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映画 「ザ・ファイター」拝見。「ロッキー」の感動を超える名キャストの名演技に震えました! [映画]

「ザ・ファイター」を観ました。2011年アカデミー賞では作品賞は逃したもののバットマンことクリスチャン・ベイルさんが助演男優賞、メリッサ・レオさんが助演女優賞をゲットしました。ずばり猿でも分かる感動作であります。

この記事を読み終わったら、未見のかたは、即、映画館に出向き本作をご覧いただきたい。ドロドロ家族模様と、それをバネに(?)ボクシングで頂点を目指す主人公の姿に、お約束と分かっていても、ガツン!とノックダウンされることでせう。

ポスターからは「ありがちスポーツ根性もの」を予想したワタクシですが、とんでもない。出演者の鬼気迫る演技(とくにクリスチャン・ベイル!)が、本作を、お涙頂戴ではない深遠な人間ドラマに高めたのであります。うーん、われながらカッコ良い表現だ、と自画自賛。

名演技のクリスチャン・ベイルさん、エイミー・アダムスさん、メリッサ・レオさんを筆頭に、演技微妙ながらマーク・ウォールバーグさん(一応主役です)が相まみえる「普通でエキセントリックな」物語に、ぶるっとくることでせう。

ザ・ファイター 2010年米 

監督 デビッド・O・ラッセル 出演 マーク・ウォールバーグ、クリスチャン・ベイル、エイミー・アダムス、メリッサ・レオ ほか

ザファイターP.jpgボクシング映画といえば、デ・ニーロ主演&スコセッシ監督の「レイジング・ブル」を真っ先に思い浮かべるワタクシです。もちろんスタローンさんの「ロッキー」シリーズも、変わり種として女子ボクシングのイーストウッド監督「ミリオンダラー・ベイビー」も素晴らしかった。名作かは別として、日本でも「あしたのジョー」が今年公開されましたね。

ボクシングという競技に対し、われわれは勝ち負けの結果だけでなく、「忍耐」「克己」「自己犠牲」といったストイックな精神性を見出してしまうのでしょう。スポーツというには、あまりにプリミティブな「殴り合い」ですから、その”生理的痛み”は、映画ネタとしてはうってつけです。

本作「ザ・ファイター」は、そうしたボクシング映画の本質をキッチリ把握しつつ、抜き差しならない家族愛というフレーバーを加えたのが新機軸であり、見事にはまった、というわけですね。

ミッキー・ウォルド(マーク・ウォールバーグ)は田舎の三流ボクサー。連戦連敗の彼が、ボクシングを続けるのは、自らののぞみではありません。かつての栄光にしがみつく元プロボクサーの兄ディッキー(クリスチャン・ベイル)、息子のマネージャーを決め込み悦に入る母親(メリッサ・レオ)、そして6人の姉妹たちの過剰な期待を受け、ボクシングを止めることが出来ないのです。

家族の「濃すぎる愛情」はミッキーをがんじがらめにします。口応えのひとつも出来ません。そのうえ兄ディッキーは、コカイン中毒で身も心もボロボロ。刑務所を行き来する札付きのワルで、周囲も持て余しています。

うつうつとした日を送るミッキーは、酒場で働くクリスティーン(エイミー・アダムス)と知り合い恋に落ちます。クリスティーンは、ミッキーを支え「家族と手を切り、自分の正しいと思う道を進む」ようアドバイスします。そんなとき、兄ディッキーが窃盗事件を起こし刑務所へ・・・ミッキーまでケンカに巻き込まれ拳を痛めてしまう。こうして、彼はいよいよ人生の岐路に立ちます。

ザファイター1.jpg

さてこの映画。

よくある話ですが、出来の悪い家族が全員そろって、唯一出来のよい息子(あるいは娘)に期待をかけちゃうパターン。本人にとっては重荷以外のなにものでもない。ところが、「良かれと思って彼を応援」している家族は、本人の自発性などくそくらえ!ってなもんで、とにかく押しつけがましい言動を連発します。ああ、恐るべしはベクトル違いの家族愛・・・。

本作は、家族の呪縛から脱却して、自らの意思でボクシングへ向き合い、頂点を目指す主人公ミッキーの「成長物語」なのですね。

ザファイター3.jpg

しつこいですが、映画中盤、ストーカーまがいの家族愛に、観ているコッチまでイライラ~ムカムカ~とフラストレーションたまりっぱなし。悪役?の母親=メリッサ・レオさんと、兄役=ベイルさんの芝居があまりにも上手いんだもの・・・こんなバカ親、バカ兄は、一発ブン殴ってやれ!と主人公に声をかけたくなります。ところが物語は(ある意味、予想どおり)、暴力で何も解決はできないよ、「愛の力」こそすべてだよ、という、KANの歌(懐かしいなあ)の世界に進むのであります。

アツレキがあったからこそ、より強固になる家族の愛と絆!

