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映画 「ウルフマン」 特殊メイク無しでも、十分に怖いよ、ベニチオさん。。。 [映画]

突然ですが、「・・・マン」の付くタイトルって、結構多いですよね。

一見、分かりやすいようですが、その題名から、映画の内容を適確に予想するのは、なかなか難しいものです。

たとえば「ゼブラーマン」。動物園のシマウマ飼育係(哀川翔)の奮闘を描いたハートウォーミング・ムービー・・・・ではありません。え、知ってた?なんだ、知ってたんすか?

では「笑うせーるすまん」はどうでしょう。笑い上戸の平サラリーマンが、こともあろうに、社長の葬式で大爆笑したことから始まる、社内二大勢力の血で血を洗う抗争。北野武監督のバイオレンス・アクションですね・・・って、違う?続編、「笑う警官」もよろしく。

「ユマ・サーマン」。ブルース・リー・ファンの、頭のいかれたアメリカ女が、黄色いジャージに刀といういでたちで、日本を舞台に大暴れするドタバタ・コメディ(の主役)。ちなみに、最近は、ユマ・サーマン、ではなく、ウマ・サーマンって書かれるけど「馬」はないでしょ。そんなに彼女、顔が長いですか?

さて、ワルノリはやめて、本題の「ウルフマン」についてです。この映画、上記のような迷いは一切無しの、ずばりタイトルまんまの、狼男の物語

満月の夜、緑色の怪人、ならぬ、毛むくじゃらの人狼に変身し、残虐の限りを尽くす主人公。やがて明らかになる呪われた一家の哀しい物語。「謎の怪物」を追いつめる警察。ついに捕獲される主人公。愛の力で、ウルフマンは救われるのか?

・・・てな具合に、う・る・ふ・ま・ん、の五文字から予想される、まんまのストーリーが、目の前にディジャヴのように展開していく痛快ホラーサスペンスでありました。

ウルフマン 2010年米

監督 ジョー・ジョンストン 出演 ベニチオ・デル・トロ、アンソニー・ホプキンス、エミリー・ブラント、ほか

ウルフマンP2.jpg19世紀のイギリス。兄の失踪の知らせを受け、地元旧家に戻った舞台俳優ローレンス(ベニチオ・デル・トロ)。兄は何者かに惨殺されたという。地主の父ジョン(アンソニー・ホプキンス)と、兄嫁グエン(エミリー・ブラント)と悲しみの再会を果たした彼は、さっそく、兄が殺害された謎を解くべく、「怪物」が出るという噂の、うっそうとした森に立ち入ります。

ところが、ローレンスは、怪物に襲われ深手を負ってしまう。・・・・以下、お約束どおり、満月になると、ローレンス君は、う・る・ふ・ま・ん、に変身してしまう。

自分の気付かぬうちに人々を殺戮(したらしく)、朝になると、体中血まみれで目が覚める・・・いったい、どうしたことか!呆然のローレンス。

その後、映画は、ローレンスを襲った「怪物」は何なのか?狼男になった彼の末路は?・・・を、食いつきポイントにして展開するのですが、スイマセン、ワタクシ、ドラマへの興味は限りなくゼロで、もっぱら最新CG技術と特殊メイクで作られた狼男の映像に目が向くのでありました。

(もちろん、ジョー・ジョンストン監督といえば、名作「ジュマンジ」で分かるように、VFX技術をからめながらも、ワクワクドキドキの語り口が身上ですから、「ウルフマン」がツマラナイ、というわけではありません)

ウルフマン1.jpg

ただ、6度のアカデミー賞受賞の特殊メイクアーチスト界の重鎮、リック・ベイカーさんには、どうしたって、出世作「狼男アメリカン」以上の出来栄えを期待しちゃいますよ。

で、さすがはベイカーさんです。主人公(人間)が、狼男に変身するシーンは圧巻です。うおお、と身悶えしながら、瞳孔が細かく変化し、顔面が波打つように盛り上がってくる映像はスゴイ。

しかしです・・・ハイっ、変身完了!のお姿がいかん。ウルフマンというより、ベアマン・・・これクマじゃない?ちょっと情けない感じが・・・。

ウルフマン3.jpg

「ある~日、森の中~、くまさんに~出会った~♪」・・・て、違うだろっ!

さらにツッコムと、ベニチオ・デル・トロさん、特殊メイクなしの「素」でも十分に怖いんですけど・・・むしろ、狼男に変身させず、人間のまま暴れたほうが、インパクト強くないかあ?

ウルフマン4.jpg

ベニチオさんは、「シン・シティ」の悪役以来、久しぶりに、ばっちりはまっており、水を得た魚のよう。やっぱりチェ・ゲバラより、こうゆう役が似合います。実に嬉しい。彼の「はまりっぷり」を見るだけでも、映画館にいく価値はある、と申せましょう。

(以下ネタばれです)ちなみに、この映画には、もう一匹(一人?)、別の狼男が登場しますが、そちらは、さらに「クマ」っぽいのですよ~~。とほほほ。


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映画 「のだめカンタービレ 最終楽章 後編」 のだめと千秋の未来と、クラシック音楽に万歳! [映画]

コミック→TVドラマ→映画と、多くのファンを生み、クラシック音楽ブームさえ牽引した、音楽恋愛コメディ「のだめカンタービレ」、ついに本作をもって完結です(よね?)

1月の最終楽章「前編」も楽しめましたが、今回の「後編」も良かったですよ~~。

書き始めるとダラダラ長くなるワタクシのブログですが(そこが良いとおっしゃっる方もいますが)、今回も、反省なくグズグズ行きますよ~~。

のだめカンタービレ 最終楽章 後編 2010年日本

総監督 武内英樹、監督 川村泰祐、出演 上野樹里、玉木宏、山田優、竹中直人、瑛太、水川あさみ、小出恵介、ほか

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感想は、ずばりこの一言。

良かったあ!楽しかった!

・・・・以上。

おいおいっ、終わりかよ。って、このボケにもそろそろ飽きてきましたが、感想は、ずばりそのままなのですね。それなら、小理屈や分析なしで「のだめ世界」を楽しめばいい!といいつつ・・・・以下、グダグダと書かせていただきます。

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本作は、女子向けコミックらしく、お約束どおりの「ダメ女(主人公)とイケメン優秀男(恋人)の不釣合い恋愛」が描かれます。成人男女とは思えぬ、毒気が抜けたセックスレスなテイストが渋い、つーか、しらじらしい。加えて、おせっかいな友人たちとのドタバタ劇も定番。女子(だけ?)のツボにはまりそうな、ささいな恋愛機微の誇張も、なんともベタ~であります。

・・・と、駄作の評価のようですが、とんでもない。本作は、駄作どころか素晴らしい作品だと思うのです。

なぜなら、ダメ音大生のだめ(上野樹里)と、世界を目指す若手指揮者 千秋真一(玉木宏)が、それぞれが夢にむかって格闘する悪戦苦闘が、ふつーにリアルに描かれているからです。

壁にぶつかり、劣等感に悩み、それでも、音楽に正面から向き合って、自らを乗り越えた先にある、カタルシス・・・こうした一連の分かりやすいドラマが、ワタクシの琴線を刺激しちゃうのですね。

音楽を演奏する、とは、どうゆうことなのか?という深いテーマすら感じます。

とはいえ、そこは「のだめ」らしく深刻にはなりすぎず、要所要所で、コミカル色をたっぷりフレーバー。エキセントリックな登場人物たち(特に、竹中直人演じるシュトレーゼマンは良い!)の言動とあいまって、愉快に観ることができちゃいました。良い意味でのバカさ加減も絶妙なのですね~~。

ひと悶着、ふた悶着の、のだめ&千秋の恋愛も、希望を感じさせるエンディングでほっとしました・・・って、思いっきりネタバレか。

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前編以上に素晴らしかったのは、演奏シーンです。添え物程度ではなく、しっかりと演奏シーンを入れたのは見識といえましょう。演じる俳優さんたちは、大変だったでしょうけど・・・・

まずは、千秋(玉木)とルイ(山田優)が共演するラヴェルのピアノ協奏曲。お二人のなりきりっぷりは完璧です。この曲、昨年、ピアニスト河村尚子さんの実演(大阪シンフォニーホール)を聴き感動したのですが、それがよみがえりましたね~~。

なにせ、玉木宏の指揮者っぷり、ほんとカッコいい。真澄ちゃん(小出恵介)じゃなくても、「ちあき様~~」という気分になります・・・ならないか。

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さらに圧巻なのは、のだめが弾く、ショパンのピアノ協奏曲1番。ワタクシが偏愛する名曲中の名曲ですが、こちらはシュトレーゼマン役の竹中直人の指揮っぷりが、堂に入っていて最高だし、憑依したかのような上野樹里の演技も良し。のだめを撮るカメラアングルも良いですねえ。

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ネタバレで書いちゃうと、ラストの、千秋と、のだめの連弾もしびれます。曲は、モーツアルトの「2台ピアノ」ですが、冒頭の打鍵からして勢いと、メリハリのある演奏で、私が持ってる2枚のCD(有名ピアニストの演奏)より、この映画のサントラのほうが良いのでは?と思う。

と、すっかりベタほめしましたが、上映時間の関係で、Sオケメンバーの活躍があまりなかったのは残念。たぶん、TVで「その後」の特別編があるとは思いますけど。真の大団円は、指揮千秋&ピアノのだめ&Sオケ、の協奏曲ではないでしょうか?曲は、やはり「ガーシュイン」かな!?楽しみ。


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映画 「タイタンの戦い」 暴れてナンボ、のクラーケンさんもあいつには勝てない。 [映画]

GWは、ヘヴィーな人間ドラマより、なんにも考えず楽しめるアクション映画やファンタジー映画が似合います(理由はないけど、なんとなく)。となれば、哀川翔の、というより、仲里依紗の「ゼブラーマン2」・・・に食いつきたいワタクシですが、上映時間の関係で「タイタンの戦い 3D」を観たワタクシです。

神話をベースにした映画って、前提自体が荒唐無稽ですから、細かいこと言うのは大人げないよな、と、納得しつつも、やはりツッコミどころ満載、というのが良いですよね~~。

神VS人間の壮絶な戦い、の謳い文句ですが、パワーでも能力でも、どう見たって神様チームの勝ちは明らかでは?・・・と、身もフタもないツッコミをしてはいかんぜよ!(なぜか方言)

タイタンの戦い 2010年米

監督 ルイ・レテリエ 出演 サム・ワーシントン、ジェマ・アータートン、リーアム・ニーソン、レイフ・ファインズほか

タイタンP.jpg創造主たるゼウス(リーアム・ニーソン)への祈りを忘れ、アルゴス国の人々は「我々に神は必要ない」と、傲慢にふるまっています。激怒したゼウスは、人間たちに制裁を与えるべく、兄弟である冥界神ハデス(レイフ・ファインズ)に使命を与えます。ハデスは、人間に対して、10日以内に姫をいけにえにするか、国民が全滅するかの、二者択一を迫ります

・・・って言われたらさあ、お姫様をいけにえに差し出して、国は助かろう、と思うはずですが。それじゃあ、話が終わっちゃうよ、というわけで(なにせ「神話」ですので)、横暴な神VS人間、の前面戦争に、無理やり、なだれこんでいくのでした。ここで、登場する英雄が、ゼウスと人間との間に生まれた「半神」ペルセウス(サム・ワーシントン)。育ての親(人間)をハデス神に殺された私怨から、人間たちを率いて、神と戦うのであります。

主演サム・ワーシントンさんって、それほどカッコ良いわけでもなく、演技派でもなく、マッチョでもないけど、このところ、大人気ですよね~~。「ターミネーター4」では人間に味方するマシーン役、「アバター」では堂々の主人公。そして本作では神と人間のハーフ(半神)・・・と、いつもエキセントリックな役ばかり。まともな役は出来んのかい!?という、彼自体が、ツッコミいっぱいですね。

あまり言いたくはないけど、サム君、表情の変化がほとんどありません。感情を出さないペルセウス役とはいえ、その能面演技っぷりは、スティーブン・セガールを彷彿とさせるものがあります。やばいぞ、サム君。10年後に「沈黙の半神」(関東では銀座シネパトスのみで公開)に主演しているのではないか!?だめだ、そっち方向は!

話を先に進めましょう。

タイタン3.jpg

半神ペルセウスは、数名のツワモノ兵士たちと、敵(神)の無敵兵器クラーケンを倒す策を求め旅に出ます。

旅先で、巨大サソリに襲われてみたり、守護半神イオに出会ったりしながら、ついに、魔女からクラーケンの弱点を聞きだします。この化け物を倒す唯一の方法は、どんな生き物も「目を見ただけで石にする」メヂューサの首を使うこと。そう、あの髪の毛が蛇になってる、みょろみょろ怪物女。これは難儀なことですなあ。

タイタン1.jpg

ここからは、命がけの迫力アクションシーンと、CG映像が連発です。

メジューサとのねっちり対決。ハデスの手下とのどっきり対決。クライマックスは、巨大クラーケンとの対決・・・と、息をつかせぬ怒涛のファイトであります。

以下、感想らしい感想もありませんが、大暴れのクラーケン君(&手下)が、予定調和的にペルセウスさんにさっくり始末される様をみて、あーー良かったねえ、と、納得するワタクシでありました。

タイタン5.jpg

ゼウスは、不肖の兄弟ハデスの策略で「最高神の座」を乗っ取られそうになったのを、ペルセウスに救われて万事OKね。ありがとう。いろいろあったけど結果オーライだよね・・・つーか、見るからに悪そうなハデスにひっかかったゼウスさん。あんた、神のくせに、オレオレ詐欺の被害老人か?

神話とはいえ、ゼウスさんのボケっぷりには、皆様もしっかりツッコんでおきましょう。チェストーーー!

この映画の、残念キャラの筆頭は、鳴りもの入りで登場したのに、あっけなく、さようならのクラーケンさん。二番目の残念キャラは、もったいつけた割に、ダメオヤジの悪党ハデス神(レイフ・ファインズ)。

一方、くいつけたキャラは、エロ&にょろにょろ感抜群のメヂューサ(を演じた、ロシア出身のモデル、ナタリア・ヴォディアノヴァ)でしょうね。ただ、原形とどめないくらいCGデフォルメされちゃってますけど・・・・

 タイタンメヂューサ.jpgタイタンナタリア.jpg

以上、見どころはその程度かよ?という、GWにふさわしい予想どおりのアッパラパーな映画でした。こうゆう分かりやすい映画、嫌いではありません。十分に楽しめましたね。

3D版で観ましたが、メガネが重いし、追加料金300円を考えると、2Dでも十分でした。


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映画 「アリス・イン・ワンダーランド」 久しぶりにスッキリ!とティム・バートン作品を楽しめました! [映画]

説明無用の名コンビ、ティム・バートン監督&ジョニー・デップ主演のファンタジー・ムービーであります。

このコンビ(正確にいえば、バートン&デップ&ヘレナ・ボナム・カーター、の「トリオ」というべきですが・・・)、前作「スィーニー・トッド」は、バートンらしいダーク&グロ世界にそれなりの満足もあったのですが、生理的に「ゲゲッ」という場面も多くって、いまひとつスッキリしない感がありましたね。

本作は、思いっきり方向を変えて、得意の(?)ファンタジー映画!それも、有名な「アリス」の物語がベースだという。さらにタイムリーに3Dのオマケ(?)つきであります。

期待は高まるものの、数年前「チャーリーとチョコレート工場」が拍子抜けだったし(失礼)、油断できません!・・・・と警戒心いっぱいのワタクシであります。。

ところがどっこい「アリス・イン・ワンダーランド」、ややこしい心配を吹き飛ばす素晴らしい作品でした!これですよ、これ!求めていたのは。

デップだけでなく、アリスを演じたミア・ワシコウスカも良いし、白の女王=アン・ハサウェイもツボにはまり、期待以上の傑作でありました!

