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映画 「アンノウン」 これは面白い!アイデンティティ喪失系映画のお手本のような作品です。 [映画]

本日は少々「分析口調」になりそうですが、ご容赦を。

映画「アンノウン」(公開中)であります。予想通り(?)、設定と展開が強引で、普通に考えるとスットコドッコイ映画のはずなんですが、ずばり面白かった!拍手喝さいを送りたいですね(皮肉ではありません)。映画好きの方は、バカにせず是非観て下さい、と申し上げたいっ!

もちろん「なんじゃあ、こりゃ!?」と拳を固くする方もいるでしょう。矛盾をあげればキリがありません。しかし、本作はオチもさることながら、主人公の心理的不安や葛藤、登場人物どうしのカラミに力点がおかれ、そのうえ、後半は派手なアクションシーンまで楽しめる、という「一粒で二度・三度美味しい(古いな~)」作品です。グチャグチャにならずに、上手くまとめており、やるなあ~と感心しましたよ。

本作は、数年に1回、お約束のように公開される、「主人公が自分を喪失する」あるいは「自分だけが周りと違う認識をする」というネタなんですね。欧米人って潜在的な”存在不安”があるのでしょうか、ホントにこの手のハナシが好きですよねえ。

たとえば数年前の「フォーガットン」というサスペンス映画。ジュリアン・ムーアが演じるフツーの主婦が、ある朝、息子がいないことに気づきます。いない、というのは、存在自体キレイさっぱり無くなっているわけです。息子に関するもの(写真、持ち物)は何ひとつ存在しない。周囲の人たちは「あなたに息子なんていなかったわよ!」と当たり前のように言う。主人公は、無茶苦茶、混乱するわけですね。どこへ息子は消えた?なぜ誰も息子を覚えていない?ま、この映画の「オチ」は史上まれにみるエキセントリックな破壊力がありますので、未見の方、DVDを借りて大笑いして下さい。

おっと、何を言いたかったかといえば、「主人公が、自分や家族のアイデンティティ(存在証明)を探し求める」というサスペンス映画が、ハリウッドには実に多いということでした。

「フォーガットン」以外にも、ジョディー・フォスター主演の怪作「フライト・プラン」。あるいは「ボーン・アイデンティティ」シリーズ。ニュアンスは違いますが、言葉の通じない異国(日本)での精神的孤立を描いたスカーレット・ヨハンソンちゃんの「ロスト・イン・トランスレーション」←これは良かった!

ただし、ほとんどの作品が「なんやねん、これ?」という脱力雰囲気に仕上るのは不思議です。それでもまだ作るか、この手の映画を?

あれれ、前置きが長くなりました。そろそろ映画「アンノウン」にとりかかりましょう。過去の同類映画とは、どー違うのか?を確認しちゃいます!

アンノウン 2011年米

監督 ジャウム・コレット=セラ 出演 リーアム・ニーソン、ダイアン・クルーガー、ジャニュアリー・ジョーンズ、ブルーノ・ガンツほか

アンノウンP.jpgアメリカの植物学者マーチン・ハリス博士(リーアム・ニーソン)は、美しい妻リズを伴い、国際学会に出席るすためドイツのベルリンにやってきます。タクシーでホテルに着いた二人ですが、パスポートを入れたアタッシュケースを空港に残したことに気付いたハリス博士は、別のタクシーで「ひとりで」空港に戻ります。

このタクシーが酷い交通事故に遭うんですね。頭を強打した博士は、意識不明の昏睡状態に陥ります。病院のベッドで目覚めたハリス博士は、事故から4日も経過していることを知り仰天!医者の制止を振り切って、妻のいるホテルに向かいますが、そこから衝撃の展開が始まります・・・・。

妻は何事もなかったようにパーティで談笑しています。事情を説明しようとするハリス博士に対して彼女の発した言葉は「どちら様ですか?」。あっけにとられる博士、「からかっているのか?」。ところが、さらに驚くべきことに、妻の横には”自分ではない”マーチン・ハリス博士がいるではないか・・・・。

「自分がマーチン・ハリスだ!あいつは偽物だ!」と必死に主張する博士ですが、身分証明できるパスポートもなく、証明する人もなく、狂人扱いでホテルをつまみ出されます。いったい何がどうなったのか?インターネットで自分の大学のHPを見ても、ハリス博士の顔写真は「偽物」のほうで自分ではない。事故の打撲で、頭が狂ったのか?