本当の意味で、「家族一丸となって」目指せ、栄光!

それまでクズ?だった面々が、後半「いい人たち」に変貌(改心?)するのはアザトイけど、このさい、良しとしましょう。

お膳立ては出来ました。

こうなったら、主人公は「てっぺん」取るしかないでしょ!・・・って、この映画は「クローズ ZERO」かよ?

クライマックスは怒涛のファイト・シーン。ミッキー、恋人クリスティーン、家族たち、そしてわれら観客の「想い」がひとつになって世界タイトルマッチに挑む主人公。ガンバレー!ガンバレー!完全に肉体を作りこんできたマーク・ウォールバーグさんの独壇場であります。この俳優さんも、昔はワルで名が通っていました。映画のストーリーと、本人の人生が重なり合ってる・・・深読みかな?

忘れてはいけません。ディズニー映画「魔法にかけられて」で三十路お姫様を怪演したエイミー・アダムスさんが、意志の強い恋人役で大健闘でした。いまや演技派の誉れも高く、今後は、スーパーマンの恋人役や、ジャニス・ジョプリンの伝記映画で主人公をつとめるといいます、期待しちゃうなあ。。

ザファイター2.jpg

そしてもう一度、クリスチャン・ベイルさんを賞賛しちゃいましょう。「マシニスト」では役作りのために30kg減量したバカ役者・・・じゃなく、役者バカの彼。今回、麻薬中毒者を演じるために10kg以上減量し、頭髪を抜くまでしての大熱演。「太陽の帝国」の子役時代からファンであるワタクシは、彼の役者魂に感激ひとしお。これなら「英国王のスピーチ」のジェフリー・ラッシュさんに打ち勝ってアカデミー助演男優賞受賞も納得であります。

蛇足ですが、ミッキーが世界タイトルマッチで入場テーマに使った曲こそ、ワタクシが大好きなホワイトスネイクの名曲「HERE I GO AGAIN」です!大一番にのぞむ兄弟が目を閉じ、場内放送に合わせ歌詞を口づさむシーンにワタクシは泣きましたよ!いったい、どんだけ盛り上げるんだよって。デヴィッド・カヴァーデル御大、あなたの歌声は世界を変えますねっ!(曲を聴きたい方は→ここをクリック

素晴らしい映画を、ありがとうございました!

ザファイター4.jpg

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azm

ども!昨日王様のブランチで紹介されていました。主人公役のマーク・ウォールバーグさんの身近にあった本当の話を、ずっと温めていたとのことでした。マーク・ウォールバーグさんの思い入れが詰まった映画なんでしょうね。
by azm (2011-04-03 13:12) 

ふくずみ

私も観ました!
アッシー様のご感想に同感です。
クリスチャン・ベールのなりきりっぷりには脱帽でした。アッシー様の書かれているとおりバカ役者ならぬ、役者バカですね。

怖いのは姉妹連中ですよね、戯画化されてましたが、ブサイクなふてぶさしさは煮ても焼いても食えない感じ。実話をもとにしているそうですが、あんな描かれ方された姉妹たちから、クレームこないのでしょうか。

WHITESNAKEの、HERE I GO AGAINは、ミッキーが恋人の家に向かう車からも流れていますよね。
それを伏線にし、タイトルマッチでは堂々の入場テーマ曲、心憎い演出でした。80年代ロックを代表する名曲ですよね。カヴァデルがいまだ現役というのがすごいことです。

エイミー・アダムスは私も好きです。30代半ばにはいって飛ぶ鳥落とす勢いですね。本作でアカデミー助演女優賞をとって欲しかった、残念です。
by ふくずみ (2011-04-03 14:42) 

アッシー映画男

To azm様、コメントありがとうございます。
マーク・ウォールバーグさんも主役だけあって肉体改造など頑張っておられました。
ただ、もともとあまり表情の豊かではない俳優さんなので、周囲の「濃すぎるキャラ」に、ご本人がちょっとかすんでしまいましたが・・・そこも絶妙なバランスとプラス評価しております。
細かいところが上手く出来ていて、脚本もしっかりしていて、いかにもアメリカンな「成りあがり物語」が、ちょっとした感動物語になっちゃうところがステキであります。
日本でこうゆう映画はまだまだ撮れませんね~~。
by アッシー映画男 (2011-04-04 05:44) 