アリス・イン・ワンダーランド 2009年米

アリスP2.jpg監督 テイム・バートン 出演 ミア・ワシコウスカ、ジョニー・デップ、ヘレナ・ボナム・カーター、アン・ハサウェイ、ほか

猫の目のようにくるくると変わる展開・・・・ファンタジー映画のストーリーを細かに説明するのは野暮ですけどね。

少女アリス(ミア・ワシコウスカ)は、迷い込んだ「不思議の国」で、自分と向き合い大人へと成長していきます。不思議の国で、アリスを助け、悪の、赤の女王(ヘレナ・ボナム・カーター)を一緒に倒すのは、マッド・ハッター(ジョニー・デップ)と、白の女王(アン・ハサウェイ)。

まあ、誰もが感じるでしょうけど、今回の(今回も、というべきか)ジョニー・デップは上手いっ!素晴らしい!こってんこってん厚化粧、頭のねじがゆるんだようなセリフ、おおげさな身振りでありながら、しっかりとマッド・ハッターの悲しみ、喜びがリアルに胸に迫ってくる、デップならではの超絶名演技と言ってよいでしょう。

加えて、主役のアリスが「可愛くない」のが、よいのですね~~。

ファンタジーの主人公ですから、人形のように可愛らしい容姿・・・日本の女優なら、アヤカ・ウィルソンとか、新垣結衣タイプが思い浮かぶワタクシですが、本作の主演女優ミア・ワシコウスカときたら、ちょっとやさぐれて「不良少女」っぽいのですね。これが、なんとも、はまっているのですね~~。

アリスP.jpg

ストーリーを彩るCG映像は、やり過ぎず、バランス感覚が絶妙で嬉しくなりますね~~。「チャーリーとチョコレート工場」では、あまりにCG映像に懲りすぎ、ストーリーを殺してしまった感があったバートン監督ですが、今回は、そのリベンジなのか、実にお見事です。

アリス2.jpg

と、今回は、ベタな賛辞ばかり並べてしまい、で味気ない記事になりましたが、とにかく、観て損はない作品といえましょう。

ちなみに、個人的にツボにはまったのは、冒頭の、コルセットやストッキングをつけず貴族のダンス・パーティに出るアリスに、母親が「失礼になるでしょ!」と諌めるシーンです。それにたいし、アリスは「コルセットをつけないと、なぜ失礼になるの?」と反抗します。そして次のセリフがいい。「頭に魚を乗せるのが礼儀だとしたら、みな、頭に魚を乗せる?」という、屁理屈ツッコ。あははは。

私事で恐縮ですが、ワタクシ、サラリーマン歴20年以上。職場ではみなスーツを着ているのですが、どうしても、ワタクシはスーツに納得いかないのです。なんで、あんな「ひらひら」を着るのか?電車の席では、隣の人がスーツの「ひらひら」の上に座ってしまうし、風の強い日はばたばたして腹が寒いし・・・・ということで、ワタクシは、スーツの機能性も、礼儀として着る意味も全く分からず、よほどのことがない限りは着用しません。

・・・「世間が正しいというから、無条件にそれに従う」というのは、どうも苦手です・・・と、ちょっと自慢が入っちゃいましたが、この感覚だけはワタクシは、アリスの仲間かな?

つーことは、ワタクシも、アリスの「不思議の国」に行けるかもしれない?

そりゃないですな~~。

アリス3.jpg

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映画 「沈黙の鉄拳」 ついに復活!スティーブン・セガール主演の「滑ってない」ひさびさの痛快アクション!必見です!! [映画]

アメリカ映画界の重鎮・・・というより大仏ことスティーブン・セガール御大の最新作であります。

過去のセガール映画に対し、当ブログはさんざんツッコミを入れてきました(この記事の末尾参照)。なにせ、御大も還暦直前の59歳。”年齢的に”アクションスターのピークを越えていながら、年2本のハイペースで、新作を世に問う活力は尊敬いたします。が、いかんせん、出来あがった映画は、スットコドッコイなC級テイストばかり・・・(前作に至っては、敵はゾンビですぜ!?おいおいっ!)

ところがです!!

4月10日公開「沈黙の鉄拳」は素晴らしい!

ほめだすときりがないですが、これまでの不調(?)が嘘のような、見せどころ(ツボ)を押さえた脚本は秀逸だし、テンポも良い。登場人物の性格がしっかり描かれ、雑な感じは(他作品ほどは)なく、全編、ぐいぐいスクリーンに引き込まれました。

何より、絶頂期を彷彿とさせるセガール御大のアクションが素晴らしいです!悪党たちへの容赦ない鉄拳制裁っぷりに、溜飲が下がること必至ですよ~。

セガール映画の中では・・・というマクラ言葉は不要の、あっぱれな快作であります。

もちろん「敵の弾丸はセガールにかすりもしない」「銃を持つ相手に素手で向かってく」という良い意味の(?)、B級テイスト&ご都合主義は健在です。

個人的には「沈黙の鉄拳」は、「第9地区」を超えている(と思う)。来年のアカデミー賞は、作品賞が「沈黙の鉄拳」、主演男優賞がステーブン・セガール・・・は、無理ですね。

とにかく、痛快B級アクション大作であり「セガール、ついに復活」と宣伝するにふさわしい作品です。全国のセガール・ファンのみならず、映画を愛する皆様、すぐに、銀座シネパトスに向かいましょう。

沈黙の鉄拳シネパトス1.jpg

沈黙の鉄拳 2010年米

監督 キオニ・ワックスマン 出演 スティーブン・セガール、マーライナ・マー、ジェシー・ハッチほか

沈黙の鉄拳P.jpg元陸軍特殊部隊のショーン(スティーブン・セガール)は、冤罪で6年間を刑務所で過ごします。真犯人が見つかり釈放されたものの、妻や子供たちは去り、人生に絶望している彼。

出所したその日。街のチンピラに絡まれた彼は、怒りをぶつけるかのようにそいつらをボコボコにします。それをきっかけに、中国マフィアの一大麻薬抗争に遭遇する彼。さらには、汚職警察官たち、ロシアン・マフィアまで登場し、すさまじい全面戦争に発展していきます。

マフィアに人質として拉致されたティナ(マーライナ・マー)を助けたことで、抗争の渦中に身を投じていくセガール御大。その怒りの鉄拳はとどまることなく、悪党どもに炸裂します!烈しい銃撃戦も見どころながら、マーシャル・アーツで敵を倒すセガールの痛快アクションに、涙するファンも多いのではないでしょうか。

さて、この映画。

セガール御大は相も変わらずの仏頂面ですが、「沈黙の・・・」のお決まり邦題とは裏腹に、けっこう良くしゃべってくれますよ。そのセリフが、いちいち、主人公の「男気」を表していてカッコ良いのです~~

そして、アクション。前述のように、セガールの悪党への鉄拳には手加減ありません。敵の手足の骨を折り、顔面を砕いて血だるまにしたあげくにナイフでグサっ!「俺の人生、返せ~」とばかりの八つ当たり的な仕打ちに、やり過ぎ?と感じる方もおられましょうが、いいのです、これくらいやっていただいてOKです、なにせ、セガール59歳!(関係ないか)

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ラストは、思いっきりの勧善懲悪で締めてくれます。スッキリですなあ。悪党どもを一掃したセガール御大の、すがすがしい表情に、つい、次回作にも必ず行くぞ!とモチベーションアップするから不思議ですなあ(ん?ならないの?それはいかんよ!)。

沈黙の鉄拳4C.jpg沈黙の鉄拳4D.jpg

他の登場人物たちにも触れておきましょう。

中国マフィアの面々、中国人どうしで英語でしゃべるのかよ?というベタなツッコミはあるものの、残酷で抜け目がなく、そのうえ安っぽい感じが絶妙です。中国マフィアの手先となって、暗躍する汚職警察署長の、定番なグダグダっぷりもグッド。

セガールの味方となるロシアン・マフィアの頭領は、これまでのセガール映画にはない出色のキャラで、存在感と迫力に圧倒されましたね(この俳優さん、すごいなあ!)。一方、過去のセガール映画といえば女優に恵まれない感がありますが、今回、紅一点の、迷惑娘テイナを演じるマーライナ・マーが、チャーミングでヨロシイのである。

映画を観終わり、満足いっぱいのワタクシ、映画館(銀座シネパトス)の方と、セガールについて熱く語りあうのでした。お兄さん、セガール御大の行きつけの店(泉岳寺)に、そのうち、是非一緒に行きましょうね~。ということで、二人でパチリ(右が映画館のお兄さんです)。

沈黙の鉄拳シネパトス3.jpg

ダメ押しに、館内に、ひっそり置いてあった「セガールと戦おう」立看板に、顔を入れて写真をパチリ。うーん、恥ずかしいが、これはお約束でしょう。

沈黙の鉄拳シネパトス2.jpg

わははは、ずいぶん楽しめたなあ。今回の「沈黙の鉄拳」は!!

【補足】 過去のセガール映画のブログ記事は以下です。

弾突/DANTOTSU → ここをクリック

雷神/RAIJIN → ここをクリック

斬撃/ZANGEKI → ここをクリック


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映画 「第9地区」 グロでチープが大正解!これは面白い映画ですね! [映画]

前々回の「マイレージ マイライフ」、前回の「NINE」がツボにはまらず、フラストレーションがたまったワタクシ。この気分を払拭するには、滑りが約束されている(それゆえツボにはまる?)、スティーブン・セガール主演「沈黙の鉄拳」(4月10日公開)に行くしかない・・・と思いました。

ところが、エイリアン映画というのに、アカデミー作品賞にノミネートした話題作「第9地区」の公開が始まったことに気づいたワタクシ、セガールも、エイリアンも似たようなもんだ、と、宗旨替えして、近所のシネコンに向かったのであります。

(ちなみに、「沈黙の鉄拳」は、都内でも銀座まで行かないと観れません・・・)

「第9地区」、ずばり、面白かったです!特に後半の予想不能な(ホントっすね)、スピード感あふれる展開は見事。さらに、誤解を恐れずに言えば「グロく」「チープ感いっぱいの」B級テイストが、たまらない魅力なのであります。

最近観た映画では、個人的には「必見印」と申せましょう。

第9地区 2009年米

監督 ニール・ブロムカンプ 出演 シャルト・コプリーほか、エイリアンの皆様

第9地区p.jpg

昨今、流行(?)の手法、セミドキュメンタリータッチ、というのでしょうか。済んだ出来事を、撮影映像と、関係者のインタヴューを通じて、「いったい何が起きたか」を明らかにしていく・・・という体裁です。この手法、使い方を間違えると「あざとさ」が強調される両刃の剣ですが、本作に限っていえば大正解でしたね。

なにせ、ストーリーが荒唐無稽で、普通に見たら(普通の手法だったら)、違和感だらけですもん。そのうえ、過去映画の良いとこ取り・・・というか「ごった煮」のテイストなんですもん。

(以下、ネタばれ) 1980年代、南アフリカのヨハネスブルクに、突然、巨大宇宙船がやってきます。で、でかい・・・まるで「インデペンデンス・デイ」のノリ。ところが船内の100万匹(!)のエイリアンたちは栄養失調でPLEASE HELP US状態。

対応に苦慮する人類側は、市内に「第9地区」なるエリアを設営し、とりあえず難民エイリアン(?)の居住区にします。ところが、いつしか、第9地区はスラム化し、ゴミの山がつもり、ギャング団の暗躍と、人を寄せ付けない危険地帯と化していくのです。

さらにエイリアンさんたちときたら、性格は粗暴、貧乏でいつも腹減ってます、外見はエビそっくりで、ゴムと猫缶が大好物、という、太宰治なら「生まれてスイマセン」とつぶやきそうなトホホな方々。地元住民(人間)とのいざこざが絶えません。

話は脱線しますが、7,8年前に「えびボクサー」というゆるいコメディ映画がありました。「第9地区」のエイリアンさんにも、ボクサー転向という道があるのでは・・・はい、冗談です。

第9地区1.jpg

さて、宇宙船到来から20年がたち、付近住民(人間)の怒りも頂点に達します。ついに政府はエイリアンを「第9地区」から立ち退かせ、市街から200km離れた、新たな居住区「第10地区」に移すことを決定。そのミッションをある企業に依頼します。この企業、実は兵器開発企業なんです。彼らの狙いは、政府代行で公然と第9地区に入り、エイリアンたちの強力な「武器」を見つけること。

ところが、エイリアンの武器は、エイリアン遺伝子だけに反応して動作するので、人間では操作ができません。

ここで登場するのが映画の主人公、エイリアン移動計画責任者ヴィカス(シャルト・コプリー)。彼は業務の最中、第9地区で謎の液体を浴び、体調が急変します。爪がはがれ、歯が抜け・・・・ついに左手が、エイリアンの「エビ爪」に変化してしまう。(このあたりの強引な展開も、B級っぽくてステキだ!)

錯乱するヴィカスですが、兵器企業は、彼が遺伝子レベルでエイリアンと融合したことを知り、さらに、彼がエイリアンの武器を操作できることを発見します。企業は、彼を実験材料として解剖しようとします。

ここからは、SF映画というより、アクション映画のノリ!!

逃げるヴィカス。彼を追う兵器企業と傭兵たち。ヴィカスは、ついに”立入禁止”の第9地区へと逃げ込みます。ここで、知能の高いエイリアンのクリストファー親子の「計画」を知ったヴィカスは、自分が人間に戻るためにはエイリアンの力が必要と知り、彼らの求める「あるモノ」を手に入れるべく大勝負に出るのでした・・・・・

第9地区2.jpg

さて、 この映画。

くどいですが、作品全体を覆う、お約束無用、展開予想不可能の「グロ」「チープ」「ごった煮」感がまず良いです。本作に比べたら「地球が静止する日」だとか、「サイン」のようなエイリアン映画は、バカバカしい(というか、何が面白いのか分からん)の一言に尽きます。

ほんと、スクリーンに釘付け、でドキドキでした。有名俳優は出ておらず、それどころか、主演のおじちゃんは、あまりにオーラ無し、気弱なサラリーマン風情ですが、これがまた良いのだな~~。だって、有名俳優が主演だったら、エキセントリックな結末が無いこともわかっちゃうじゃないですか?本作のおじちゃん(主演俳優)だったら、ラスト、どうなってもおかしくないもの。

そんなにスリリングなら、名作「エイリアン」並みのシリアス作品なのか?といえば、そうではなく、随所にB級テイストな遊び心があって、またまた嬉しいんですよねえ~~。

そもそも、あれだけハイテクな宇宙船を建造し、強力な武器を開発したエイリアンが、エビそっくりで、行動も知性ゼロの昆虫まがい・・・・そりゃないだろうって。「スターシップ・トゥルーパーズ」からの影響かな。

エイリアンの好物が、猫缶なのはまだしも、缶ごと頬張るなんてあり得るかあ?

そのうえ、ラストは、エイリアンそっちのけで、闘うのは、ヴィカスVS傭兵軍団。やっぱり使ってほしいよな!と思ってた装置が大活躍して溜飲が下がります。ここは、映画「エイリアン2」のノリだ!戦闘シーンは、オチャメ無しです。「プライベート・ライアン」や、「ハンバーガー・ヒル」よろしく、人間兵士どもはエイリアンの特殊武器で木端微塵に吹っ飛び、肉片と血液があたりに飛び散るという・・・・ちょっと子供には見せたくないかも。

本作は、この、とりとめなさ、というか「バランス無茶苦茶」っぷりを逆手にとったところが、見識であり、面白さでもあるわけです。結末はスカッとはせず、ちょっとした悲哀が漂うのもいい。

とにかく、気に入りました、この映画。

もう一度観たいとは思いませんが、「一度は観るべき」作品でしょう。

最後、褒めておいてなんですがアカデミー作品賞ノミネートは、ハッキリ言っておかしいと思う。そうゆう映画ではないと思います(じゃ、どうゆう映画だよ?と聞かれると困りますが)

えびボクサー.jpg蛇足ではありますが、前述した映画「えびボクサー」のDVDジャケつけておきます。こちらは、題名通り、「第9地区」のエイリアン以上に、もろエビ、ですなあ。

しかし性格は、エイリアンよりも良かったかも・・・・。


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映画 「NINE(ナイン)」 豪華出演者が裏目に出た?・・・微妙に困ったミュージカル大作。 [映画]

観る前から、なんとな~く「イヤな予感」がした作品です。

しかし観ないことには、何も語れませんから、不安を払いのけ劇場へ向かいました。

NINE・・・・アカデミー賞2回獲得した名優ダニエル・デイ・ルイスを中心に、ニコール・キッドマン、ペネロペ・クルス、ケイト・ハドソン、マリオン・コティヤール、ジュディ・ディンチ、さらには、大御所ソフィア・ローレンといった、国際色豊かな超豪華女優陣が脇を固めます。

出演者だけ見たら、間違いなく、一級の作品。では内容は一級なのか?

