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映画 「GANTZ(ガンツ)」 予想外の陰鬱でウエットなテイストに、いいんじゃない!と嬉しくなったSFアクション(?) [映画]

久しぶりの邦画は、松山ケンイチさん、二宮和也さん共演「GANTZ(ガンツ)」であります。有名コミックが原作だそうですがソチラ方面に疎いワタクシ、設定もストーリーも知らず映画を拝見したわけです。

映画ポスターから「GIジョー」や「ファンタスティック4」のようなノーテンキなSFアクションものを想像していたワタクシ。ラバー系コスチュームに身を包んだ地球防衛組織の面々が、世界征服をもくろむ悪の組織や異星人と戦う・・・と思いきや、うひゃ、かなりテイストが違ってましたね。

主人公が異星人と戦う、という骨子は合ってますが、地球防衛軍でもなんでもない、普通の人たちが命と引き換えに、異星人と「戦わされる」というグラディエーター状態。そして映画を覆うじっとり陰鬱、陰惨な空気は完全に予想外と言わざるをえません。ノーテンキどころか、味方はぼかぼかと殺されるし、血しぶきは飛び散るし・・・気分をスッキリさせたいときに観るもんじゃないすね(そんなときはブルース・ウイリス主演「RED」を観よう!)。

じゃあ、評価はNG?と言われれば、とんでもない。正直、ツボにはまりました。後編(4月公開)にも絶対にいかねば!と強く思った次第であります。

GANTZ(ガンツ) 2011年日本

監督 佐藤信介 出演 二宮和也、松山ケンイチ、夏菜、吉高由里子、田口トモロヲ、ほか

ガンツP.jpg

原作コミックのファンならいざ知らず、予備知識無しで観た場合、評価微妙、というか賛否の分かれる作品だと思います。良く言えば「独特の雰囲気と、世界観を持ったエキセントリックな作品」ですが、悪くいえば「ばかばかしい設定(特に異星人キャラ)に、エログロな味付けをした奇妙で不快な映画」となります。

あとは観客の「好み」ですが、そこに触れると長くなるので、ざっと映画の紹介を。

就職活動中の冴えない大学生 玄野(くろの、二宮和也)は、就職面接に向かう途中、地下鉄駅で幼なじみの加藤(松山ケンイチ)を見かけます。ホームから落ちた酔っ払いを引き上げようと、線路に降りた加藤を助けようとして、玄野まで線路に落ち、二人は地下鉄に轢かれて絶命・・・の、はずが、気がつくとマンションの一室に・・・。

そこには黒い球体(GANTZ)が置かれ、見ず知らずの数名の人々が呆然としています。何が何だか分からぬうちに市街地へ転送された彼らはGANTZの指令により、異星人と戦う羽目になるのです。正体不明の球体GANTZは、死んだ人間(あるいは死にかけた人間)を集めては、戦闘用パワード・スーツと武器を渡し、捨てコマのように異星人と戦わせていたのでした。ほとんどの人間は死にますが、生き残ると戦いっぷりに応じGANTZから点数をつけられます。いったい、何のために・・・・。

ガンツ2.jpg

ネギ星人との戦いを生き延びた加藤と玄野は、目が覚めると日常生活に戻っています。夢だったのかといぶかしく思う二人ですが、再びGANTZの強制招集を受け、田中星人と戦わされる二人。新たなメンバー老婆と幼児は即死、それまで生き抜いてきた高校生 西も死ぬ。こうして異星人に殺されるまで、日常と戦闘を行き来させられる彼ら・・・一度死んだ身(?)とは言え、閉塞状況のなかで「生きたい」と強く願う玄野と加藤。

しかし、この無間地獄を、どうやって乗り越えれば良いというのか?

さて、この映画。

まずは外国からの借りものではない、日本的ウエットなオリジナリティを高く評価したいです。

自由意思に反し、戦いに投入させられ、相手(敵)の意図も素性も分からぬまま、命令どおりに殺戮を続けなければならない。そうでなければ自分が「死ぬ」という究極。毎回加わる新たなメンバーのほとんどは、容赦なく異星人に殺される。玄野は開き直って自分勝手に戦いはじめますが、加藤は「力を合わせ全員で生き延びよう」と主張してぶつかりあいます。そんな加藤に好感を持つ女性岸本(夏菜)。

