るシンデレラみたい・・・ちょっと喩えが違いますね。

遊星からの物体Xファースト3.jpg

さて大きな見どころ=怪物の造形についてです。高度なCGに頼りすぎずに、キッチュでチープな「アナログ感」に満ちているのがナイスです。「人間部分」を残したゲテモノ形状は、相変わらず秀逸、粘液的ドロリと相まって気持ち悪さも抜群です。滑稽なほどのワルノリっぷりは、良い意味で前作と同様ですね。ここは素直に高評価していいんじゃないですかーーー。

遊星からの物体Xファースト7.jpg

残念ながら、前作を超える名作とはいかなかった「遊星からの物体X ファースト・コンタクト」ですが、これはこれでアリ。「The Thing」ファンを増やすきっかけになれば、と思います。ただ、首都圏唯一の上映館だったお台場 シネマ・メディアージュでも本作の公開は終了してしまい、興味のある方はDVDでご覧いただくことになりそうですが・・・。

って、最後は意外にふつーのまとめでスイマセン。


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堀越ヨッシー

結局、ストーリー的にはカーペンター版と同じ展開になってしまうのが残念なところ。それでも主演女優は頑張ってたし、地味な役者陣もそれなりに良かったですね。
肝心の“物体”ですが、かなりの部分をアナログで作ったらしいのですが、そのうえにデジタル加工しちゃったもんだから、結局CG映像にしか見えなかったのが残念無念。まあ、気持ち悪さはまずまずでしたが、いわゆるカーペンター版のような生々しさの表現という点ではあと一歩というところでしたね。
 
エンディングでカーペンター版のエンニオ・モリコーネのメロディを流した点は、好印象でした!(^皿^)/。
by 堀越ヨッシー (2012-09-24 10:25) 

アッシー映画男

To 堀越ヨッシー様、nice&コメントありがとうございます。
主演女優さんは頑張っていましたね~。男どもは何をやっておるのか!と一喝したくなりますね。ノルウェー人がたくさんいるなら、その辺の「民族色」を出すと、カーペンター版との差別化が図れたかもしれませんね。
怪物が暴れ出したあとは誰がやられようと同じだわ、みたいに「その他大勢」的な扱いでメリハリがなくなってしまいました。
(つーか、誰が誰だか区別つかない・・・・)
エンディングで生き残ったオジサンが、物体犬を深追いして、あのあと人間に殺されるのかと思うと切ないですね。
物体君の気持ち悪さは、正体あらわすときの興奮状態(?)と相まって、いい感じでしたねーー。コソコソしてると思えば、開き直ったような乱暴狼藉、活動方針を明確にしてほしい物体君です。
by アッシー映画男 (2012-09-30 07:07) 

アッシー映画男

To 怪しい探麺隊様、niceありがとうございます。
by アッシー映画男 (2012-10-06 10:13) 

とねりこ

なんか話題にならないな~と思っていたら、評価がイマイチだった、よいうわけですね?やはり「エイリアン」や「プレデター」のシリーズのように、女性を主役にしてしまったのがいけないのかな?
カーペンター監督の作品で私がとても感心したのは、女性が全く出演していなかったことなんです。怪物うんぬんより、女性ぬき、という設定が南極基地という舞台をリアルにしていたと思うんです。
ところがこの新作で女性を出してしまった。これがいけない。別に女性差別とかではなくて、リアリティを追求するなら、全員男性俳優でかためるべきだったのです。さらに、カーペンター作品に登場しなかったような、クセ者キャラを配すればいい作品になったのではないでしょうか?
早くレンタルDVDで見たいです。最近、良質のSFに飢えてますので。
あの「ロサンゼルス決戦」ものが2作ともサイテーでしたからね…。

by とねりこ (2012-10-26 20:35) 

アッシー映画男

To とねりこ様、コメントありがとうございます。
そうですねー、バランスをとりたくなるのか、「女性を主演に・・・」という安易な方向に走りがちですね。まあ、今回の作品は美人だから許せるのですが。。。

そういえば、ジョン・カーペンター監督がインタヴューで、「82年の『遊星からの物体X』は、撮影現場は寒いし、暗いし、男ばっかり、でさんざんだったなあ」みたいなコメントしていましたね。
女性出演者がいないと、映画の出来よりも、現場のモチベーションが上がらないのが問題ってことでしょうか。。。
by アッシー映画男 (2012-11-02 05:52) 

通りすがり

今さらですが・・・
つい最近CS放送で見てこの映画の存在を知りました
’82の方は何十回と見てるほど好きだったのに・・・
個人的な感想はほぼ上で書かれているのと同じですね
細かいところもきちんと’82に繋がってる点も評価します
主役のメアリー・エリザベス・ウィンステッドはどこかで見た女優だと思ったら
ダイ・ハードのルーシー・マクレーンだったのですねw
by 通りすがり (2014-02-13 22:09) 

アッシー映画男

To 通りすがり様、コメントありがとうございます。
通りすがり様も同じとは思いますが、THE THING好き、としては、やはり82年のグロっけたっぷりのカーペンターズ監督版ですよね~。血液検査のために椅子に縛られた隊員たちの脇で、ひとりが体をガタガタ震わせて正体を現すシーン。他の隊員がキャーキャー騒ぐところが演技とは思えリアリティで、つい笑ってしまうのであります。怖すぎると、笑ってしまうものなんでしょうか・・・。
by アッシー映画男 (2014-02-23 15:09) 

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