私は知っているのです。豪華俳優を並べた大作が、過去にどれだけ滑ってきたかを。。。そりゃ無理ないでしょう。有名俳優が2人出演だけでも、それぞれ満足できる役を与えなくてはいけない。ましてや、ビックネーム(の女優)が7人ともなれば、監督は、映画のまとまりより、女優への配慮に腐心するのも仕方ないです・・・深読みでしょうか?

危惧は(個人的には)当たったようで、「NINE」、かな~りまとまりのない印象でした。主人公のエロダメっぷりと、ノイローゼ状態にゲンナリしたダウナー系作品です。うーーん、マリオン・コティヤールが素晴らしかっただけに、なんとも残念!

NINE 2009年米

監督 ロブ・マーシャル 出演 前述の方々

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1960年代のイタリア。有名な映画撮影所チネチッタが舞台です。グイド(ダニエル・デイ・ルイス)は、マエストロ(巨匠)と称される脚本家&映画監督ですが、近作は失敗作続きです。復活をかけ、新作に取りかかりますが、撮影開始を1週間後に控え、脚本が全く書けない・・・・おお、四面楚歌状態。

マスコミへの会見で、新作の内容を聞かれても、当然、何も答えられないグイド監督。質問者を煙にまき、ほうほうのていで会見から逃げ出す始末です。

仕事でノイローゼのグイド君、私生活もドロドロなんです。愛人(ペネロペ・クルス)と、妻(マリオン・コティヤール)、主演女優(ニコール・キッドマン)、雑誌記者(ケイト・ハドソン)らに翻弄され、どんどん極限状態に追いつめられていく。

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このアリ地獄な展開、どこかで観たなあと思ったら、思い出しました!ニコラス・ケイジ主演「バッド・ルーテナント」にそっくりです!(ブログ記事は→ここをクリック

「バッド・ルーテナント」の麻薬中毒の汚職警部補(ニコラス・ケイジ)と、「NINE」の女たらし映画監督(ダニエル・デイ・ルイス)・・・転落人生っぷりがピッタリと重なります。

とはいえ、本作はシリアスな人間ドラマではなく「ミュージカル」ですからね。主人公の陰鬱気分は添え物に過ぎず、映画の目玉は女優陣のゴージャスな踊りと歌。そこを楽しめば良いのだ!・・・・と思いきや、ダニエル・デイ・ルイスの卓抜な演技力が災いしたか、主人公グイドの切羽詰まった空気が、映画全体をどーんと重く支配し、楽曲や踊りを全然楽しめないぞぉ!

うひゃーー、これはキツイです。

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乗り切れないので、ますます批判的にスクリーンを観てしまうわけで・・・女優たちやダンサーの踊りも、”豪華”と”エロ”を履き違えた、あざとさが漂います。あぁー、こんな風に観ちゃうと、ますます映画に乗り切れない・・・負のスパイラル!

ちなみに、ペネロペ・クルスは、素直にエロすぎると思います。

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結論を急ぎましょう。

ネタばれですいませんが、脚本を書けずに苦しみぬいたグイド監督・・・結局は、映画作りを断念しちゃう。こうなるとミュージカルというよりは、映画監督残酷物語。ヘヴィーな人間ドラマ。救いがありまへんがな~~。

一応、ラストは「希望」を持たせて終幕するものの、結果オーライで締めた「バッド・ルーテナンス」よりも、よっぽど悲惨です。

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もちろん、本作にも素晴らしい点があります。

グイドの妻役のマリオン・コティヤール。彼女も堂々たるアカデミー賞女優ですが、浮気ケダモノ男を、夫に持った女性の切なさを見事に体現していました。いやはや、美人だし、演技が素晴らしいし、前作「パブリック・エネミーズ」に続き、ますます彼女を好きになりました。( それに比べ能面女優ニコール・キッドマンときたら・・・・いや、この先は書くまい)

それと、衣装デザイナー役で、グイドの良き理解者でもある肝っ玉かあさん=ジュディ・ディンチおばさんが良いんですよ~~。意外にも(?)歌が上手いし!

感動ポイントが、ミュージカル本来の歌や踊りではなく、マリオン・コティヤールとジュディ・ディンチの演技というのは悲しいですが、まあ、それも良し!

今回に懲りて、しばらくはミュージカル映画は避けよう・・・と思ったワタクシであります。


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映画 「マイレージ マイライフ」 ベタな”自分発見”ドラマに、食いつけなかったワタクシです。 [映画]

「ハートフル」とか「ヒューマン」と冠されるアメリカ映画には、いくつかの「型」があります。それがなぜ米国人のツボにはまるのか?は分かりません。が、本作は、そのうちひとつの定番の「型」にすっぽりはまってます。それは、これ!

「家族にも、愛にも、無頓着な、お気楽&我が道を往く主人公が、さまざまな人や出来事に触れ、『人生の大切なもの』を見出してゆく」

・・・・うーーん、われながら見事に、2行でまとめてしまったなあ、この映画。もう書くことないよな~~というのも寂しいので、記事を続けましょう。

面白いのは、ラストで主人公が見つける『人生の大切なもの』です。この手の映画って、それが、ほぼ確実に「愛」なんですね。別に面白くないだろうって?いえいえ、紆余曲折を経て、見つけた大切なものが、「愛」だなんて、ちょっとベタすぎません?

せっかくなら、「盆栽」とか、「テコンドー」とか、「女装趣味」とか・・・そりゃ映画にならんですね。

マイレージ マイライフ 2009年米

監督 ジェイソン・ライトマン 出演 ジョージ・クルーニー、アナ・ケンドリック、ヴェラ・ファーミガほか

マイレージP.jpg1年間の出張日数が322日(!)という主人公ライアン(ジョージ・クルーニー)の仕事は、リストラ宣告人。今日はサンフランシスコ、明日はデトロイト、翌日は・・・と、アメリカ全土を移動しながら、客である会社経営者の変わりに、不要となった会社員にリストラを告げるという「代行業」です。

結婚に価値を見出さず、恋人も持たず、バックパックに入らない人生の荷物は持たない!がモットーのライアンは、出張しているときだけが幸せという変人。人生の唯一の「目標」は、航空会社のマイレージをためること。それも、1000万マイルという、過去6人しか達成していない大記録に挑戦しているのです。

そんなライアンですが、出張先で知り合った美女アレックス(ヴェラ・ファーミガ)や、会社の新入社員ナタリー(アナ・ケンドリック)と関わるうちに、自分の人生に疑問を感じ始めるのでした・・・・

で、記事冒頭に戻るのですが、ライアンは、いい歳して「人生の大切なもの」=「愛」に目覚めるのでありますね、でも、好き勝手やってきたツケ(バチ)なのでしょうか、求めた時には、手に入らない・・・これが愛というものか。生まれ変わった希望と、ほろ苦さが入り混じる、なかなか良く出来た作品でした。

まあ、それはそれとして。

率直に感想を言いますと、この映画には食いつけませんでした。

作品がことさら悪いわけではありません。私が「テイスト」に馴染めないのです。映画のメンタリティに。

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本作に、つーか、アメリカの「人生見つめなおし系映画」に違和感を感じる理由は、映画全体を覆っている「愛に無関心な人間なんて最低!」という女子中学生が言いだしそうな空気であります。本作でも、なにかにつけて「ライアンは、全然わかっちゃいないんだよね、人生を~~」みたいな切り口なんですよ。

私は思いますね。別に良いんじゃないの?って。

他人のことなんてほっとけよ!とツッコミたくなるほど、脇役たちは、しつこく、ライアンに人生訓示を垂れたり、世話をやく。(まあ、映画の進行上しょうがないけど)もう、イライラ~~です。

くどいですけど、どーでもいいじゃないですか。ライアンは、自分の自由意思で、自分の稼いだ金で生きている。誰かに迷惑かけているわけでもなし、愛が要らなきゃ、本人の勝手、それでいいでしょ?私など、映画で否定されているライアンの生き方に、むしろシンパシーを感じてしまいます。

「愛こそすべて」的お約束と、周囲の「おせっかい」っぷりに(映画と割り引いて観たとしても)ついていけないのです。

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本作が肌に合わない理由がもうひとつあります。

主要登場人物たちが、なんだかんだ言いながら、下半身はユルイことです。とりあえずアメリカン~とりあえずベットイン~~。おいおいっ!恋愛がどーのと能書きを並べたてた、優秀な新入社員ナタリーちゃん、きっちりしているようでグダグダじゃないか!ライアンの気持を代弁すれば、お前には何も言われたくないよ、って。。。

要するに、登場人物の性格がね。いかんのですよ、いかんのです。

ライアンが首ったけになる、美女アレックスに至っては、ある意味、あんた犯罪ギリギリだぞ、と。相手を間違えたら殺されてるぜ(そうしたら、全く違ったテイストの映画になりますな・・・お、それ、すごいな!)

いずれにしても、食いつけないままに映画は終わってしまいました。

で、以下は、ちょっと違う視点で書きます。本作で考えちゃったのは、リストラです。私事ですが、私は会社生活25年近いのですが、仮に、「あんた、今日でクビだよ」とリストラ宣告されたらどうなるだろう、と。この究極シミュレーションは難しいですが、果たして、自分も、映画の「リストラされた人たち」みたいな、茫然自失、がっくり、どんより、になるのかなあ、と。

ちょっとカッコよすぎるかもしれないけど、私の場合、会社はあくまで人生の「一部」に過ぎないです。会社には全く不満はなく、楽しんで好きな仕事して給料までもらえるなんて最高!ですけど、辞めさせられたからといって、「自分が求められていないショック」や、「ここまで一生懸命にやってきたのに」という恨み節は、それほど無いんじゃないか。結果として、収入が途絶え、生活どうする!?という問題はありますが・・・私も、ライアンのように「対象への思い入れ」が少ない人種なのかもしれませんね。あはは。

以上、私の評価は「ベタ」の二文字の、「マイレージ マイライフ」でした。まとまり悪くスイマセン。

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映画 「ハート・ロッカー」 アカデミー賞6部門を制覇した渋い1本。 [映画]

岡山県に1週間ほど出張しておりました。またブログ更新をさぼってしまった・・・・気を取り直して、本日の映画です。「アバター」をおさえ、アカデミー賞レースで、作品賞、監督賞など6部門を獲得した「ハート・ロッカー」であります。

HURT LOCKER・・・棺桶、という意味深な題名のこの作品。皆様、すでにご存じのように、イラク戦争下のバクダットにおいて、テロ爆弾を処理する米軍危険物処理班の、悪夢の日々を描いています。

まあ、テーマの性質上、とても「面白い」とは言えない緊迫感と、閉そく感・・・・そして絶望に彩られた作品なのですが、失礼な言い方をすれば、時宜を得たタイムリーさがアカデミー作品賞につながったのだと思います。これまでにも、イラク戦争をテーマにしたアメリカ映画は、多々ありましたが商業映画としての娯楽性がどこかで強調されていました。しかし「ハート・ロッカー」は、商業作品のドラマ性を失わず、ノン・フィクション的な切迫感まで表現したところがスゴイ。

では、この映画、それほどに素晴らしいのか?

ハート・ロッカー 2008年米

監督 キャサリン・ビグロー 出演 ジェレミー・レナー、ガイ・ピアーズほか

ハートロッカーP.jpgイラク戦争後のバクダットで治安維持にあたる米軍部隊。武装集団による襲撃などは日常茶飯事です。さらに恐るべきは、テロ爆弾の脅威です。車に仕掛けられた時限爆弾。道にワイヤーを張ったトラップ方式。はては、死体に爆弾を埋め込み移動させると爆発する仕掛け。生きている人間の体に爆弾を巻きつけ道に放つ・・・・創造力の限りを尽くしたテロ爆弾の攻撃。

そこに立ち向かう爆弾処理班が主人公です。

無人の砂漠なら積極的に爆発させれば事を済みますが、砂漠に仕掛けてもテロの意味はないので、テロリストは街中や建物に爆弾を仕掛けます。そうなると、「人間」がその爆弾を確認して、爆発力、仕掛けに応じて「無力化の処理」をせねばなりません。

分厚いジャケットに身を包む爆弾処理班。しかし、至近距離で爆発すれば、ジャケットなど何の意味もなく、確実な死が待っています。

一人の処理兵が爆死します。

代わりに班に送り込まれたのは、過去700個以上の爆弾を処理してきたというジェームス軍曹(ジェレミー・レナー)。ところが、彼は就任早々の仕事で、待機メンバーの指示を無視し、自殺行為とも思える強引な爆弾処理作業を敢行します。

まさに命知らず。英雄になりたいのか?それとも自殺志願者なのか?仲間を危険にさらしてまでの、爆弾処理への異常な執念はなんなのか?仲間の不信が募る中、またしても同じ事件が起きます。

さらなる強力なテロ爆弾を、ジェームス軍曹は、防具も通信機もかなぐり捨て、起爆装置を探し、配線をカット・・・・このスタンドプレーに、仲間の怒りは頂点に達します。

爆発で死ぬのは彼だけではなく、俺たち全員だ!軍曹への不信は、いつしか殺意にまで変わってくるのでした。・・・・いつ死んでもおかしくない、この状況。彼らに「明日」はあるのか?

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さて、この映画。

前出のように、爆弾処理シーンで異常に緊張して観ているので、楽しむというより、主人公の絶望感を共有する感覚でした。その切なさとやるせなさは、娯楽映画慣れしている方には、かなり厳しいものがありましょう。

そもそも、自らの命をかけて、なぜここまでしなくてはいけないのか?悩んでも、答えはなく、戦場に「待った」はありません。今日も、明日も、「相手を殺すために仕掛けられた爆弾」に向かい合い、生き延びなければならないのです。仲間が目の前で爆死するのを見守る・・・この地獄にどんな希望があるのか?

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横暴で英雄志向としかみえないジェームス軍曹ですが、彼には彼なりの、ふつふつとわきあがる戦争への怒り、死んでいく仲間を救えないもどかしさ、が渦巻いていることが次第に明らかになります。

本作は、爆弾処理という目先のインパクトだけにとらわれない深みのある脚本が成功の要因です。下手をすると、ヒーローものになりかねなかったテーマを、しっかり地に足がついた「人間ドラマ」に仕立てたことは見事な見識ですね。

そしてもうひとつ。こうした戦争映画が、ややもすると爆弾テロの卑劣を声高に批難するトーンになりがちですが、本作は「それは、そこにあった事」として淡々としている空気が良い。このセンスは素晴らしいと思うのです。要するに「的をしぼった」作り方なんですね。

強いて苦言を呈すれば、ジェームス軍曹の行為は、やっぱり納得できないかなあ。彼をそこまで突き動かす「動機」を、もう少し掘り下げてほしかった。ま、それは欲張りすぎですね。

最後に、主演のジェレミー・レナーさんについて。鼻がちょっと大きく特徴的なお顔です。美男子ではないが、ストイックなカッコよさがありますねえ~。

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レナーさんといえば、ゾンビ映画「28週後」で、ゾンビ化したエリアの人員救助にあたる兵士を演じてましたね~。「ハート・ロッカー」でも似た軍服姿なので、ちょっとディジャヴのような体験でした。下写真参照ください。

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ブラピ主演の「ジェシー・ジェームスの暗殺」にも出演されてましたが、スイマセン、出番が少ないこともあり、あまり強い印象がありませんでした。これも下写真ご参照。 

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ということで、平凡な感想になってしまいましたが、イラク戦争で「今」起きていることを知る意味でも興味深い一本ではありました。


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映画 「シャーロック・ホームズ」 体育会系のホームズ登場!シリーズ化は必至ですな~~ [映画]

ここ数年の米映画界で、劇的復活を遂げた俳優といえば、ミッキー・ロークさんと、本日のお題のロバート・ダウニー・Jrさんを挙げることに異論はないでしょう。(個人的には「バッド・ルーテナント」で『演技派』に復活したニコラス・ケイジを挙げたいが・・・ま、彼は別格だからやめときます。)

俳優、ロバート・ダウニー・Jr

92年、27歳のときに「チャーリー」の驚異的な演技力に注目が集まり、アカデミー賞候補にもなりましたが、ほどなく薬物中毒をはじめとする私生活トラブルで零落します。TVシリーズ「アリー My Love」出演で復活!?と思いきや、またぞろ、薬物問題で番組を途中降板・・・。懲りないお騒がせ俳優、傲慢で自堕落な問題児、と批判され、卓越した演技力を持ちながら、表舞台から消えるのか・・・と思いきや。

40歳を過ぎて主演した「アイアンマン」で大ブレイク!おお!(劇中のAC/DCの曲が良かったなあ・・・って、そっちかよ!?)。アメコミヒーローで返り咲きとは、ご本人も予想だにしていなかったでしょうねえ~。(「アイアンマン」のブログ記事は→クリック

続いて出演の「トロピック・サンダー 史上最低の作戦」では、”やり過ぎ演技派俳優”というセルフパロディ(?)とも思える難役を演じて、再びアカデミー賞(助演男優)候補になります(私のブログ記事は→クリック)。

今の彼は、世間周知の”人生いろいろ”を逆手にとり、枠にはまらぬ「ダウニー節」を謳歌しているように見えます。いやあ、いいポジションを確保しましたね~。俳優人生の一発大逆転?

