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映画 「ICHI 市」、綾瀬はるかさんに拍手を送りつつ、評価は微妙--- [映画]

人気若手女優の綾瀬はるかさん。映画にCMに引っ張りだこです。超美人ではないけど、明るいキャラと「癒し」空気に、ワタクシも好感をもっています。

そんな彼女が、真逆(?)なキャラと思える、勝新太郎の当たり役「座頭市」の女版を演じるという。虚を突くキャスティングに、この目で結果を確かめざるをえない「ICHI 市」であります。

ICHI 市 2008年日本

監督 曽利文彦、 出演 綾瀬はるか、大沢たかお、中村獅童、窪塚洋介、竹内力、ほか

市あやせ.jpg

カミングアウトしますが、実~に、感想を書きづらい映画です。

「容疑者Xの献身」のように手放しで褒められるなら良いですが、「ICHI」は、多くの素晴らしさと、少ないながら決定的欠点が同居していました。時代劇っぽく言えば「褒めるも地獄、けなすも地獄」ってとこかなあ・・・・

綾瀬はるかさん個人は、大健闘。拍手を送りたいです。

脚本もベタながら、素晴らしい。人生観、哲学をもった内容で、これも評価します。

しかし・・・どうしても納得できない点が。。。それは、記事の最後に書きますね。

綾瀬はるかさんが演じる市(いち)は、盲目の旅芸人(瞽女(ごぜ))。瞽女は、数名で一緒に行動しますが、男と関係を持った者は追放され、ひとりで生きねばなりません。いわゆる「はなれ瞽女」になるのです。

話はそれますが、30年前の岩下志麻主演映画「はなれ瞽女 おりん」(水上勉原作)は、渋い名作であります、原田芳雄も良かったなあ---おっと、古い話ですいません。

ICHI3.jpgICHI4.jpg

「ICHI」の話に戻ります。強姦されて、はなれ瞽女となり、諸国を一人さまよう市ですが、か弱いだけの女ではありません。幼少の頃に仕込まれた居合剣の達人です。悪さを仕掛けてくる男たちは有無を言わさず「斬る」あらくれ男が束になろうと、彼女の必殺剣の前に敵ではありません。彼らは、秒殺で血祭りにあげられます。

殺陣シーンは見事です。曽利監督お得意の映像へのこだわりもあり、興奮です。北野たけし監督「座頭市」とは違った、スポーティーな立ち回りといえましょう。

心を固く閉ざす市の唯一の願いは、幼少時代に可愛がってくれた恩人(剣の師匠でもある)と、もう一度、再会することです。(この恩人が座頭市?)。

彼女の願いも虚しく、とある宿場町で、町を二分する勢力抗争に、市は巻き込まれます---おお、ありがちな「主人公巻きこまれ」パターン。黒澤明の『用心棒』から連綿と続く定番ですが、かなり食傷気味だよ、なんか新たな設定ないのかなあ、、まあ、それは良いとして。

ちなみに、野党の凶悪ボス=中村獅童、対抗する地元やくざの若親分=窪塚洋介と、実生活で修羅場をくぐったお二人を配したところが憎い(?)。小室哲哉、加勢大周、岸部シローも加えたいなあ--おいおいっ!

さてさて、男に襲われそうになった市を、助けようとして、逆に助けられるヘナチョコ浪人の十馬(大沢たかお)が登場します。「刀が抜けない」腰ぬけ侍の彼は、なにかと市の世話を焼くのですが、市にとっては迷惑至極。

「なぜ、そこまで心を閉ざす?」と尋ねる十馬に、市は辛辣に答えます、「目の見えない私らには、今が昼か夜かもわからない。物事の『境目』が分からないんだ」。--境目が分からない、人の気持ちも分からない、人を信じることもできない。彼女は「生きていたって、死んでいたって、どっちでもいいんだよ、私は」と言い放ちます。

しかし、邪心のない真っ直ぐな十馬の優しさは、いつしか、殺伐とした市の心に「何か」をもたらしていくのです。

そう、本作の肝は、市のすさまじい殺人剣でなく、それ以上の力を持つ「愛」なのです。市が、人の愛を確信したとき、皮肉にも悲しいラストシーンを迎えます。

ICHI1.jpgICHI2.jpg

盲目、とは実に象徴的です。「見えない」とは何か?目が開いていれば、物理的に網膜でモノを見ることはできます。しかし、すべてが見えているのか?そもそも「愛」や「信頼」は概念であり見えるものではありません。目が開いている者たちの、私欲、煩悩、憎しみに比べて、市の心はどれだけ平静であろうとしているのか・・・・・

なかなかに深い問いかけをしてくる映画です。ただの「アイドル系アクション映画」と思っていた本作、期待以上の人間ドラマが織り込まれており、嬉しい誤算。いやあ、良いですねえ。

--と、さんざん褒めてから、けなすのは心が痛むのですが、ご容赦を。。。

ある点で、本作に、どうしても納得できないのです。

それは何か?

