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映画 「20世紀少年」 評価は保留、3部作完結を待つことにしましょう! [映画]

観ました、話題の映画、「20世紀少年」! 70年代のグラム・ロックバンド、Tレックスの名曲「20 Century Boy」を題名に冠した、浦沢直樹の人気コミックの映画化です。

なにせ原作は、全22巻(「21世紀少年」2巻を含めると24巻)という膨大さゆえ、映画化にあたって「どこを刈り込むか」に、スタッフは悩んだことでしょうね。

かくいうワタクシは、原作をときどき週刊誌で眺めるくらいで、通しでは読んでない「初心者」なのであります。それゆえ、いろいろな余計なことを感じたかもしれませんが。。。

20世紀少年 2008年日本

監督  堤幸彦、 出演 唐沢寿明、豊川悦司、常盤貴子、香川照之、黒木瞳、ほか多数

コンビニを経営する、しがない40歳のケンジ(唐沢寿明)。彼は小学生時代に、遊び仲間たちと一緒に「よげんの書」を書きました。内容は、世界征服をもくろむ悪の組織が、世界各地を破壊し、2000年12月31日に世界が滅亡する---という他愛のないものでした。が、なんと、30年後、「よげんの書」に書いたことが次々に現実になっていきます

カルト宗教集団を率い自分を「ともだち」と呼ばせる教祖こそ黒幕であり、彼は小学校時代の仲間である、と確信したケンジは、地球を守るため、当時の仲間たち(豊川悦司、常盤貴子、香川照之、石塚英彦ら)を集め、「ともだち」に、果敢に立ち向かおうとします

「ともだち」は容赦なく世界の都市でテロを起こし、日本の施設を爆破します。ケンジたちは、どう戦えばよいのかも分からないまま、タイムリミットが近づく限界状況で悲痛な戦いを開始します。その結果は?

20世紀少年ポスター.jpg

本作は、登場人物が多いので、ザクザクといろんな俳優が出てきます。芸能人大運動会ではありませんが、俳優さんの「お祭り」としては楽しめますねえ。遠藤憲一は出てきたとたんお亡くなりになるわ、津田寛二も同様に瞬殺、生瀬勝久に至っては仏壇の黒枠写真のみの登場。豪華というか、すごいなあ。。。

映画は緩慢にならず、グイグイ進んでいきます。少々、駆け足気味で説明不足のうらみはありますが、やむなしか。いずれにしても、映画そのものは面白かったですね。

ただし、手放しでは褒めることはできない点が多々あり、評価は3部作が完結する来年夏(?)まで保留としたいです。

20世紀少年3.jpg以下、本作の「気になった点」を指摘したいと思います。

世界征服をもくろむ「ともだち」が、警察組織を掌握し、政党を結成して政治まで動かす--トントン拍子に野望実現していく様は、いくらコミック原作とはいえ、あまりにリアル感が欠如しています。「よげんの書」以上の絵空事です。その罪は脚本にあります

ホラーでも、アクションでもそうですが「非リアルな設定」を、どうやって観客に違和感なく刷り込むか、というのが、この手の映画の肝なのです。設定が荒唐無稽だからといって、はなっから観客にすり寄るような演出や脚本は論外ではないでしょうか。

くわえて、不愉快なのは、脚本と演出の「ゆるさ」。せっかくの企画を台無しにしかねません。

たとえば、竜雷太演じる老刑事が、後輩刑事に、捜査で掴んだ事件の核心を語るシーン。眉毛を逆八の字につり上げ、血管切れんばかりに大見栄を切って語る竜雷太---なんですか、このバカバカしい熱演は?コメディか?せっかく上がりかけたテンションも、虚しく下降しちゃいました。

ワタクシの推測ですが、まじめ俳優の竜雷太さんは原作コミックを読み、刑事が眉毛をつり上げて語る「画」を見てしまった。彼は、そのとおりに演じた。でも、人物の眉毛がつりあがっているのは、浦沢直樹の絵の特徴であり、それを実写で演じちゃだめでしょうって。おいおいっ!