さて新作「シャーロック・ホームズ」です。前述の背景から、映画の内容より、ロバート・ダウニー・Jrが、どんなホームズを演じるのか?に興味津々で映画館に向かいました。

シャーロック・ホームズ 2009年 英・米・豪

監督 ガイ・リッチー 出演 ロバート・ダウニー・Jr、ジュード・ロウ、レイチェル・マクアダムス、マーク・ストロングほか

シャーロックP.jpgストーリーは、ヒネリなしのベタベタともいえますが、一応ご紹介。

黒ミサを操り、闇の力で世界征服をもくろむブラックウッド卿(マーク・ストロング)。一度は逮捕され処刑されたはずの彼が、墓場から復活します。彼の野望を阻止すべく、アイアンマン・・・・じゃなく、名探偵シャーロック・ホームズ(R・ダウニー・Jr)と、助手ワトソン(ジュード・ロウ)が立ち上がります!謎の女アイリーンや、背後に見え隠れする巨大権力を巻き込み、派手なアクションシーンをテンコ盛り、さらにユーモアも交えて、物語はサクサク進んでゆくのでした。パチパチ。

・・・こう書くと、なんだかハリウッドにありがち~な映画って感じですね。

で、結論言うと、そのとおりなのだ!

悪い奴は最後にヤラレルと、はなっから分かってしまう勧善懲悪/予定調和/不安無用/安心品質な作品なのです。したがって、ストーリーのハラハラドキドキより、ホームズのすっとぼけキャラや、ワトソンとの掛け合い漫才、そして不要なくらいのド派手なアクションシーンを楽しむのが良いのです。(その意味では、悪役ブラックウッド卿の、顔面に力を入れすぎる迫真演技は、KYとも言える?)

で、注目のロバート・ダウニー・Jrはどうだったのか?

今回のホームズは、知的でダンディな既成イメージを覆した、肉体派でグダグダ・キャラなのであります。これが良かった!ロバート・ダウニー・Jrは憎いくらいにピッタリはまりましたから。(さすがはプロ、だけあって、しっかり肉体改造もしていましたし)

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たしかに、原作のシャーロック・ホームズも傍若無人で浮世離れしたキャラで、ボクシングはプロ級となってますが、ここまでマッチョ男のイメージは無いよな~~。熱狂的ファンが多い超有名キャラゆえ、障害もあったと思いますが、娯楽映画と割り切った関係者の英断に敬意を表します。

ちなみに、原作のホームズは東洋武術「バリツ」(馬術じゃないよ)の使い手でもあり、バリツで宿敵モリアーティ教授(映画にもちらりと登場)を投げ飛ばすわけですが、映画のほうはケンカ空手、押忍!という感じ。大山倍達御大の牛殺しに通じる技・・・・それはないか・・・・

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話を戻して。

ロバート・ダウニー・Jr、どこにでもいそうなオヤジなのに、実に独特の魅力がありますね~。高田純次さんもビックリ(?)の、クリッとした大きな目で、表情に変化をつけ、コミカルにもシリアスにも対応できちゃう。キャラを平板にしませんねえ。

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ケレン味たっぷりのパフォーマンスさえ「彼だから許せる」のです。この心理って、ホームズにうんざりしながらも、つい協力してしまうワトソンと同じでしょう。本作の(&原作の小説も)、観客はホームズにではなく、ワトソンに感情移入しているんです。そこが本作の肝でもあります。

「腹は立つけど、憎めないダメ男(実は超優秀)」である主人公ホームズに、ロバート・ダウニー・Jrをキャスティングした時点で、成功が約束された作品ともいえましょう。

製作決定している(?)、2011年の「続編」にもおおいに期待が持てますね。

蛇足ですが、謎の女アイリーンを演じたレイチェル・マクアダムスは、可愛らしいのですが、線が細すぎて存在感はイマイチでした。「濃い」ホームズにぶつけるには無理があったかな?

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予告編は以下であります。


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映画 「ニューヨーク、アイラブユー」 複数の短編が織りなす、愛の形。いいんじゃない! [映画]

またしばらく旅(出張)が続き、映画ご無沙汰生活でありました。出張先の神戸で、夜に「渇き」を観たかったんですが、時間が合わず断念・・・映画を観続けるのも苦労しますねえ。

さて、今日は「ニューヨーク、アイラブユー」という作品であります。

世間はアカデミー賞だ、アバターだ、ハートロッカーだ、と騒がしい中、ひっそり(?)上映されておりますねえ。複数の愛の物語・・・というより、愛に関わる一場面を寄せ集めた映画です。1エピソードあたりは、数分から10分程度と短く、脚本/監督/俳優が、エピソードごとに異なるので、ヴァラエティに富んだ味わいを楽しめます。

そういえば、数年間に、同じ手法の「パリ、ジュテーム」という映画がありました。題名から察するに、連作なのか?(つーことは、次回作は「東京、愛してる」かあ?)

本作には、そうそうたる出演俳優が名を連ねています。

ナタリー・ポートマンは出演だけでなく、初監督も務めていますし、他に俳優だと、オーランド・ブルーム、クリスチーナ・リッチ(可愛い!)、イーサン・ホーク、アンディ・ガルシア、シャイア・ラブーフ(トランスフォーマー主演の若手)、ヘイデン・クリステンセン(スター・ウォーズのアナキンやってました)、ジェームス・カーン(おお、懐かしい!)、アントン・イェルチェン(ターミネーター4の若手です)、ロビン・ライト・ペン、クリス・クーパー(渋いな~)、ブラッドリー・クーパー・・・と、超豪華なのですねえ~。

ニューヨーク、アイラブユー 2008年米

監督 チアン・ウェン、岩井俊二、ブレット・ラトナー、ナタリー・ポートマン、ジョシュア・マーストンほか。 出演 上記参照。

ニューヨークアイラブユーP.jpgニューヨークの男女たちが織りなす、ある時は悲しく、ある時はコミカルな、様々な「愛の一場面」。その作り方もあって、感動というよりは、ほんわか気分になる、そんな作品であります。ワタクシはこうゆう映画、嫌いじゃないですね~。

監督も総勢11名ですから、おのおののエピソードの紹介はきりがないので、ワタクシの心に残ったポイントを書きます。

ストーリー性で評価すれば、このエピソードですねえ。

アニメ映画の音楽担当者デイヴィッド(オーランド・ブルーム)と、監督助手の女性カミーユ(クリスチーナ・リッチ)のお話です。

苦心惨憺して作った曲に、監督からダメ出しをくらい、がっくりするデイヴィッド。あげくに「ドストエフスキーを読め」と意味不明の指示を受けて、グダグダ状態に拍車がかかります・・・・あれやこれやと、監督からの指示を、クールに電話連絡してくるカミーユに対して、デイヴィッドはついに切れてしまうのでした。ヤケクソになった彼に、カミーユが出した「提案」は・・・・。

このエピソード、ほとんどの場面は、オーランド・ブルームが電話で話し続ける「一人芝居」なんですね。だからこそ、「生身の」カミーユ(クリスチーナ・リッチ)が登場するクライマックス(?)に、おお!と感激しちゃいました。ワタクシも、いつの間にか、主人公に感情移入していたんですねえ~。

上手いなあ、岩井俊二監督!

ニューヨークアイラブユー2.jpg

もうひとつ、ワタクシが気に入ったエピソードをご紹介。 

アントン・イエルチェンが、もてない学生を演じる話です。つきあっていた彼女に振られ、プロム(学期末ダンスパーティ)の同伴相手がいなくなった彼。気の毒に思った薬屋の主人から「おれの娘をダンスに連れて行ってくれ」と、願ったりかなったりの話が飛び込みます。写真を見ると、可愛い女の子です!

しかし、当日迎えにいくと、薬屋の娘は美人ですが、脚が不自由な車椅子生活の子でした。今更、断れない彼は、しぶしぶ車椅子の彼女と、ダンスパーティ会場に行きますが・・・いやあ、このオチは想定内でしたが、二ヤッとしてしまいました。ラストの主人公の明るい表情がいいなあ。「ニューヨークが大好きだ」と語る気持ちがよ~く伝わりましたね。いやあ、若い者は良いねえ~~(とオヤジなコメント!)。

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さて、全編を通じ、素晴らしい演技を見せたのはシャイア・ラブーフです。「トランスフォーマー」主演で「逃げ芸」をきわめた若手俳優ですが、今回は、うってかわって、体に障害を持つ内向的なホテルマンを、静かに演じています。

物語は、引退した声楽家女性が訳ありな表情で、ニューヨークのあるホテルに泊まるシーンから始まります。不自由な体で、必死に荷物を運ぶホテルマン(ラブーフ)。声楽家女性との、ホテルの一室で交わされる、なんとも不思議な会話・・・・そして唐突に起きる事故。ちょっとシュールで幻想的なエピソードなんです。

ここで、ラブーフは、適度な緊張感と不安を醸し出す、見事な演技を披露しています。おお、彼は、人間ドラマでもいけそうですね。次回作が楽しみになりました。

ニューヨークアイラブユー4.jpg

まあ、語りだすときりがないですね。

蛇足に、あとひとつふたつ・・・ 

イーサン・ホーク。「やさぐれっぷり」に、ますます磨きがかかっていますぞ。そこんとこ必見です!まったく、ストーカーっぽい役の似合う男に成長(?)しましたねえ。

ヘイデン・クリステンセン。SWシリーズでは、アナキン(若い日のダース・ベーダー)を演じた注目株でしたが、ハッキリ言って、本作では凡庸、輝きは限りなくゼロであります。「ジャンパー」でもゲンナリしたのですが、芝居が下手すぎますよ。こんな俳優と同じシーンで絡まねばならなかった、アンディ・ガルシアに同情を禁じえません。

記事にまとまりなく申し訳ありませんが、ハリウッド風ベタな恋愛ドラマに辟易している方なら、見る価値ありますよ。観る方によって、好みのエピソードが異なることでしょう。


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映画 「バッド・ルーテナント」 ついに来た。ニコラス・ケイジの最高の演技!やればできるじゃん! [映画]

2週間ほどブログ更新さぼってました。記事を書く気になる映画になかなかあわなくて・・・・。

と思っていたら、数日前、ついに、すごい作品を観ました。

映画ファンを自称する方なら、絶対に観るべきです!急いで劇場に行かないと、上映が終わってしまいますよ~~って、ワタクシ、配給会社の手先か?

「バッド・ルーテナント」です。そう、主演は、あの、ニコラス・ケイジです。

演技派として出発し、アカデミー賞も取りながら、ここ10年間、ツッコミどころ満載の怪作にばかり出演する意味不明な男。真面目に演技するほど笑える男。「ゴースト・ライダー」でゼロレベルに達したと思ったら、「バンコック・デンジャラス」で、さらにマイナスにまで堕ちた底ぬけ脱線ゲームな男(古いな~)。当ブログでも以前から、さんざん、ニコラスさんをいじってきたわけですが・・・・

バンコック・デンジャラスの記事ここをクリック

ところが!「バッド・ルーテナント」のニコラス・ケイジは、文句無しに素晴らしい!ナショナル・トレジャーやノウイングとは別人です。ハッキリ言って、ニコラス・ケイジの名演技を堪能するだけでも、この映画に1800円を払う価値がある!と断言しましょう。

なんだ、ニコラス!やれば出来るじゃん!立派に更生してくれて、嬉しいよ~ワタクシは!

バッド・ルーテナント 2009年米

監督 ヴェルナー・ヘルツォーク 出演 ニコラス・ケイジ、エヴァ・メンデス、ヴァル・キルマーほか

バッドP.jpgまず驚いたのが監督=ヴェルナー・ヘルツォーク・・・えっ?この方、まだ映画を撮ってたの?つーか、ご存命だったの?(失礼)。まじ、ビックリしました。

20年以上前、「アギーレ、神の怒り」や「フィツカラルド」といった”狂気”のドイツ映画を生みだしワタクシのツボを刺激しまくったヘルツォーク監督。なぜ、いま、アメリカンテイストの「バッド・ルーテナント」なのか?といぶかしく思いましたが、そういえば、彼の映画の主人公は、どいつもこいつも「何かに取りつかれている」のですね~。その意味では本作の監督には絶好かも?

(話が脱線しますが、ヘルツォーク映画といえば、ウィレム・デフォーも真っ青のコワモテ、クラウス・キンスキーの怪演が懐かしいですよね~。あの剛顔オヤジに、なぜナスターシャ・キンスキーのような美人の娘がいるのか?本当に血がつながっているのか?ステーヴン・タイラーとリブ・タイラー父娘とともに、遺伝子の謎を感じさせる物件です)

 

さて、「バッド・ルーテナント」

意味は「悪徳警部補」。なんてストレートな題名なんだ~。

ニコラス・ケイジ演じるマグドノー警部補。こやつ、優秀な刑事とは表の顔で、裏では、高級娼婦を囲い、証拠品として押収した麻薬を盗んで横流しする。絵に描いたような「悪徳警官」なのです。さらに、彼自身が重度の麻薬中毒であり、捜査中もコカインでラリっている、最低な男なのです。

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5人の黒人一家が惨殺される事件が発生します。陣頭指揮をとるマグドノー警部補ですが、正気とは思えない捜査方法は「麻薬中毒度」とシンクロして、エスカレートしていきます。捜査中に知った、街を牛耳るボスに取り入ってワイロを要求。さらに、情報を聞き取るため、罪のない一般市民に、44マグナム銃を突き付けて脅すのです。

一方で、フットボール賭けで膨大な借金を抱えてしまう。寝耳に水で、つきあっている高級娼婦の客から金を巻き上げたことから殺し屋に付け狙われ・・・とトラブル続き。にっちもさっちもいかない窮地に陥り、増え続ける麻薬の摂取量。絶望的な深い穴に堕ちてゆく、悪徳警部補・・・・

もはや、現実か、幻覚か、正気か、狂気か、何もかも分からない・・・・。

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彼にしか見えない「幻覚のイグアナ」を見つめる目つき。死んだ男の魂が躍るコミカルなシーンさえ、主人公から漂う狂気に、身ぶるいするような怖さがあります。

胸が苦しくなる雰囲気の中、彼の末路はどうなるのか・・・・。

ラスト・シーン。ニコラス・ケイジの表情は絶妙!としか言いようがありません。虚空を見つめる目。何か言おうとしているようですが、言葉は出ない・・・そして、ハハ・・と力なく笑うだけ。どんなぶっ飛び演技よりも、主人公の人生を象徴するこの凄さはどうだ!これに匹敵する名表情(?)は「タクシー・ドライバー」ラストシーンの、デ・ニーロの目、くらいしか思いつきません。

観終わると、疲れがどっときて、3歳くらい年をとった気分になりましたが、それこそが、本作の素晴らしさの証左であり、ニコラス・ケイジの名演のたまものといえましょう。

久しく観なかったニコラス・ケイジの「本物の演技」。

是非、劇場でご覧あれ!!予告編は以下です。


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映画 「サロゲート」 近未来SF、でありながら、意外に楽しめちゃいました。 [映画]

2週間以上前に観たので、個人的には新鮮味が薄れていますが、映画「サロゲート」についてです。

ブルース・ウイリス主演の近未来SFアクション、と聞いただけで「あ~、その手の映画ね」と、引いた方も多いでしょう。実は、私もそのひとりでしたが、意外にも「なかなか良かった」のであります。

過去の近未来SF映画といえば「ブレードランナー」「ガダカ」「12モンキーズ」といった名作の一方で、アンポンタンな駄作・怪作も多かったっすよね。まったくもって、金(製作費)の無駄使いなのである。

ロボット、というキーワードが加わると要注意。さらに、主人公がアメコミヒーローだと、絶望的に「駄作度」が高くなります。

思いつくだけでも、「アイ、ロボット」、「A.I.」、「イーオン・フラックス」、「アイ・アム・レジェンド」・・・そうそうたる駄作の群れである。お?ウィル・スミスの出演作が2本と!・・・・おっと、今日はサロゲートの話題でしたね、スイマセン!