一方、日常生活で玄野は同級生 小島多恵(吉高由里子)から告白され、親のいない加藤は弟を養わねばなりません。「守りたいもの」「失いたくない」ものを持った時、彼らの戦いは敵(異星人)だけでなく、仲間へ、そして自分自身に向かっていくのです。

ガンツ1.jpg

主人公たちの苦しみは「シーシュポスの神話」でカミュが描いた、無為な努力を繰り返さねばならない”虚無への絶望”でもあるのです。薄っぺらい博愛を振りかざすアメリカのSF映画に比べて、はるかに哲学的で深いドラマとも思える本作。深読みっぽいですが、観賞中の”いたたまれなさ”は、過去のこの手の映画にはなかった味わいがありますね。

ガンツ3.jpg一方、異星人たちのキャラは、ダウンタウン松本さん監督作品「大日本人」なみのキッチュな馬鹿らしさに彩られ、GANTZのメッセージは悪ふざけっぽくゲンナリ。その点は個人的に食いつけないのですが、こうゆうアンバランスが、最近のはやりなんでしょうか?ワタクシには良く分かりません。

ついでに言えば、演出の「脇の甘さ」は相変わらずですねえ。たとえば敵(千手観音)を前に、怪我した仲間とベタな会話を続ける様子に、今はそんなことしてる場合じゃないだろ!とツッコんじゃいました。桃太郎侍が口上を述べている間は、悪人は斬りかかってこない、ってかあ・・・おいおいっ!変なところで”お約束の演出”か。うーん、なんだか違和感。

俳優陣は皮肉に聞こえるかもしれませんが、はまっていないところがかえってよかった。松山ケンイチさんは変な一本調子が面白く、二宮和也さんはダメ学生(似合っている!)からヒューマンなヒーローに変ぼうしていく様が意外にもスムース。夏菜さんは全裸で登場したかと思ったら、ラバーコスチュームで巨乳強調し、原作ファンのエロ心をくすぐることでしょう、その潔さ、大変よろしいですね。

個人的には吉高由里子さんが演じる、ちょっとオタクでストーカーっぽい女子大生が素晴らしいなあ、と思いました。演技なのか素なのか判然としない周りから浮いた感じは、違う意味で怖いけど・・・。続編でラバーのパワード・スーツ着用、はないね、たぶん。

ガンツ4.jpg

良い点も、妙な点もまじりあったケイオテックな作品と言えますが、4月公開の第二部(完結編)では内容もパワーアップしているだろうと期待を込め、本作には星3つ!の評価をさせていただきますよん。

頑張れ、田口トモロヲさん!・・・って、まとめはそこかよ?


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YaCoHa

こんにちは。
私も原作未読で観ました。(面白かった~!)
田口トモロヲさんってもっと細身の印象があったんですが、最初気付きませんでした。(もしかして別人と勘違いしてたかもしれません。爆;)
私は原作を読もうか非常に悩んでいるのですが、映画続編まで待てそうにないのでオークションと古本屋を捜索中です。(映画人気のせいか、全巻セットの在庫がなかなかないんですよ~。)ちなみに吉高由里子さん、撮影の合間にあのスーツ、着てみたそうですよ。(笑;)
by YaCoHa (2011-02-12 23:02) 

アッシー映画男

To YaCoHa様、nice&コメントありがとうございます。
田口トモロヲさんといえば、あの伝説の名作SF「鉄男」の主演の方ですからねえ~大尊敬してしまいます。が、最近は、ちょっと情けない役が多く、そこがまたよろしいのです。
原作コミックをちら見しましたが、(ファンの方には申し訳ないですが)コスプレ強調した個人的にはまったく食いつけないシロモノでしたので、ワタクシは映画のほうで楽しみたいと考えております。
吉高由里子さんの「幸薄い」感じは、実に不思議な存在感がありますね。
映画の中で彼女の「私みたいな女は気味悪いでしょうけど・・・」みたいなセリフは、まさしくそのとおり!と声を出しそうになりました。この人、異星人以上に怖いかもなーーと、妙に感心したのであります。
続編では是非、吉高さんにもラバースーツ姿を披露してほしいものです・・・って、結局ポイントはそこですね。あはは。
by アッシー映画男 (2011-02-14 05:40) 

アッシー映画男

To いっぷく様、niceありがとうございました。
by アッシー映画男 (2011-02-19 10:26) 

アッシー映画男

To K様、niceありがとうございました。
by アッシー映画男 (2011-02-19 10:28) 

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