次の問題、「絵」です。

マンガ本は「静止画」としての「絵」の面白さがあっても、映画は「動画」ゆえ、そのまま同じ絵ではNGです。映画的にどうなのか?を吟味して演出してほしいわけです。

たとえば、ケンジの小学生時代のいじめっこは双子です。二人は、おおむね画面左右に、シンメトリカル(対象)配置されます。それはいいとしても、大人になった二人が手を振るシーンでは、全く同じタイミングで、ひとりは右手で、ひとりは左手で「シンメトリカルに」手を振る念の入れようです。どうして、大林宣彦のような、こんなつまならい演出をするのでしょうか?ハッキリ言って、苦笑しか出ません。

こんな「絵」が面白いとでもいうのでしょうか?シリアスならシリアスに徹するべきです。(ま、それを言ってしまったら、「ともだち」が手のシンボルを書いた布で、顔をぐるぐる巻きにしている様など、ミイラかよ、わけわかんねえよ、ってことになってしまいますがね)

20世紀少年2.jpg20世紀少年1.jpg

なんといえばいいのでしょうか、演出と脚本の甘さから飛びだす小骨が、いちいちのどに引っかかる、というのでしょうか。コミックを映画にする際の「見識」がつたないというか。

これに比べると、コミック原作でも「デス・ノート」の脚本、演出は、格段に素晴らしかったといえましょう

本作は、唐沢寿明さんほか「まともな」俳優さんの頑張りもあり、出来は決して悪くないです。3部作ということもあり、一発目の本作は見逃せないでしょう。ただ、なんとも、前時代的な、妙~なものを観た気分になってしまいました。今一歩の感がぬぐえません!

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Kelly

おはようございます。
今日も暑そうですねえ。

実によくわかるレビューですねえ。
見処も、気になった点も。

日本の実写版って、大抵が演出や脚本に物申したい気持ちになってしまいますが、本文にもありますように、「デスノート」に限り、本当によくできていましたね。配役がよかったのでしょうか。特に主役の2人。

しかし、アッシー様のレビューを読んでますと「20世紀---」に出てくる俳優陣もなかなかのもののようですから・・・
やっぱり演出と脚本の問題となるのでしょうねえ。

う~ん・・・ 邦画は、どうしても辛口になってしまいます。
ハリウッドB級映画を観たときのような寛大さに欠けるワタクシなのです。(笑)

しかし、最近実写版が多いですねえ。
ドラマも(TVはあまり見ませんが)、最近はほとんど原作(漫画)から作られているようですし。

ハリウッドもネタ切れといわれていますが、日本はもっとその傾向にあるように感じております。
頑張っているのは、やっぱり漫画家?!
だけど漫画そのものでなく、わざわざ実写にしちゃって、そもそもの良さや面白さを削って、なんか陳腐な作品に仕上げてしまうようで・・・。

スパイダーマンやバットマンくらいのものが作れるならいいんですけどね。(せめて「デスノート」レベルのものを作って欲しいものです)

と、やはり邦画には手厳しいコメントになってしまいます。
(だから、DVDでいいや・・・って思っちゃうんだな・・・(笑))

でも、唐沢は好きなので、迷っているのでありました。(爆)


by Kelly (2008-09-08 08:38) 

みその

アッハ、観ました、20世紀少年!
アッシー映画男様の評価、キビしいですねぇ(予想どおりデス、ハイ)。

3部作を観るまで評価は保留と言いつつ、コッテンパンじゃねえかよ(笑)。たしかに、お金かけるところ違うんじゃない?と思いました。

まず、ギャグは全てはずしまくりですよね。怖いくらいの滑りっぷり。
竹中直人の指パッチン、イタイ!って叫びそうでした。

ともだち、の手下の男が、勤め先の更衣室でワイシャツを脱いだら、下に”指マーク”のTシャツ着てた、というオチ、爆笑ものですよね。
それ、白いワイシャツの上から、透けて見えちゃうって。

ケンジが、仲間から昔話を聞かされるたび「そんなこと、あった?」って切り返す表情。回数カウントしたくなるほど何度も何度も出てきますねっ。あんた、若年性アルツハイマーか?