サロゲート 2009年米

監督 ジョナサン・モストウ 主演 ブルース・ウイリス

サロゲートP.jpg近未来のアメリカ。人々は安全な自宅から一歩も外に出ることなく、代行ロボット=サロゲートを遠隔操作して暮らしています。

事故や事件に巻き込まれても、サロゲートが破損するだけで、操作者に危害が及びません。さらに自分の好きな外形のサロゲートを選べるので、中年の肥満男が、絶世の美女となって町を闊歩できるのです。いまや、社会に「生身の人間」はおらず、サロゲートどうしが、会話し、働き、酒を飲み、食事を楽しんでいるのです。

恐怖も、苦痛もない、自由の理想郷=サロゲート社会のはずが・・・。

ある日。サロゲートが破壊され、安全なはずの操作者が死ぬ前代未聞の事件が起きます。捜査をはじめたFBI捜査官グリアー(ブルース・ウイリス)は、開発した大企業の暗部に近づいていきます。

一方、同じ家にいながら部屋に引きこもり、サロゲートを介してしか会話しない妻に対し、いらだつグリアーは、次第に、サロゲート社会への疑問を募らせていくのでした。

さて、この映画。。。

冒頭に書いたように、近未来SFという「色メガネ」で本作を拝見した私ですが、終わってみると、素直に楽しめたのであります。

サイボーグっぽいメイクのブルース・ウイリス(若い!)が、サロゲートらしい、すさまじい身体能力でぴょんぴょん飛びながら、容疑者を追い詰めるシーンなど、けっこう迫力がありましたねえ。

しかし、全体としてはCGアクションシーンより、主人公の苦悩やジレンマを軸にしているのが良かった。SFらしからぬ(失礼)、まともなセンスだと感じましたね。

90分という短めの上映時間もプラスに働きました。瑣末なエピソードや、これ見よがしのCG映像がないので、ストーリーに集中できたし、テンポも良かったですね。他のSF映画もこれを見習ってほしいものだ。

サロゲート1.jpgサロゲート3.jpg

「ロボットが人間を代行する社会」というネタは、SF的には手あかがついてるのでしょうけど、個人的には、興味深かったですね。

そもそも、現代人は、内面を押し隠し表面を取り繕いながら、互いにつきあっているわけです。これ、ある意味、サロゲート的ですよ。生身の人間だからって、「生の自分」をぶつけあっているわけではない。

極論、「サロゲート社会」は、近未来云々ではなく、「現代社会(の象徴)」とも言えるのではないでしょうか。

美形サロゲートを使って、生身の自分にできない大胆な行動をとるのは、「美容整形したら、幸せになれる」と妄信する”外見依存”とのアナロジーを感じます。

そんなわけで、ラストシーンは、お約束にベタですが、溜飲が下がりスッキリ。ちょっと単純かな、ワタクシ?

まあ、劇的な感動はないものの、過去のグダグダなロボット映画とは違った、「考えさせてくれる」作品ではありましたね。世間での評判は良くないみたいですが、ワタクシは気に入りましたよ。

サロゲート2.jpg

最後に、本作のエンディング曲を、歌っているバンドに大注目であります。

ブレイキング・ベンジャミンというバンド。(名前から、ゴールディ・ホーン主演映画「プライベート・ベンジャミン」を連想しますが、無関係でしょうな)

最新アルバムに収録の「I will not bow」が、映画の最後に流れます。メロディックでありながら、ハードで力強い楽曲。クリアボイスの合間に、デス声のグロウルが挿入されますが、あざとさはなく、必然を感じさせる見事な仕上がりです。最新アルバムは、捨て曲無しの名盤ですよ~。(惜しむらくは、曲の雰囲気が似ていて、アルバムとしてのメリハリはもう一歩?)

映画「サロゲート」のシーンを挿入した、別映像バージョン(曲は同じ)もありますよ。

ブレイキング・ベンジャミン「I will not bow」→ここをクリック


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映画 「抱擁のかけら」 観客全員がスクリーンに釘づけ、ペネロペの演じる究極愛!! [映画]

最近観た映画どれも「大当り」なんです。この高打率、嬉しいなあ・・・スペイン映画「抱擁のかけら」(邦題が悪いけど)も、見事にワタクシをノックアウト。知合い全員に「是非みてね!」と薦めたい快作!

ペドロ・アルモドバル監督(&脚本)らしい密度の濃い作品です。内容は・・・重いです。でも映画館を出たときには、なぜか晴れやかな気持ちでした。愛と憎しみのテンコ盛り、シリアス「悲劇」なのに、最後に、希望、というか、仏教的ともいえる諦念と浄福で幕引きするアルモドバル監督の一流の職人技。いやあ、いつもながらに上手いっ!

(アルモドバル監督作にも、「スペイン男性の90%はゲイか?」と思わせる、「バッド・エデュケーション」のような救いゼロ・・・の例外作もあります。)

ドロドロ愛憎劇といえば、ウッディ・アレン監督「マッチ・ポイント」など思い出しますが、本作はそれとは違ったラテン・テイスト(?)が最高です。

主演ペネロペ・クルスは、前作「ボルベール  帰郷」(カンヌ国際映画祭女優賞)に匹敵する名演です。アメリカ映画では観られない魅力炸裂。米映画での彼女の輝きを10とすれば、アルモドバル監督作での輝きは、20、いや、100といっても過言ではないな!(褒めすぎかあ?)

一流の脚本、一流の演出、一流の俳優、が出会った必見のスペイン映画。いやあ、良い!

抱擁のかけら 2009年 スペイン

監督・脚本 ペドロ・アルモドバル、 出演 リュイス・オマール、ペネロペ・クルス、ブランク・ボルティーショ、ホセ・ルイス・ゴメス、ほか

抱擁のかけらP.jpg舞台はマドリッド。ある事件で失明した、脚本家・映画監督のハリー・ケイン(リュイス・オマール)が主人公。女性エージェントのジュディット(ブランク・ボルティーショ)と、彼女の息子ディエゴの献身的な助力により、視力を失った今でも、ハリーは映画業界でなんとか生きています。

ある日、ライ・Xとなのる男が脚本依頼を口実に訪れます。その男は、ハリーに降り注いだ14年前の悲劇にかかわっているのでした・・・忘れようとしていた「あの事件」が、ハリーの口から語られます。

と、冒頭から、ミステリアスな人間関係を提示し観客を「つかむ」手法がツボにはまっています。絡み合った愛憎の糸が、解きほぐれていく様を、観客は息をつめてスクリーン凝視しちゃうのでした。。。

さて、14年前の事件とは・・・・

レナ(ペネロペ・クルス)は、富豪の実業家エルネスト(ホセ・ルイス・ゴメス)の秘書として、マドリッドで働いていました。父親の病気のことで、エルネストに助けをもとめたのをきっかけに、レナは、彼の愛人となり、豪奢な屋敷で何不自由ない生活を送ります。

かつて女優を目指していたレナ。支配欲の強いエルネストの拘束を嫌い、女優として自立する夢を実現すべくオーディションに出かけた彼女は、映画監督マテオ(のちのハリー・ケイン)と出会います。一目でレナに惹かれたマテオは、彼女の主演作の撮影を始めます。

そして、マテオとレナは、いつしか、激しく互いを求め合うようになる・・・・愛人の不貞を知ったエルネストは黙っているはずもありません。嫉妬に狂い、レナに暴行を加えます。

すべてを捨て、マドリッドを出たマテオとレナ。マテオは「ハリー・ケイン」と名を偽り、ひっそりと避暑地でレナとの二人っきりの時を過ごします。

しかし、この二人に平穏はありませんでした。

エルネストは、さらなる陰湿な復讐の追い打ちを仕掛けます。この「復讐」が映画監督にとっては絶対許せない卑劣な内容・・・そして、悲劇が起きるのでした。

抱擁のかけら2.jpg

あーー、ストーリーを書いているうちに、嫌な気分になりましたけど、(前出と矛盾するようですが)映画の語り口は、ダークになり過ぎず、淡々とテンポがよいので、ストーリーから予想されるほど観客の苦痛はありません(とワタクシは思った)。

それはなぜか?をさらにツッコンで考えると、

本作は、ハリウッド映画のように登場人物を「善玉」「悪玉」の二元論で色分けしないからです。どの人物にも善と悪が混在している。それが人間の業だとばかりに。レナもマテオも、結果をみれば「被害者」かもしれないが、決して「正義の側」ではない。(もっと分かりやすくいえば、どいつもこいつも自業自得、ってことかな~)

この感性が、アルモドバル監督ならでは、であり、彼の映画に登場する人物(人間)に、奥行きを与えているのですよね~。

抱擁のかけら1.jpg

人間の二面性は、映画の終盤で、さらに強調されます。

圧倒的善人とみえた女性エージェント ジュディットの「告白」が、ずしーんとストーリーにインパクトを与えるのです。(「ボルベール 帰郷」で名演技をみせた、ブランク・ボルティージョが、これまたアカデミー助演女優賞を差し上げたいくらいの熱演を披露!)

そして、ラストシーン。

すべては人生のひとこま。過ぎ去った夢。時とともに薄れる記憶。

老子・荘子の哲学のような「諦念」「赦し」の空気のなか、マテオ(=ハリー・ケイン)と、ジュディットが向かったものは・・・・・うーん、ここで、ジーンときたぞ。

まとまりなく恐縮ですが、アルモドバル監督のファンの方は当然として、スペイン映画未体験の方も、ぜひ劇場でこの「濃い」人間ドラマを体験してほしいです。

抱擁のかけら3.jpg

蛇足ですが、アルモドバル映画で、毎回気になるのは、スペイン人だからか、映画だからか、分かりませんが、セックスに対してのアッケラカン~としたドライなノリですねえ。基本、スペイン男性は皆、絶倫?

たとえば、失明した主人公マテオにしても、道を歩くのを手伝ってくれた見ず知らずの女性を自宅に誘い、ちゃっかりセックスしちゃうところなんか、おいおいっ!一歩間違えば犯罪だぞぉ!・・・とツッコミたくなります。女性エージェントが彼をいさめます、「だめですよ~、助けてくれた女性を連れ込んじゃあ~」って、ごく普通かよ!・・・あはは、このノリ、よくわからんけど、いいなあ~。

最後に、映画の予告編を・・・・


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映画 「(500)日のサマー」 素晴らしきラブ・ストーリーに、笑って泣いて感動して。 [映画]

今回の作品「(500)日のサマー」は、文章を書くのがもどかしいくらい、ワタクシ、激しく感動しているのであります。

ずばり、この映画は素晴らしい!

今年観た映画の(まだ1カ月ほどですが)、暫定、個人的ベストです。

本作を観なかった自分、を想像すると怖くなるくらい。おおげさな表現ですが、脳が沸騰するほどツボにはまりました。脚本の見事なこと!そして、主演ジョセフ・ゴードン・レヴィットの演技の素晴らしさ!

ネタが出尽くしたかに思える商業映画に、大きな可能性が残っていることを見せつけてくれた、大傑作といえましょう。

(500)日のサマー 2009年米

監督 マーク・ウエブ 出演 ジョセフ・ゴードン・レヴィット、ズーイー・デシャネル、ミンカ・ケリーほか

映画の冒頭に、こんな意味深なナレーションが入ります。

「これは男子と女子の出会い(Boy meets Girl)の物語である。しかし、はじめに言っておこう、これはラブ・ストーリーではないと。。。」

500日のサマーP.jpgいい前振りですねえ。そう、本作は「映画的な意味での」ラブ・ストーリーではありません。しかし「本当の意味での」ラブ・ストーリーなのです。言いかえると、観客を感動させるためだけの絵空事恋愛でなく、普通で、滑稽で、悲しくて、でも希望のある恋愛・・・なんです。

運命の愛を信じるトム(ジョセフ・ゴードン・レヴィット)と、愛そのものを信じない女性サマー(ズーイー・デシャネル)の、出会ってから500日間の恋愛?が、ポップに、コミカルに描かれます。

いいやつだけど、ヨワッチョロイ半分ダメ男のトム。あっけらかんとしたサマーに、翻弄されながら、どんどん好きになっていく様子が、ほほえましくって良いんですねえ。アラフィフのワタクシは、ついにやにやしながら観てしまうのでした。

若いもんはいいねえ~ (・・完全オヤジやな)

しかし恋愛とは残酷なもの。サマーの「どんなものにも終わりがあるのよ」の言葉とおり、二人の心はすれ違いはじめます。その溝を「愛」で埋めようとするほど、さらに心は離れていく。止めようのない転がる石のように。

サマーが、映画「卒業」のラストを観て号泣するシーン。(慰めるつもりで)「たかが映画じゃないか」と言ってしまうトムの、優しくて、残酷な、勘違い。

トムからの夕食の誘いに「ごめん、私、疲れているの」(=家に帰って休みたい)と答えるサマーに、すかさず「じゃあ、パンケーキを食べよう」、と返すトムの、もどかしいような無神経さ。

愛するがゆえに、相手に対し特別な権利を持ったように思う、恋愛の怖さですね。相手への敬意や思いやりよりも、自分の愛情を「押しつける」ようになる。

500日のサマー1.jpg

ベタで当たり前の恋愛風景なのに、これまでの映画が真っ正面から扱ってこなかった「リアル」だけに新鮮であり、ストレートに胸にズキズキ響いてくるんですね。

もちろん、この映画を、グダグダ男の恋愛コメディ・・・としか見ない方もいるでしょう。それもアリです。しかし、自分を見失うくらい、誰かを愛した経験を持つ方なら、主人公トムの、自己中で悪循環な言動や横暴を人ごととは思えないはず。

トムの喪失感や落ち込みっぷりにも、シンパシーを感じます。失恋後でさえ、ヨリを戻せないかと、かすかな期待をいだく男の性(さが)の悲しさよ・・・・トホホホ。

500日のサマー3.jpg

題名「(500)日のサマー」の、数字のカッコ付きはなんだ?といぶかしく思っていると、知り合ってから何日目なのかを、ご丁寧にも画面「表示」するからです。(○○)日目の恋愛模様ってことですね。

ストーリーは、時系列どおりに進まずに、300日目→1日目→200日目→400日目、という具合に、シャッフルしてあるんです。観客は「ああ~、この二人、50日目は楽しいのに、300日目にはダメになるんだよなあ・・・」と状況を先取りできちゃう。恋愛は、しょせん、成就かダメになるか、どっちかであり、むしろ先が分かっているから、途中が面白かったりするわけ。逆説的にツボをついてきましたね~。上手いなあ!

500日のサマー2.jpg

で、ラストシーンがいいんですよ!

「運命の愛」に絶望したトムが、偶然、出会った女性。演じるはミンカ・ケリーじゃん!(といっても知らない人が多い?)。

彼女の自己紹介の言葉が、映画を締めくくる最後のセリフですが、うわあ、そう来たか!と嬉しくなります。この仕掛け、まったく脚本が上手いなあ、と感心。

上映中、ボウボウと泣いたワタクシは、映画館からの帰り道に、思い出してまた涙がポロリ・・・トムも、サマーも、幸せになってねっ!

最後に、主人公トムを演じたジョセフ・ゴードン・レヴィットのことをもう一度。すでに数作で活躍している俳優ですが、本作でブレイク必至でしょう!容姿よりも、演技で人を惹きつけるタイプですね。全然違った役もぜひやってほしい。大注目であります!