運命に翻弄され、はなれ瞽女に身を落とし、ボロをまとってさすらう女。人間の業を知りつくし、底なしの孤独を抱える剣の達人--そんな市の「凄味」が、綾瀬はるかさんから、全く感じられない事です。

尋常ならざる空気が、スクリーンから滲んで欲しいのですが、こないのですよ、それが。

失礼な言い方ですが、綾瀬はるかさん、所詮はかわいい女のコなんです。女座頭市は断じてこれではない!もちろん、彼女が悪いわけではなく、彼女をこの役に選んだ製作側の罪です

ってなわけで、市を演じるににふさわしい女優を勝手に考えました。秘めた力&暗さ+凄味を出せる方ということで、悩んだ挙句に

(1) 黒木メイサ (2) 小池栄子 (3) 真木よう子 (4) 堀北真希

としました。いかがでしょう?(黒木メイサさんを知らない方のために写真を以下に付します)

kurokimeisa.jpg

市にはマッチしていませんでしたが、綾瀬はるかさんに敬意を表し、次回作「ハッピーフライト」は公開したらすぐに観に行きます!綾瀬さん、これからも頑張れ!!

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亮

ICHはまだ観てないですね。
秘めた力&暗さのイメージ+凄味、たしかに、この要素は必要だと思います。
それがなかったですか。残念。

「ハッピーフライト」は、楽しませてくれそうなので、観に行きたいと思ってるんです。
安心してみられる作品じゃないかな?と思ってます。

by (2008-11-10 01:43) 

みその

こんばんはぁ~。札幌、寒いよぉ~。冬です、冬。
綾瀬はるか、アッシー様コメントどおり、盲目の殺人剣の使い手をやらせるには無理がありますよ。
でも、黒木メイサも違うってばぁ。アッシー様ランキング第2位の小池栄子は意外にいいかも。真木よう子--エロおやじか、アンタ?

私なら、沢尻エリカですね。彼女、素で、すごみあるもの。睨まれただけで怖い。
映画の内容、そっちのけになっちゃったけど、ま、いいか。
窪塚洋介の「ワッシャーーー」みたいな発声、相変わらず?でした。NGです。
中村獅童、いつもの分かりやすい悪役っぷりに辟易(レッドクリフはかっこいいのにね)。NGです。
へっぴり侍役の大沢たかお、時代劇に似あわない、NGです。
消去法でいくと、完全にはまっていた俳優は、唯一、柄本明すか?
by みその (2008-11-10 23:31) 

アッシー映画男

To 亮様、
コメントどうもです。
記事を書いたあとで考えたのですが、この作品、過去の「悲劇的な座頭市」のイメージを払拭して、もっと広い年齢層に受ける「新しい座頭市像」を作りたかった、のかもしれません。
あえてミスキャストともいえる、綾瀬はるかさんをもってきた、とも。。。そうだとすれば、製作側の意図は当たったようですね。

なにせ、勝新太郎の座頭市のどんよりしたイヤな空気はありませんから。個人的には、それは違うだろ、と思いつつ、映画自体は、むしろ娯楽性の高い楽しめる作品だと思いました。

ハッピーフライトと、セットで見ると面白いかもしれませんね?

by アッシー映画男 (2008-11-11 06:31) 

アッシー映画男

To みその小姐、
沢尻エリカの凄味--って、みその小姐は、あの、ぶっきらぼうな感じに反応しましたね?うーーん、沢尻エリカの座頭市、それも面白いかもしれないなあ・・・なんだか、ピッタリの気がしてきました。

窪塚洋介の、あのしゃべり方、笑いましたね~。現代劇も、時代劇も無関係のセリフの語尾につく(ような気がする)「シャー!」。
ウッシャーー!ワッシャーー!--おいおいっ!江戸時代にいたのか?そんなヤツ!?

柄本明、死にそう老人が似合いますねえ。この役をやらせたら、彼の右に出る人はいないでしょうね。
真木よう子--そうですか?エロめがね(?)で観ていませんか?彼女の演技力はすごいと思いますよ。もっともっと「第一線」の映画で活躍してほしい女優です。

中村獅童、レッド・クリフではカッコいいですよね!頑固でありながら、自分の価値観に閉じこもっていないオープン・マインドな将軍を好演していましたね。あのニヤッとする表情も、レッド・クリフでははまってました--って、なんで違う映画のネタを書いているのだ?
by アッシー映画男 (2008-11-11 06:40) 

ふくずみ

どうもです!座頭市、ついに「女版」まで作るとは!それも綾瀬はるかで!
私は、ルトガー・ハウアー主演、1989年アメリカ映画「ブラインド・フューリー」のB級世界が大好きです。ベトナム戦争で視力を失った主人公が大暴れ。まさに、アメリカ版の座頭市!でも、なんで米国人が仕込み剣なんでしょう?

すいません、「ICHI」を観ていないので違う話をしちゃいました。

「はなれ瞽女 おりん」--題名だけ知ってます。アッシー様お薦めであれば、ちょっと観たくなりました。DVD、レンタルショップにありますか?
by ふくずみ (2008-11-12 00:44) 

アッシー映画男

To ふくずみ様、
コメントバック、遅くなりスイマセン~~。
ルトガー・ハウアーの「ブラインド・フューリー」、あははは、懐かしいなあ。「ブレード・ランナー」の反乱レプリカントグループのリーダーでしたねえ。カッコいいんだけど、「ブラインド--」はスカ!って。
まさにB級!

「はなれ瞽女 おりん」をはじめ、水上勉の「北陸系の人間ドラマ」の小説は、実に切ないんですよ。出勤途中に読むと、会社でどんよりしちゃいそうですけどね。映画のほうは是非観てくださいませ!
きっとDVDレンタルもあると思いますよ。
by アッシー映画男 (2008-11-16 10:35) 

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