でも、この映画に、すんごい見所あります!
それは、常盤貴子さんのセーター姿です。セクシ~セクシ~
胸元が豊かで、うらやましいナ~キャ~
by みその (2008-09-09 22:23) 

ふくずみ

アッシー映画男様、
原作をヘタにいじってないので、その点、悪くない映画と思いました。たしかに、ご指摘のとおり、実写とコミックの差を埋めきれてない感じは否めません。「手放しで褒められない」というのは同感です。

とくに時事ネタ(?)の折り込み方は、みその様のご指摘にあるように、あざとく恥ずかしいものです。
それに(これもみその様のコメントどおりですが)、ワイシャツの下に「ともだちマーク」のTシャツを着ている、なんて、チープな演出にもゲンナリですね。

話は変わりますが、20世紀少年の登場人物は1960年前後の生まれ(現在45歳過ぎ)ですが、コミックファンは20代、30代で「ずれている」ような気がします。
20代、30代の若い(!)世代がこの映画を観ると、リアル体験がないので「そうゆうものかな」と納得できるのかもしれない。

一方、ケンジと同世代からすると、出てくるネタ的には、しっかり分かるんだけど、それだけに、「そうじゃないんだよなあ」みたいな違和感も強いんではないでしょうか?

私は大阪万博に行った友人が羨ましかったし、大阪万博から札幌に期間限定で移設された「スカンジナビア・パビリオン」に感動したタイプ、要するにケンジの世代。たぶん、アッシー様も、ケンジ世代(ですよね?)。

Tレックスをリアルタイムで聴き、タイムカプセルを埋めちゃう世代のわれわれ(?)だからこそ、この作品に、「逆に」違和感があると思うんですが?
by ふくずみ (2008-09-10 08:23) 

アッシー映画男

To Kelly様、

コミックの質は、日本は世界的にもダントツだと思うのです(それほど海外のコミックを読んだわけではないけど)。
ハッキリ言って、アメリカの劇場アニメ「ファインディング・ニモ」とか「モンスターズ・インク」、「シュレック」だの大嫌いですね。アメリカ人は頭がおかしいのではないか?と疑いたくなるほど、バカバカしいです。
大人で、これをまともに楽しむとしたら、よほどストライクゾーンが広いのか、はなっからアニメに「この程度」しか求めていないか、ということかと。

一方、コミックを原作にた映画となると、とたんに日本の作品はダメですよね~?ということで、日本映画界は「コミックを映画にするな」ということでしょうか?

20世紀少年、是非見てください。
この映画を観て、大人げなく怒ってしまうようでは、まだまだダメだという試金石なのかもしれませんね。
by アッシー映画男 (2008-09-11 23:28) 

アッシー映画男

To みその小姐、

もう~、みその小姐の着目点ときたら「常盤貴子さんのセーター姿の胸」ですか--分からないでもないけど。。。それじゃ、唐沢寿明さんの立場ねえだろうって。

常盤貴子&豊川悦司といえば、10年以上前のドラマ「愛してくれと言ってくれ」ってことでしょうか。あの頃と比較しても、それほど変わっていないお二人。ほんとに若いですよね~。

「20世紀少年」のギャグの滑り度は、真夏の浜名湖を凍結させるくらいの寒さでしたね。竹中直人の出るシーンは、ほんとうに酷いですよね。

あと、ケンジのコンビニに信者たちが押し寄せるシーン。。。全員エキストラ?というくらい、芝居が成り立っていない。ここは、思いっきり苦笑いしてあげましょう。
追われ身をひそめながら、路上で弾き語りするケンジ。そのココロは?全く意味不明。おいおいおいっ!

東京に現れた巨大ロボット!
手をこまねいて、無為にやられていく、警察や自衛隊の連中---って、何やってんだよって。ウルトラセブンに期待かよ?

このシーンだけでも、ひーーー、寒い寒い。

ツッコミポイントがありすぎて、ツッコミ出来ない、というコペルニクス的転回、というか「開き直り」ですね。まさに、矢吹丈の「ノーガード戦法」ともいえますね。

この気分をリセットするには、奥菜恵が大活躍(?)のホラー「シャッター」しかないでしょうか。
by アッシー映画男 (2008-09-11 23:43) 

アッシー映画男

To ふくずみ様、
そうですね、ケンジと同年代のワタクシには、「あったあった」という感覚があるだけに、逆に、それをこんな風に描くなよ、という不満と怒りになりますね。

映画の中に出てくる、ケンジの少年時代のべたべたな「いじめっこ」たちの描写。どらえもんのジャイアンそのものですよ。あ~あ。

少年時代の映像が、セピア色っぽいのも、紋切り型の編集で、あざといなあ、って。あいまいな記憶になると、ボンヤリした画面になるのもイヤッ!!昔のテレビドラマかよ?