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映画 「インビクタス 負けざる者たち」 イーストウッド監督の職人技には感服ですね~。 [映画]

クリント・イーストウッド監督、大好きなんですよ~。ワタクシ、もろ「ダーティハリー」世代ですから、俳優としてのイーストウッドさんに、もちろん心酔しきってました。で、初めての監督作「恐怖のメロディ」(1971年)を観て、おお、監督としてもいいじゃないか!と嬉しくなりました(それにしても、あのストーカー女は怖かったなあ・・・・)

その後、「アウトロー」、「ブロンコ・ビリー」、「アイガー・サンクション」、「ガントレット」と、1970年代の映画の思い出・・・というと、イーストウッド監督作抜きには語れないワタクシであります。おっと、自分の年齢がばれそうだな(もうばれてるか)。

イーストウッドさんは、映画監督としてキャリア40年!しかし、ここ10年は、衰えるどころか絶好調というのが嬉しいですよね。良質な人間ドラマを魔法のように次々生みだし毎回感動をいただいております。「ミスティック・リバー」、「ミリオンダラー・ベイビー」、そして昨年の「グラン・トリノ」・・・・と、掛け値なしに映画史に輝く名作ですよねえ。

そんなイーストウッド監督が、南アフリカのネルソン・マンデラ元大統領を映画化した「インビクタス 負けざる者たち」。この作品、マンデラ氏が獄中で受けた悲惨や屈辱、アパルトヘイトを重たく描いた伝記映画ではありません。キーワードは、ラグビー、ですが、イーストウッド監督、見事な手際で、良い意味での娯楽作に仕上げましたねえ。お見事!!

インビクタス 負けざる者たち 2009年米

監督/製作 クリント・イーストウッド、 出演 モーガン・フリーマン、マット・デイモンほか

インビクタスP.jpg1991年の南アフリカ。アパルトヘイト(人種隔離策)批判によって、27年間を牢獄で暮らしたネルソン・マンデラ氏が、釈放されるところから映画は始まります。

少数の白人が支配層として権力を握り、黒人は住む場所も職業も隔離/差別されていた1990年代の南アフリカ。(考えてみると、たったの10数年前のことなんですよね~。決して遠い過去の出来ごとではありません。)

マンデラ氏は、初の黒人大統領となり「赦し(ゆるし)」を掲げ、黒人も白人も同じ南アフリカ人であることを強調します。しかし、白人から弾圧を受け続けてきた黒人層からは、かえって反発を受けてしまいます。このままでは、南アフリカは崩壊してしまう。国をひとつにまとめるには、白人と黒人がともに喜びを分かち合える「何か」が必要だ・・・・そんな危機感を持つマンデラ大統領は、ラグビー南アフリカ代表チームに目をつけます。

チーム名はスプリングボクス。白人ばかりのチームです。アパルトヘイト時代の象徴として、黒人からは徹底的なバッシングを受ける存在。さらに成績も低迷し「国の恥さらし」とまで呼ばれています。

逆風の中でも自らを信じ戦うチームの主将ピナール(マット・デイモン)に、マンデラ大統領は自分に重なるものを感じ、官邸に招きます。そこで交わされる短い会話。

ここから、マンデラ大統領と、ピナール主将、そして、スプリングボクスは、無謀とも思える、1年後のラグビーワールドカップ優勝に向かって突き進んでいくのです。

インビクタス3.jpg

南アフリカは開催国特権で出場できるのですが、オーストラリア、イングランド、ニュージーランドといった強豪相手に、優勝など夢のまた夢・・・・国民のだれもがせいぜい準決勝止まりと下馬評をささやいている中で・・・1995年のラグビー・ワールドカップ。奇跡が起きます。黒人選手1名を加えたスプリングボクスが、決勝戦で強豪ニュージーランドを破って優勝します!

南アフリカの白人はもちろん、国民の大多数を占める黒人たちも、歓喜に酔いしれます。どんな政治的発言や、他国の援助よりも、この出来事こそが国をひとつにまとめた、と言われるのも、決しておおげさはないですね。

インビクタス1.jpg

さて、この映画。

前述のように、イーストウッド監督の「見識」と「節度」が見事に表れた作品といえましょう。

主人公マンデラ大統領を、彼しかいない!と思わせる名優モーガン・フリーマンが演じますが、表情も演技も「やり過ぎなさ」が、素直に良い。

ストーリーを進める「語り口」も同じで、随所に挿入される白人VS黒人の対立構図も、深追いせずに、あえてさらっと見せて流していく。観客に「悲惨そのものを観せる」のではなく、「悲惨(な状況)を想像させる」という手法です。

(誤解を恐れずに言えば、映画に対し「即物的な面白さ」だけを求める方には、このセンスは分かりようがないと思います)

かつて、弾圧する側(白人)と、弾圧される側(黒人)だった、4200万人が、本当の意味で、ひとつの国民にまとまろうとする「生みの苦しみ」ですから、重たく描こうと思えばいくらでも出来る。そこを、あえてあっさり表現することで、問題がより明確に浮かび上がるのです。

インビクタス2.jpg

それと、この役のために肉体改造したと分かるマット・デイモンがいいですね~。長々と演説して仲間を鼓舞する「根性スポーツドラマのキャプテン」ではなく、自らが範を示すことでチームをまとめあげる、純粋でストイックな青年を好演しています。(当然、マットの演技は全体に控えめです)

国が転換期を迎え、戸惑いながら、信じる道を進む、「グッドウィル・ハンティング」以来のはまり役ですねえ。ジェイソン・ボーンもカッコいいけど、こちらの役こそ彼には似合いますよ。

ラストのワールドカップ決勝戦のシーン。本気度満点で、迫力ありました!ニュージーランドチームが圧倒的に強く、南アフリカは絶対不利・・・みたいな、お膳立てはベタながら、その後のカタルシスのためには許容範囲でありましょう。

観る人によっては、もっと濃い(重い)味付けのスポーツドラマ、あるいは、政治ドラマにしてほしかった、と物足りなさを感じかもしれません。しかし、ひいきの引き倒しではありませんが、イーストウッド監督の、こうしたバランス感覚こそが、味わいをいっそう深くしている、と思う次第であります。

いい映画でしたあ!


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映画 「ゴールデンスランバー」 ベタなんだけど、こーゆー邦画にはポロリときます。 [映画]

仕事で出張が多いワタクシ(本日も、岡山県から帰ってきたところ)、出張した街のうち、好きなのは博多(福岡県)、新潟、仙台(宮城県)・・・です。(本籍地の札幌は別格なので除きました)。

公開中の邦画「ゴールデンスランバー」の舞台は、まさにお気に入りの仙台市。その理由だけで見なくては!と強く思ったワタクシです。映画を拝見した結果、仙台である必然はそれほど感じなかったけど、作品の出来は素晴らしかったです!

ゴールデンスランバー 2009年日本

監督 中村義洋、 出演 堺雅人、竹内結子、劇団ひとり、吉岡秀隆、香川照之、濱田岳、柄本明ほか

ゴールデンスランバーP.jpg優しくってお人好しな好青年、青柳雅春(堺雅人)。10年ぶりに会った学生時代の友人森田(吉岡秀隆)に誘われるままに、首相パレード現場に連れて行かれ、そこで大爆発が発生します。彼は、首相暗殺事件の犯人に仕立てられ、仙台の街で、必死の逃亡劇を繰り広げるのです。

極悪犯として連日TV放映される青柳に対し「彼は犯人じゃない!」と確信し、逃亡の手助けを始める元カノ樋口(竹内結子)、偶然青柳と知り合い肩入れする入院中の男(柄本明)、青柳の職場の先輩や、青柳が以前助けたアイドル(貫地谷しほり)などなど、強力な(?)バックアップのもと、奮闘する主人公の姿にガンバレ!と応援しちゃいます。

ジャンルとしてはサスペンス、なのでしょうけど、「誰が彼を陥れたのか?」に拘泥せず、主人公をとりまく「信頼」「愛」の物語に仕上がってるのがすごくイイ。あまりにも分かりやすい、学生時代のほろ苦回想シーンにも、じーんとしましたね。コミカル感もほどよくまぶして(永島敏行がいい味出している!)、話を深刻にしすぎない点も見識です。

乱暴に言ってしまうと、ベタベタな「邦画らしい邦画」なんですが、これが、妙~にワタクシのツボを押しまくりまして、後半は涙ポロポロなのでありました。

だってさあ~、誰も自分を信じてくれない絶望と孤独感の、四面楚歌状態ですよ。そんな中で「私だけはあなたを信じてる!」ってメッセージを受ければ、そりゃ泣きますよお。こちらだって、もらい泣きもしますよお!(単純?)

ゴールデンスランバー1.jpg

そこまで感情移入できたのも、主役の堺雅人さんが、あまりにフツーの30歳青年を、見事に演じてるからですね。ホント、このひと、上手いよな~~とつくづく感心。

ハリウッド映画だと、トラブルに巻き込まれた主人公が、ありえないようなスゴイ逆襲しかけて、観客の溜飲を下げたりするけど、本作の主人公は、結局、「逃げ回る」だけ・・・つーのもリアルで好きですねえ。

ゴールデンスランバー4.jpg

厳密にはハッピーエンドじゃないのに、ラストのデパートのシーンでは「ああ、よかったなあ。」と思わせてくれる。これが素晴らしいですよ。(もちろん、ワタクシは涙・・・)じーんと良い後味が残りました。

いや~あ、オジサン的発言になりますが、最近の邦画(20年前に比べて)って、しっかりしていますねえ。原作のチョイスも良いのでしょうけど、以前のような、欧米のモノマネではなく、日本人のメンタリティに根ざした快作が多いと思います。この調子で、どんどん良い作品を生み出してほしいです。

最後に、本作に大貢献したワタクシ一押しの俳優さんをご紹介。

濱田岳.jpg連続殺人鬼「黒いパーカーの男」を演じた濱田岳さん!中村監督のお気に入りの俳優ですね。

血も涙もない(?)凶悪犯でありながら、なぜか主人公を助ける得体のしれない不思議な役。すごい存在感でストーリーを引っ張っています。ワタクシは「鴨川ホルモー」で濱田さんにはまったのですが、今から次回作が楽しみでしょうがない。スクリーンの「空気」を変えますからねえ、彼は。

いいです!大注目の俳優さんです。


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映画 「Dr.パルナサスの鏡」 主演ヒース・レジャー急死を乗り越え、よくぞ完成させた! [映画]

世界一不運な映画監督ことテリー・ギリアム監督が、撮影途中、主演俳優ヒース・レジャーの急死という、それこそメガトン級の不運に見舞われながらも、ジョニー・デップ、ジュード・ロウ、コリン・ファレルの友情出演で完成したという、ギリアム節炸裂の作品であります。そんなハンデ(?)を感じさせない出来栄えにビックリするとともに、嬉しくなりましたねえ!

Dr.パルナサスの鏡 2009年米

DrP.jpg監督 テリー・ギリアム 出演 ヒース・レジャー、ジョニー・デップ、ジュード・ロウ、コリン・ファレルほか

おんぼろ馬車をステージに仕立てて、大道芸まがいのインチキ「幻想体験ショー」を売り物にする、1000歳(?)の老人Dr.パルナサス父娘とその仲間。物語は、記憶喪失の男トニー(ヒース・レジャー)が一行に加わったことから始まります。このトニー、善人なのか、悪人なのか?どうやら、Dr.パルナサスが悪魔と結んだ契約にも関わっているらしい。ナンセンス、かつ、原色サイケな映像を交えながら、めまぐるしく展開する凝ったストーリーはツボにはまり、楽しく拝見いたしました。

前出のとおり、ヒース・レジャーの急死で一度はボツになりかけた作品です。完成するための、苦肉の策として、ヒースの役を、ジョニー・デップ、ジュード・ロウ、コリン・ファレルが引き継ぎ、計4人が演じ分けます。そんな無茶をしたら、違和感だらけの作品になりそうですが、脚本の妙でしょうか、むしろ、ビックネームの共演を楽しめるプラス効果を生んでいるのがスゴイ!!

ヒース・レジャーの演じるトニーも良いですが、個人的には、幻想世界でユーモラスな演技を披露するジョニー・デップが、やっぱりええなあ~~。ノリは「チャーリーとチョコレート工場」ですけど、映画の出来は「Dr.パルナサスの鏡」のほうが良いくらいですもん。

Drジョニーデップ.jpg

ジュード・ロウの演じるトニーは、どうも、どぎつい、つーか、えぐみがあります。10年前のイケメンも、最近はヤサグレ感が強くなっていますねえ。

Drジュードロウ.jpg

コリン・ファレルのトニーは、持ち味のチンピラ・テイストを逆手にとって良い感じです。一時期、主演作が目白押しだった彼、最近はスクリーンで見かけず「消えたの?」と心配しましたが、本作の、イキイキした演技を拝見し一安心。もちろん、トレードマークの太い眉毛も健在でしたよー。

Drコリンファレル.jpg

オチは意外に素直で、後味は良かったですね。とにかく、ギリアム監督らしい、細部にまでこだわった映像や脚色は出色で、十分に楽しめました。

ヒース・レジャーの急逝は残念な事件ですが、本作の完成が、彼に対する、なによりのはなむけでありましょう。遺作が「ダーク・ナイト」の白塗り悪役でなく、本作なのは良かったと思います。

Drヒース.jpg

最後に。

大好きなトム・ウェイツ御大が、悪魔役で登場し、エキセントリックかつ、とぼけた雰囲気を出していて嬉しいですねえ。ミュージシャンより、俳優活動が活発に見えますが、アルバムも出してくださいね。

Dr2.jpg

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映画 「秘密結社 鷹の爪 THE MOVIE 3 http://鷹の爪.jpは永遠に」 バカバカしくも楽しいっす! [映画]

全国展開のシネコン、TOHOシネマズで映画を観た方なら、マナーアップを呼び掛ける「鷹の爪団」の小芝居をご存じでしょう。バカバカしく、ゆるい、総統と吉田君のボケ&突っ込みに、劇場内の空気がしっかりなごむナイス企画ですよね~(ご存じない方はここをクリック)。

さて、そんな「秘密結社 鷹の爪」の、映画版第3作目がついに登場です!!

鷹の爪P3.jpg

本作は、外見くまのレオナルド博士(上写真)が主役級の活躍というし、予算アップか、VFXに「ALWAYS 3丁目の夕日」の山崎貴監督が特別参加だとか!?加えて主題歌は今が旬(?)のスーザン・ボイル・・・と話題に事欠きません、観ないわけにはいかないでしょう!

秘密結社 鷹の爪 THE MOVIE 3 http://鷹の爪.jpは永遠に

2009年日本、監督・製作 蛙男商会 

鷹の爪P.jpg脱力系の悪の秘密結社「鷹の爪団」が、またまた巨悪に戦いを挑みます。レギュラーメンバーの、総統、吉田君、菩薩峠、レオナルド博士、そしてデラックス・ファイターも健在であります(フィリップは死んるけど、幽霊で活躍します)。彼らの相変わらずのボケ倒しっぷりに、ワタクシも、苦笑いが、つい大笑いになってしまいました。鷹の爪パワー、おそるべしですねえ!

ハッキリいって、本作に、登場人物がどうの、ストーリーがどうの、と語るのは野暮であります。場のゆるいギャグ(空気)を満喫すればよいのですが、本作は、なかなかどうして、それ以上の力作でありました。レオナルド博士の秘密を軸に、敵の大物っぷり、ラストの大仕掛け、総統の人生訓示と、見どころもたっぷり。シリーズ3作目にして、ますます映画らしくなってきましたよ。

特に、映画半ば、投げやりになった仲間を叱責し、世界愛を語りきる総統のカッコ良さといったら!

うーん、不覚にも、このシーンでちょっと泣いてしまったぞ、ワタクシは。吉田君が、泣きながら吐くのも無理はない感動名場面(?)といえましょう。

例によって、島根県自虐ネタは、さらにパワーアップしています!日本から分離されて太平洋に移動しちゃった島根県が、ラストでは面目躍如の大活躍を見せますよ~。

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まあ、ワタクシが文章で書くほど、映画の楽しさを減じちゃいますね。とにかく、鷹の爪団のファンも、「なにそれ?」という未知の方も、難しいこと考えず、劇場で、彼らの活躍をおおいに楽しみましょう!