ところが、あるきっかけで「自分こそがハリスだ!」と確信した彼は、事故タクシーを運転していた女性ドライバー(ダイアン・クルーガー)を見つけ出し、彼女の協力のもと、異国の地ドイツで、”自分がマーチン・ハリスだと証明する戦い”に挑みます。

さて、この映画。

アンノウン3.jpg

何が良いかと言えば、第一に、主人公ハリス博士を演じるリーアム・ニーソンさんの演技ですねえ。さすがはアカデミー賞俳優、上手いっ!自分を失う恐怖と不安もさることながら、愛する妻を自分を名乗る偽せモノ?に奪われた憤りが、ひじょーにリアルで良い。つい「分かる、分かる」と妙に納得です。すっかり感情移入しちゃいましたもの。最近は「特攻野郎Aチーム」「タイタンの戦い」など関西仕事が多かったリーアムおじさんですが、久しぶりに演技派の面目躍如といえましょう。パチパチ!

アンノウン1.jpg

第二の良い点は、脚本の素晴らしさ。前出のように、本作は、設定と展開にかなりの無茶があります。ですから「荒唐無稽なハナシを、そうと感じさせないプラス要素」が絶対に必要なんです。すなわち、脚本の出来にかかってる、と言って過言ではありません。登場人物、セリフ、展開で、観客をグイグイ引っ張れば、(個人的には)無理な設定も気にならない、いやむしろ、設定が無茶だからこそ面白く感じるわけです。

脇役(タクシー運転手、主人公の妻、その夫、etc)が、しっかり描かれていることも特筆すべき美点です。そこをおろそかにすると、主役も引き立ちません。最近は、脇役(の描き方)が雑な映画が多くゲンナリしてましたので、本作はより一層、素晴らしく感じましたね。

アンノウン2.jpg

第3の良い点は、上記と関係しますが名優ブルーノ・ガンツさんです。出番は少ないながら、映画を支えていましたね~。「ありえない話」を語る主人公の、少ない理解者となるユルゲンを演じています。

元東ドイツ秘密警察のメンバーで、人探しのプロ、という設定ですが、ガンツさんの、いかにもドイツ!という渋い存在感が抜群なんです(実際にはスイス人ですが)。

ブルーノ・ガンツ.jpg

ユルゲンが「敵」と対峙するシーンは、アクション皆無なのに緊張感バリバリ、映画のハイライトのひとつと言えます。ちなみにブルーノ・ガンツさんといえば、ヴィム・ヴェンダース監督の名作「ベルリン 天使の詩」の天使役がサイコーでしたね~~。数年前に、ヒトラーを演じていたのは余計だったかな?

ベルリン天使の詩.jpg

「アンノウン」、これ以上書くと、どんどんネタばらしになっちゃうので微妙ですが、ハリウッド映画らしく(?)、結果オーライ的ハッピーエンドである、とだけ申しておきましょう。

余談のツッコミ: 身分証明もできず行く先もない主人公が、女性タクシードライバー(ダイアン・クルーガー)に、「オレ、行くとこないので、あんたとこに泊めてくれ」と頼むシーン。これじゃあ新手の変質者だよ、お前・・・。って、それをOKする女性もどうかと思うが。

主人公の「敵」はプロフェッショナルをきどっているわりに、仕事の詰めがイマイチ甘い、という点はご愛嬌でしょう。「小さなことからコツコツと・・・」はサラリーマンをはじめ、組織の人間にとって座右の銘ですぜい。まあ、仕方ないか、人間だもの、みつを。

オチ的には、シュワちゃん主演「トータル・リコール」を思い出しましたけどね・・・おっと、そこまで言っちゃあいけません。

マーチン・ハリス博士の自分探し旅の結末、皆様もぜひ映画館でご覧くださいませ。そうそう、アクションシーンもなかなかのもんですよ。


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