アッシー映画男

To ふくずみ様、コメントありがとうございます。
いやあ、ミッキーの姉連中は、俳優ではなく、一般公募のエキストラか?というほど、ふつうにブザイクでしたねえ。
ホワイトスネイクに食いついていただきありがとうございます。
「HERE I GO AGAIN」から、そのまま「Is This Love」に展開するという流れも・・・それじゃ、ホワイトスネイクのライブですね、あははは。
こうなったら、ディープ・パープル時代の名曲「Burn」で締めくくって欲しかったですね。そこでリッチー・ブラックモア復帰!?うーん、ありえない。

アカデミー助演女優賞は、「ザ・ファイター」から2名ノミネートだったんですね。
賞レースでも、映画と同じく、嫁(恋人)VS 姑(母親)の戦いだった、ってことでしょうか。エイミー・アダムスさんには、まだまだ今後、受賞チャンスがありそうです。大丈夫でせう。
by アッシー映画男 (2011-04-04 05:51) 

亮

こんにちは。
この映画、自分は好きでした。
分かりやすい展開である一方、家族については、非常に複雑で・・・
このギャップが良かったんだと思います。
音楽も好きなんですよ。
by (2011-04-09 08:04) 

アッシー映画男

To 亮様、コメントありがとうございます。
分かりやすいのに、けっして俗っぽくなく、ベタな娯楽映画以上の作品になっていましたよね~~。ストーリー自体は、予想どおりともいえますが、要所要所の味付けが素晴らしかった。
ミッキーの姉妹、まじにイヤ~な雰囲気でしたね(って、そこを注目かよ!?)。
そして音楽。80年代、90年代を思い出させる名曲が、やはり素晴らしかったです。いまさらながら、再認識いたしました。
やっぱりワタクシは、自分の青春時代(70年代後半~90年代初め)に聴いていた、ベタなハードロックがツボにはまりますです。
ん?これって、ただのオジサンってことでしょうかね。
by アッシー映画男 (2011-04-10 22:03) 

zebra

 友達と見ました。

今回は厳しいコメントに なります。

問題児な母親と兄貴でしたね。母親を演じたメリッサ・レオがアカデミー賞の助演女優賞と兄貴を演じたクリスチャン・ベールが助演男優賞を受賞した演技力は さすが!

・・・が、ウォルバーグ演じるミッキーに関わりすぎたために重荷にさせてだいぶチャンスを潰したのは まぎれもない事実。急遽代役の相手選手は体重差がありすぎな無茶な対戦を組ませたり  特に兄貴は 薬や暴力沙汰で 足をひっぱりまくって・・・・

 ミッキーは家族に甘過ぎですよ!それが元で前の奥さんと別れて娘との親権も無いんでしょうし、トレーナーや恋人のシャーリーンにも散々迷惑かけて・・・・

 無茶な試合を見かねて ミッキーに声を掛けてくれた最初のプロモーターは
「このままじゃチャンスを潰すぞ!私のジムに来るといい、練習中も金を払うから心配するな」
 
 一度目のチャンスは断った。もったいなかった。

二度目のプロモーターは親父さんが連れてきてくれてチャンスに乗ったが "厄介者はお断り"が条件。あたりまえですよね・・・・それを快く思わない母親は親父さんに当り散らしたり恋人のシャーリーンを罵倒して気分が悪かったです。

 "家族は家族、 ボクシング・ビジネスはボクシング・ビジネス"の区分けはしないと・・・・

 ボクの小さいときの知り合いのレストランのご主人とその息子さんもそうでしたが 息子さんが後を継ぎたいと言った時 父親であるご主人は・・・

 "よそで メシ食ってこい"と言ったそうです。身内がそばにいては しがらみや甘えが出て 腕を磨くのに妨げになるから よそで修業して一人前になってこいって事です。

 母親と兄貴は そう言うべき立場なんです!
by zebra (2012-09-10 21:23) 

アッシー映画男

To Zebra様、コメントありがとうございます。
コメント、ごもっともであります。
いやあ、困った家族でしたねえ。

しかし、心理学的にもこうした「家族どうしで縛りあう」、悪い意味での共存性というのは、よくある話でして、そのあたりをうまくくみ取って、観客をイラッとさせて、最後にカタルシスというのが、この映画のツボですね。

まあ、こんな威圧的、支配的、独善的な親だったら、私なら主人公よりもはやく、さっさと家を出てたと思いますが、人生さまざま、といったところでしょうか。。。
それにしてもクリスチャン・ベールさんの演技は素晴らしかったですね。

バットマン・シリーズからはもう引退かなあ、残念です・・・って違う映画の話をしてどうする。
by アッシー映画男 (2012-09-23 11:11) 

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