お近くのTOHOシネマズでぜひ!!

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ちなみに、例によって「古墳少女コフィ」も同時上映であります。コフィファンにも見逃せませんね。

では、本作の予告編、以下であります。

 

スポンサー(SUNTORY)を巡ってのネタ・・・・これは今回の映画ではありませんが、「鷹の爪団」の苦労がしのばれますねえ。ははは。


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映画 「パブリック・エネミーズ」 ストーリーはベタだけど、やはりジョニー・デップはすごかった! [映画]

今更ですがジョニー・デップ主演「パブリック・エネミーズ」を拝見。12月中旬の公開ですので、そろそろ上映が終わります。そのためか、吉祥寺オデヲン座は、金曜夜というのに、観客がたったの8人・・・・

ガンバレ!オデヲン座!

まあ、それはよいとして。

ジョニー・デップさん。いまや、押しも押されもせぬ(死語?)大スターですよね~。でも、10年ほど前までは、二枚目の実力派だけど、妙な出演作ばかりを選ぶ「変わり者」イメージでした。私個人は、ハリウッドスターではない、そんなマイナー空気なジョニー・デップが大好きだったんですが・・・・。

「妹の恋人」「シザー・ハンズ」「デッド・マン」「ドンファン」「エド・ウッド」「ナインス・ゲート」「ラスベガスをやっつけろ」「フロム・ヘル」・・・・そして、ジョニー・デップといえば、この二本は、はずせない!

「ギルバート・グレイプ」(1994年)、ラッセ・ハルストロム監督との相性ばっちり。レオナルド・ディカプリオもよかった!人生ドラマの超名作、ですよね~。何度観てもこの映画は良いね!未見の方は、本日、即、観るように(大きなお世話?)。

そして「スリーピー・ホロウ」(1999年)。ティム・バートン監督、クリスチーナ・リッチ共演。凝ったゴシックホラーでありながら、ジョニーのコミカル面も光った、まさにマニアックな(?)名作!未見の方は、本日、即、観るように(またそれかよ!?)。

・・・と、「パブリック・エネミーズ」そっちのけの前置き、スイマセン。

パブリック・エネミーズ 2009年米 

監督 マイケル・マン 出演 ジョニー・デップ、クリスチャン・ベール、マリオン・コティヤールほか

パブリックP.jpg1933年、アメリカ、シカゴ。稀代の犯罪者、天才的な銀行強盗、社会の敵No1こと、ジョン・デリンジャーの破天荒な人生と、悲劇的な死までを描くクライム・ムービーです・・・・と書くと、「明日に向かって撃て」や「俺たちに明日はない」といった往年の名作を思い出す方もおられるでしょう。

そう、この映画は、現在に蘇った「俺たちに明日はない」であり、乱暴に言ってしまうと、「ただそれだけ」の感もあります。

銀行強盗団 VS FBI、の構図と展開からして、しっかりベタといえましょう。

大胆不敵で恐れを知らず、エキセントリックだが仲間を見捨てない「筋のとおった」悪人としてのジョン・デリンジャー(うーん、いかにも、という感じだ)。一方に、クリスチャン・ベール演じる、インテリ風なFBIの現場指揮者の奮闘がある・・・この「すべらない」設定にはもはやツッコミようがないよな。

新機軸(?)としては、ストーリーの軸に、ジョン・デリンジャーが愛した女ビリーをもってきたこと。2007年アカデミー主演女優賞を受賞したフランス人女優、マリオン・コティヤールが、めちゃくちゃチャーミングに演じています。

なにせ、映画後半、彼女をめぐって、ジョンとFBIの確執&駆け引きが過熱しますので、肝心の愛人役がイマイチだと盛り上がらないもんね。その点、マリオン・コティヤールは、美貌よし、芝居良しのナイスキャスティングです。(ラストシーンの「すっぴん」の彼女に、おお可愛い、と感動!)

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ということで、映画全体として、劇的感動だとか、目新しさ、はそれほどありません。期待しすぎると肩すかしっぽいです。でも、私は楽しく拝見しました。やっぱり俳優の力でしょうねえ。

ジョニー・デップは相変わらず職人芸といえるほど、役になりきっていて、ジョンの複雑な性格を、絶妙に表現して退屈させません。なにせカッコいい!絶賛したいのは、FBI捜査官を演じるクリスチャン・ベールです。主役級のベールが、クールな演技で「脇」を固めたことで本作は、脚本以上の出来栄えになったといえましょう。

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そう考えると、ジョニー・デップひとりだけを、前面に出しすぎてる映画ポスターには不満です。しつこいですが、この作品は、クリスチャン・ベールあってこそ、主役デップが光っているのであって・・・・プンプン!

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蛇足をひとこと・・・個人的には、大作ではなく、低予算映画(あるいはマニアック系映画)での、イキイキとしたジョニー・デップが、やっぱり好きですね~~。・・・ということで、公開まじかの新作「Dr.パルナサスの鏡」におおいに期待するワタクシです!ふふふのふ。


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映画 「戦場でワルツを」 神はいないのか!と叫びたくなる、人間の「業」に向かい合えるか。 [映画]

イスラエル映画「戦場でワルツを」を拝見しました。2008年に公開され、賛否両論を巻き起こした戦争ドキュメンタリーです。ゴールデングローブ外国語映画賞受賞、セザール賞受賞、アカデミー外国映画賞ノミネートなど、堂々たる肩書きをひっさげての本邦公開です。

本作は、観客受けを狙った、いわゆる商業映画の類ではありません。

感動より衝撃を受けた、というべきでしょう。衝撃の源は、映画の出来・不出来ではなく、描かれている「人間の業の深さ」というべきでしょう。戦争の名のもとに、他民族をなぶり虐殺する、その行為を行う個人は悪魔でも鬼畜でもない、この逆説的な恐ろしさ。

普通の人間を狂わせる、または、目の前の残虐を黙認できる「精神のありよう」こそ、まさに人間の業。

そうなんです。戦争の恐怖は、ふりそそぐ銃弾や爆弾による「直接の死」だけではなく、戦争に関わる「人間の内面」にこそ潜んでいることと、思い知らされる恐ろしい作品です。

したがって、本作を「面白いから、見てね」・・・とは絶対に言えません。ましてや善人ぶって、素晴らしい反戦映画だと賞賛もできません。ここに描かれるドラマではない「ある現実」、不条理な「実存」そのもの以上に語ることはないのです。観客は、その現実に向かい合えるか?

銀座シネスイッチで拝見し、ラストシーンで聞こえた観客のすすり泣きが、映画とともに深く心に刻み込まれました。

戦場でワルツを 2008年イスラエル

監督・脚本・出演 アリ・フォルマン

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監督自身の実体験に基づくノンフィクション(だそうです)。全編アニメーションですが(最後に唯一、実写箇所がある)、アニメゆえに、登場人物の悪夢や心象風景がリアルに再現され、見事な見識だと思います。

娯楽作品ではないので、以下、ネタばれで語ってしまいます。

主人公アリ(監督本人)は、26年前にイスラエル軍による「レバノン侵攻」で出兵した友人からある相談を受けます。その友人は、毎晩「26匹の犬に襲われる」悪夢をみるのです。彼は、レバノンの村を襲撃するとき、吠えたてる村の犬を射殺する役目でした。26匹の犬を殺した彼は、その犬たちの夢にうなされているのです。

この話をきいたアリは、不思議なことに気づきます。

自分も、レバノン侵攻で出兵した・・・・しかし、その時の記憶が、完全に欠落しているのです。出兵したことは覚えているのですが、敵地ベイルートでの記憶がない・・・・

あのとき、自分は、どこで何をしていた?なぜ、戦場の記憶が消えたのか?

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こうして彼は、昔の仲間を訪ね歩き、「記憶を取り戻す」旅に出るのです。

しだいに明らかになる戦場での出来ごと。だが、どうしても思い出せない、最後の記憶の空白が残ります。パズルの一片のように、その空白が埋まったとき・・・・この映画は終わります。 

アリが自己防衛のため無意識に封印していた記憶とは何か?それは、侵攻した難民キャンプで、何の罪もない、パレスチナ人の男性、女性、老人、子供たちを大量虐殺した(正確には、虐殺を黙認した)悪夢の出来ごとでした。

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この映画を観て、すごい・・・と思ったのは、1時間30分という比較的短い上映時間の中で、「語ること」がハッキリしていることです。意識的か、あるいはイスラエル人ゆえかは分かりませんが、興味深いのは、アリの戦友、上官あるいはアリ自身の「現在のあり方」です。

彼らは、戦場での出来ごとを引きずって現在を生きているのですが、戦争の悪夢で精神が蝕まれている、とかではなく、「戦争は過去」と淡々としています。

たとえば、アメリカで製作される戦争ドキュメンタリー(または戦争映画)だと、アメリカ兵の精神的ダメージ、葛藤、悪夢、フラッシュバック・・・をやたらに強調して、アメリカ兵を「被害者」に仕立てるのに対し、「戦場でワルツを」は、イスラエル人が作った映画なのに、イスラエル兵のダメージなど、パレスチナ人が受けた大虐殺の前に、どうということもないだろう、と言わんばかりのクールさなのです。

このメリハリはすごい。

徹底的に、自分(の国)を、加害者側に置いている。安っぽい反省、とか、感傷、を交えず、目の当たりにした「事実」を描く(結果的に自己批判となる)。なんという潔いアプローチなのでしょうか。

それにしても。。。人間(人類)の残酷さとは。

「報復」の大義名分さえあれば、無抵抗の老人や女や子供を壁に一列に並ばせて機関銃で撃ち殺し、凱旋帰国して、商売をはじめ、家族を持ち、家を買い・・・・それが平和か!?

ラストに流れる、シューベルトのピアノソナタ20番の第二楽章・・・胸のつぶれるような、この切なさは・・・・。

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と、ここまで褒めておいて最後になんですが、本作に対し、非常に不愉快なことがあります。内容ではなく「日本語字幕」です。雪のシーンで背景が白いにもかかわらず、字幕が白字。背景に字幕が溶け込んで読むのが大変ですよ!色盲検査じゃないんだから、背景が白なら、縁取り字にしてください。そんなシーンが他にもいくつもあります。せっかくの力作なのに、会話内容が分からないと、話になりません!!

私が小学生の時に、映画館で見た「大統領の陰謀」という映画がまさにこれ。新聞社の明るい室内シーンに、白い字幕で、読みづらくて往生しました。字幕の件は、関係者に猛省を促したいと思います。


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映画 「のだめカンタービレ 最終楽章 前編」 映画ファンだけでなく、音楽ファンすべてに観てほしい! [映画]

大好きな若手俳優の二人、玉木宏さんと、上野樹里さん主役とくれば、観ないわけにはいきません!

そのうえ、テーマが大好きなクラシック音楽ですから、ますますもって、はずせない「のだめカンタービレ 最終楽章」であります。コミックも良かったですが、音楽ものは、やっぱり実写(というか実音)を味わいたいですもんねえ。

結論言っちゃいますと、映画ファンはもちろん、音楽ファンにも観てほしい素晴らしい作品です!(すんごい名作・・・とまでは申しませんが)

女子向けコミックが原作だろ?などと色メガネでみてるアナタ~~、見逃すのはもったいないですよ~~。後半の、チャイコフスキー「1812」のコンサートシーンで、ワタクシ、泣きました!・・・だからなんだよ?と言われそうですが。

のだめカンタービレ 最終楽章 前編 2009年日本

出演 玉木宏、上野樹里、竹中直人、ベッキー、ウエンツ瑛士、谷原章介、瑛太 ほか

のだめカンタービレ 最終楽章P.jpgコミックと、TVドラマで一大ブームになった、クラシック音楽コメディ「のだめカンタービレ」の映画版であります。ストーリーはTV放映の続きになっています。「前編」のあと、2010年4月公開の「後編」で完結だそうです。

ヨーロッパの指揮者コンクールで優勝し、パリで、念願のプロ指揮者への道を歩みだした千秋真一(玉木宏)と、千秋にベタ惚れの天然ボケ&ピアノの天才(・・・なのか?)、のだめ、こと野田恵(上野樹里)が主役です。

クラシック音楽の世界で自己実現を目指す二人の、とんちんかんな恋愛模様に加えて、音楽に人生に、迷い、悩みながらも自らを信じハードルを乗り越えてゆく成長ドラマなのです。

私は、下手なハリウッドの恋愛映画(&音楽映画)より、よっぽど、本作のほうが素晴らしいと申し上げたいですね。

本作の良さは、千秋も、のだめも、「恋愛至上主義」ではないことです。「愛さえあれば・・・」なんつー、アメリカン・フールな妄想など無く、最後には必ず音楽に戻ってくる・・・・その、姿勢がスガスガしいのね。

キレイごとだけど「音楽を通じて、二人がともに成長する」コンセプトが、しっかりしている、ってことですね。もちろん、全編通じてのナンセンス・ギャグも、TVドラマ同様、バカバカしく楽しいです(特に、竹中直人さんは怪演には嬉しくなりますね)。

さて今回の「前編」。恋愛模様より、千秋が常任指揮者に就任した(させられた)フランスの某オーケストラでの悪戦苦闘に重点が置かれます。クラシック好きなら、かなり食いつけるネタではないでしょうか。

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かつては栄光時代もあったけど、財政難&団員同士の確執で、崩壊寸前のダメオーケストラ・・・そこに常任指揮者として放り込まれた千秋は、限られた時間で、なんとかオケを建て直せばなりません。

「建て直す」なんて簡単に言っても、それがいかに大変か、描写が実にリアルなんです。

演奏レベルを上げようと、必死にリハーサル繰り返す千秋。ところが負け犬クセのついた団員たちは、その強引さに、ついにリハをボイコットします。腐っても音楽家、と自負する演奏家たちの(余計な)プライドと、常任指揮者のガチンコ対決はスリリングでさえあります。

しかし、多くの紆余曲折を経て「音楽とは調和だ!」という原点に気づく楽団員たち。いつしか千秋の情熱を認め、それに動かされていきます。

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ラストのコンサート・シーンは圧巻です。カメラワークも良いし、玉木宏のなりきり指揮者っぷりもお見事です。そこで展開するのは、数ヶ月前までのダメ楽団の復活劇!この昂揚感たるや!

チャイコフスキーの序曲「1812」、バッハのピアノ協奏曲1番、そして、チャイコの交響曲6番・・・おお、いいねえ~~。

指揮者とオーケストラ、オーケストラと観客、さらに遡れば、作曲家と演奏家との間で ( 照れくさい表現ですが )「心をつないでこそ」、音楽のパワーは発揮されるんだな~~と、カッコいい感想を言いたくなる痛快シーンでした。

もちろん、そこに並行し、のだめの悩みや葛藤も描かれ、次回への伏線を残して、映画は終わります。後編が、おおいに楽しみですねえ。

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余談ですが、クラシックマニアの方なら、今回の千秋真一の活躍を、古くはオーケストラビルダー=「楽団建て直し屋」こと、名指揮者アンタル・ドラティに重ね合わせることでしょう。あるいは、現在ベルリン・フィルを率いる名匠サイモン・ラトルの出発点は、地方オケに過ぎなかったバーミンガム市交響楽団を世界レベルに引き上げた「大事件」でした。

リーダーの熱意と能力によって、組織がいかに生まれ変わるか?という、ビジネスにも通じる深いテーマも考えてしまいました。

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映画 「アバター」 見どころは3Dだけではなく、意外に(?)面白い! [映画]

11月~12月は出張&風邪で、映画鑑賞数が激減・・・・これで「映画男」を名乗るのは笑止!と反省しつつ、まあ、来年は頑張りますわ、と立ち直るワタクシです。

今日は話題作「アバター」を取り上げます。

アバターとは「化身」「権化」のことですが、つい「アバターも、えくぼ」と、ダシャレってしまうワタクシには、そのボケ時点で、本作を観る資格無しでしょうか?