そうじゃなく、少年時代をむしろクリアな画像で、しっかり描くべきではないでしょうか?なぜなら、この少年時代に、すべての事件の起点があり伏線が隠されているのですから。
変な「色づけ」はやめてほしいのです、ホント。

現在←→少年時代とシーンが、頻繁に切り替わる編集も、イライラ度がつのります。昨今、「時系列をシャッフル」する映画作りは一種の流行ですが、切り替えタイミングにセンスが無さ過ぎです。
何かを説明するために切り替えているだけで、実に「解説的」な演出です。映画の流れ、ではなく、説明、のためのシーン。ダメです。

そして、おおおお、大阪万博(1970年)、で、スカンジナビア館、出ましたね。
たしか花畔(←札幌界隈の人間でないと絶対に読めないね)に移設されましたよねえ。ワタクシ、親に連れられ、しっかり行きましたよ。
もちろん大阪万博ではなく、札幌のスカンジナビア館のほうですけど。。。

また鋭いコメント、お待ちしております!
by アッシー映画男 (2008-09-12 00:00) 

亮

コメントを控えておりましたが・・・ この作品、観ました。
正直言って自分は頂けませんでしたね。
オリエンタルラジオやタカアンドトシが出てきたときには、はぁ~ って感じになりましたよ。
ただでさえ登場人物が多くて、しかも、ストーリーも駆け足で進んでゆくのに、主要なキャスト以外にも大物が出てるものだから、頭の中を整理するのが大変なんですよね。
「ともだち」が誰かを特定させないためかもしれませんけど・・・

自分も3部作を観て、もう一度、感想を述べようと思います。


by (2008-09-12 06:53) 

ふくずみ

アッシー映画男様、
スカンジナビア・パビリオンがあったのは、花川で、花畔じゃなかったような気がしますが?札幌ローカルネタで恐縮ですが、一応気になったもので。
「花畔」って地名は、「ばんなぐろ」って読むんですよね、むちゃくちゃですよね?ばん・なぐろ、なのか、ばんな・ぐろ、なのか?

ところで、20世紀少年、こんなに盛り上がれるとは、逆の意味で奥が深い作品ともいえますね。第2部が楽しみ(?)です!
by ふくずみ (2008-09-14 00:35) 

アッシー映画男

To 亮様、
亮様のブログ、サクサクと更新されて素晴らしい。ワタクシは仕事が詰まるとすぐ間が空いてしまいます。いかんいかん。。。

さて、コメントありがとうございます。
「20世紀少年」鳴りもの入りで、オールスターキャストでの映画化だけに、思いっきり否定した批評は少ない(圧力?)ような気がします。
そうですね、たしかに、登場人物が多すぎて、さらに有名どころを配すると、混乱してきます。

よく群像劇と称して、すんごい沢山のキャラが登場する映画ありますが、よほど脚本がしっかりし演出にメリハリはないと、ただただ混乱しますね。
数年前「ゴスフォード・パーク」という映画がありました。
貴族のお屋敷に集まった人々が織りなす人間ドラマに、殺人事件を絡めた群像劇でした。
出るわ出るわの登場人物たちを理解するだけでも一苦労。やっと、人物理解が分かった頃、映画が終わっていた---という、情けないやら悔しいやら。

20世紀少年、は3部作を観ての評価ですね、やはり。最後に怒り狂っているのでは?と危惧がありますが。
by アッシー映画男 (2008-09-14 09:06) 

アッシー映画男

To ふくずみ様、
ははは、「花川」と「花畔」の違いを言っちゃうと、これ「札幌ローカル」じゃなくて、「石狩ローカル」なネタですね!?

ちなみにワタクシの実家は、札幌市の手稲であります。
ふくずみ様のお住いの「福住」とは真逆の方向ですね。---って、ここで北海道ネタですかあ?それも楽しいけど。
by アッシー映画男 (2008-09-14 09:12) 

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