アバター 2009年米

監督 ジェイムス・キャメロン 出演 サム・ワーシントン、シガニー・ウィーバー、ほか

アバターP.jpg本作は、通常版と3D(立体版)の2パターンで上映されています。3D・・・そうです、例の「3Dメガネ」なるものを装着すると、スクリーンから映像が飛び出して見える、あれですね。

数年前、別の3D映画で、気分悪くした思い出があり、躊躇しましたが、えーい、技術進歩を確かめるべく、「アバター」はしっかり3Dで拝見しました。結果は・・・ゼンゼンいいです!ストーリー度外視の無茶な(余計な)立体感ではなく、妙な表現ですが「ちょうど良い3Dっぷり」が心地よかったです。

舞台はパンドラという惑星。ある理由から、人類は、異星人ナヴィ族にコンタクトする必要があり、ナヴィ人と人間を掛け合わせた「アバター」なる人口的な肉体が作られます。「アバター操縦者」(人間)は、特殊なポットに入り(アバターに入るわけではなく)、意識をアバター側にリンクさせることで、アバターを自由自在に遠隔操作するのですね。

人類側は実写、アバター側はフルCGなので、観ていて混乱することもありません。

負傷で下半身不随となった海兵隊員ジェイク(サム・ワーシントン)が主人公です。急死した科学者の兄に替って、惑星パンドラにやってきます。彼のミッションは、アバターとなって、ナヴィ族に接近し、情報を収集すること。ある偶然により、ナヴィ族の酋長の娘と知り合った彼は、いつしか戦士として迎えられます (うーん、このあたりのご都合主義な展開は、ちょっと無理があるのだが・・・)。

一方、ジェイクを利用して、ナヴィ族の村の地底にある貴鉱物を狙う大企業。そのお先棒をかつぐ海兵隊。ナヴィ族と平和的融和を目指す科学者たち(シガニー・ウィーバーがいい味出している!)・・・と、さまざまな思惑を持つ人々が、ある意味、お約束どおりの悲劇を招いていくのでした。

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見どころは、やはり実写とフルCGを融合させた、圧倒的な映像でしょう。これは素直にスゴイ!

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この手の「異星系SF」って、後付けの強引な理屈が次々に出て、途中で辟易するのが常ですよね。しかし「アバター」、さすが製作に6年かけただけあって(?)、後半の劇的展開に向けて、前半でしっかりと伏線を張っており、意外に違和感無く観ることができました。

ナヴィ族やアバター君の、プチ・ブサイクさは別として、海兵隊の爆撃機や、「エイリアン」でもおなじみの人間が装着する戦闘用スーツロボットなど、デザインのこだわりが嬉しい。

ついでにいえば、名作「エイリアン」へのリスペクトか、異星映画女王のシガニー・ウィーバーさんが重要な役で登場するのも気が利いています。

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アバター操縦者が、アバターとして活動している最中は、人間側は睡眠モードに、人間として覚醒しているときはアバター側が睡眠モードになっている、「入れ替わり」感覚は、目のつけどころが鋭いです。(あんた、いつ休息取ってるんじゃ!というツッコミはありますがね)

精神分析学の祖フロイトが「睡りから目ざめるということは、羊水から出ること。つまり誕生すること、ある過去との関係を断ち切ることである」という主旨の言葉を残してますが、「アバター」の、睡眠→別肉体としての覚醒、というのは、まさにフロイトの言葉の具現化ですね。

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ハリウッド映画らしく、「人間(人類)のエゴの糾弾」と、「あるべきものを守る事の大切さ」を訴えるという、定番ヒューマニズムの範疇を免れませんがね、それも良かろう!!

当然ですが、ジェームス・キャメロン監督だけあって、ラストでは「愛」を高らかに歌い上げ、手堅くまとめてしまう、そんなストーリーに、素直に感動できない汚れた自分が悲しくもあり・・・・。

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いろいろ書きましたが、年末年始に何か映画観ようかなあ~と迷っておられる方、新年会での話題仕込みのためにも、映画館に足を運んではいかがでしょう?3D版が2000円。さらにIMAXシアターだと、プラス200円と、ちょっと高めですがね。DVDになってから自宅で観るような映画ではありません。劇場で、体感したい映像です。


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映画 「なくもんか」 阿部サダヲさんの頑張りに応えていない、まずい脚本と演出にトホホ。 [映画]

「イングロリアル・バスターズ」絶賛でパワーを使い果たし、他映画をブログアップする気力がわかず・・・・アッシーブログを楽しみにしている方(いるの?)、更新滞ってすいません。

さて、気を取り直して。ワタクシが大好きな主役級の邦画男優は、阿部サダヲさん。玉木宏さん。玉山鉄二さん。堺雅人さん。小出恵介さん。特に阿部サダヲさんは、強烈な個性で出演作を「阿部色」に染め上げ、ストーリーを牽引するパワーに毎回脱帽しています。

阿部サダヲさん最新主演作「なくもんか」・・・・「舞妓Haaa~n」のチーム再集結のコメディ!の宣伝文句に、おおいに期待して劇場へ向かいました。

しかし残念ながら手放しでほめられない出来・・・。以下、辛口コメントになりますが、ご容赦ください・・・

なくもんか 2009年日本

監督 水田伸生、 脚本 宮藤官九郎、 出演 阿部サダヲ、竹内結子、瑛太、いしだあゆみ、ほか

なくもんかP.jpg幼い頃、父に棄てられ、離れ離れになった祐太、祐介の兄弟。兄の祐太(阿部サダヲ)は、幼少に預けられたハムカツ屋の主人に認められ店を譲り受け、肥満から生まれ変わった(?)妻の徹子(竹内結子)と、下町商店街で平和に暮らしています。一方、弟祐介(瑛太)は、お笑いコンビを結成し人気芸人となりました。

主人公の祐太は、涙もろく、熱く、オーバーアクション・・・・阿部サダヲさん以外に演じられない「超不自然キャラ」ですが、これは良いです。明るく世話好き&お人好しという、表の顔の陰で、父に棄てられた寂しさに、神社の境内でこっそり泣く・・・ハートウオームなコメディに、ぴったりなキャラともいえますね。映画の出だしでは良いですなあ~。

ひょんなことから、祐太は、生き別れた弟、祐介の存在を知ります。感動的再会を期待しますが、有名芸能人となった弟から「今更、実の兄なんていらないよ。俺にかかわらないでくれよ。」の残酷な一言を受け・・・ガーン!

ここからドラマは一気呵成に、祐太と妻徹子、商店街の人たち、祐介と相方芸人、大臣までを巻き込み、ドタバタな笑いと、家族愛に満ちた怒涛の展開を見せるのでありました!

・・・コメントは、ここで終わりたい。しかし、そうはいきません。

映画(脚本)の「言いたいこと」は分かりますが、全体としてNGと言わざるをえません。

なくもんか1.jpg

まず、時間が長いのが良くない(私のブログ記事も長いけど)

長さに必然性がないんです。余計なエピソードが多すぎます。祐太の妻徹子の「エコ好き」ネタ。ラストへの伏線(のつもり)でしょうけど全く不要。秘伝ソースのネタ。映画の本筋に関係ありません。

小ネタを詰め込み過ぎ「締まりない作品」になったんです。余計な部分を刈り取って、45分間、短くすれば名作でした、きっと!

なくもんか2.jpgなくもんか3.jpg

次に、それこそが大問題ですが、この映画は、阿部サダヲさんのキャラクターに依存しすぎなんです。たしかに阿部サダヲさんはすごい俳優です。場面もストーリーもしっかり作ってくれる、という期待は分かります。

だからといって、主演俳優に甘えてはいけません。

俳優の力量と関係なく、脚本や演出自体がしっかりしているからこそ、素晴らしい俳優とあいまって、映画が二倍にも三倍にも輝くのです。逆にいえば、脚本や演出の甘さを、主役俳優で「補っても」名作は生まれないのです(本作が、その失敗例です)。

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前半の散発的ドタバタが、ラストに収斂し、感動的な大団円でパチパチ!というのが、この手の映画のお約束で、製作側もそれを狙っています。

ところがどうでしょう!肝心のラストの、この安っぽいステージ・シーンはなんですか!?どうしょうもないじゃん。

くどいですが、阿部サダヲさん(&共演者)は文句なしに頑張っています。だからこそ、彼の良さを引き出せなかった罪は重いのです。

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未見の方に先入観を与えて申し訳ないですが、「主役キャラ頼みで駄作を量産」した、70年代~80年代の邦画が踏んだのと同じ「地雷」を、踏んだのはショックです。興業的にヒットしていても、製作側が、同じような映画作りを続ければ、せっかく盛り上がった邦画ブームを「氷河時代」に逆戻りさせてしまうでしょう。

映画好きとしては、そんな悲劇が繰り返されないことを祈るばかりです。

ところで、いきものがかりのうたう主題歌は素晴らしいですね(と無理やりフォロー?)。映画に、いきいきした息吹を与えています。最後に予告編をどうぞ(↓)


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映画 「イングロリアス・バスターズ」、破天荒でありながらオーソドックスである必見の名作! [映画]

クエンティン・タランティーノ・・・この名前から、何を思い出しますか?

映画マニアなら、彼の初期の監督作「レザボア・ドックス」「パルプ・フィクション」など、90年代のキッチュで破壊力抜群の作品を思い起こすでしょう。

人気監督となってからの、03年「キル・ビル」では、千葉真一に寿司を握らせるわ、ユマ・サーマンを、「死亡遊戯」のブルース・リー・ジャージで暴れさせるわ、まさに死体放題・・・じゃなく、したい放題、を、かまして痛快でしたねえ。

しかし、数年前の「グラインド・ハウス」2本立てあたりから、タランティーノ映画が、ヤバ~イ空気になってきました。作ってる本人は面白いのでしょうけど、度が過ぎた「遊びっぷり」に、観客がついていけなくなってきた・・・・たとえるなら、宴会開始早々に、一人だけがメチャ盛り上がると、他メンバーが、しらけるって、あの空気かな。高テンションで、どうだ面白いだろ!ってあおられてもね、押し付けられて面白がれるものではないし。

タランティーノ監督は、もう「普通の面白い映画」は撮れないのでは?と思ってしまいました。

そこで登場したのが彼の最新監督作「イングロリアス・バスターズ」であります!大スターのブラッド・ピット、ダイアン・クルーガーをはじめ、曲者俳優をそろえた入魂の娯楽戦争映画、です。

結論言っちゃうと、ここ数年の不調(?)が嘘のような、大傑作でしたね!

これを見ずして2009年の映画を語ることなかれ!

娯楽作でありながら、ユダヤ人のナチスへの復讐という骨太なテーマ。戦争の悲劇や不条理を盛り込んだ、人間ドラマといえましょう。唸ってしまったのは、アクションシーンではなく、「会話シーン」ですねえ。すさまじい緊張感と迫力に満ちた画面に息をのみ、ドキドキワクワクしましたね。火薬量とCGでしか盛り上げる能のない”今どきハリウッド大作”では絶対に味わえない感動です。

実に、素直に、面白い!

これだけ賛辞を重ねても足りない、モンスター級の快作です。

イングロリアル・バスターズ 2009年米

監督・脚本・製作 クエンティン・タランティーノ、 出演 クリストフ・ヴァルツ、ブラッド・ピッド、メラニー・ロラン、ダイアン・クルーガー、ダニエル・ブリュール、ほか

イングロリアス-P.jpg第二次大戦末期、ナチス占領下のパリを舞台にドイツ、フランス、アメリカの個性的面々の織りなす戦争群像劇であります。

頭脳明晰で冷血なナチスのユダヤ・ハンターこと、ランダ大佐(クリストフ・ヴァルツ)が、フランスのとある農村にやってきます。彼の目的は、隠れたユダヤ人を探し出し、根絶やしにすること。のどかな田園風景に緊張が走ります!

一軒の農家で交わされるランダ大佐と農夫の会話。大佐は力技ではなく、淡々とした会話で、相手を屈服させる天才的な話術の持ち主です。全く見事な脚本です。映画開始15分で、タダものではないことが分かります。うーん、面白くなってきたぞ!

正反対のキャラは、アメリカ人レイン中尉(ブラッド・ピッド) 。ユダヤ系の命知らずどもを集め、ナチ殺し軍団「バスターズ」を結成しフランスで大暴れします。銃をぶっ放し、巨大ナイフで相手をえぐり、部下には「ナチ野郎の頭の皮を100枚、はいでこい!」と命じる無軌道ぶり。

天才頭脳派のナチス将校と、ならず者アメリカ軍人を軸にしつつも、メイン・ドラマは、ユダヤ狩りを逃れたショシャナ(メラニー・ロラン)の大復讐劇・・・なのですね。

ショシャナはフランス人と身分を偽っていますが、ランダ大佐に家族を惨殺されたユダヤ人です。ヒトラーとナチスへの復讐に燃えています。

偶然の出来事から、ドイツの英雄ツォラー(ダニエル・ブリュール)の自伝映画が、ショシャナが譲り受けた映画館でプレミア上映されることになります。そこには、宣伝大臣ゲッペルス、総統ヒトラーまでやって来ることを知った彼女は、劇場ごと、ナチスどもを焼き殺す計画を立てるのです。

イングロリアス4s.jpgイングロリアス3s.jpg

しかし、ここでも一筋縄でいかないのがタランティーノ映画。情報入手したバスターズ軍団や、英国スパイたちが入り乱れ、ストーリーは混沌の度を増していきます・・・・ショシャナの復讐計画はどんな決着を迎えるのか!

では、本作の「素晴らしい点」を。いくつかみていきましょう!

【1】 言語の問題

ドイツ人はドイツ語、フランス人はフランス語、アメリカ人は英語をしゃべる、という、当たり前の事をやっている点が良いですねえ。こんなこと、当然のはずが、戦争映画は実にイイカゲンなのが多く、たとえば某駄作「ワルキューレ」など、トム・クルーズ演じるドイツ将校が、英語をペラペラ話すわけで、実にゲンナリしましたよ。

「イングロリアス・バスターズ」では、「語学能力」や「なまり」が重要な小道具なのです。語学堪能なナチスのランダ大佐に比べて、ブラッド・ピッド演じるレイン中尉は「英語しかしゃべれなくて何が悪い!」の開きなおりっぷり。どうせ分かりっこないと、イタリア人のふりをして潜入したレイン中尉に、ランダ大佐がペラペラのイタリア語で質問しちゃうシーンなんて、ツボにはまりましたねえ~。

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【2】 誰が死ぬか分からないスリリングさ

一寸先は闇、と言いますが、ヒーロー然として登場したキャラが、あっけなく死んだりするんですよ。このせいで、ドキドキハラハラ感は倍増します。たしかに、誰が死ぬかが分からない不条理こそが、本来の「戦争のリアル」ですものね。

善人役(連合軍側)には弾丸は当たらない・・・なんてことはなくて、ナチスも連合軍も、死ぬ確率は同じってこと。予定調和が多い戦争ものの「お約束」をぶっ壊す見事なセンスです。

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【3】 ランダ大佐を演じるクリストフ・ヴァルツの名演

俳優でダントツなのは、ナチスのランダ大佐を演じたクリストフ・ヴァルツ(オーストリアの俳優)です。本当に素晴らしいです。ティム・ロス似の知的な風貌で、演じるというより、憑依したかのような怖さがあります。

冷静で残酷でありながらユーモアのセンスもある。表面は慇懃丁寧だが、相手をじっと見つめる目つきと、一言一言の発言に、悪意と残虐さを漂わせる、独特の雰囲気と「間」で相手を震え上がらせます。

エキセントリックなキャラ設定もすごいが、それを具現した俳優の力量はさらにすごい。本作で、カンヌ国際映画祭男優賞をとったことも納得の絶賛すべき演技です。

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クリストフ・ヴァルツの前では、どの俳優もかすんで見えます。彼がストーリー全体を引っ張る「主役」とさえ言えましょう。ブラッド・ピッドやダイアン・クルーガーも、今回ばかりは損な役回りと思えますね。

【4】 ラストのオチ 

収拾困難になりそうな本作、どうなることかと思いきや、ラストシーンが上手い!

実に奇妙な状況下で、ランダ大佐とレイン中尉が「対決?」しますが・・・・あははは、そう来たか!これはヤラレタ!と大満足ですよ。

ネタばれなので、これ以上書けませんが、タランティーノ監督、まだまだ枯れていませんね。いや、昔よりも元気なくらいですね。改めて、彼の底力に脱帽しました!あっぱれです!

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